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ラオス旅行記#3『メコン川の先にある洞窟へ』

メコン川は時の流れを遅くする。

バリ島のように国旗の主張にうるさくなく、クアラルンプールのように線路の網が張り巡らされているわけでもなく、ただルアンパバーンという町はひっそりと川沿いでじっとしている。

AIやIOTの技術が急速に進歩するこの時代でも、じっとこの川を見ていると、水の流れに身を任せて思う存分郷愁に浸ることができる。

人々はメコン川に寄り添って生活し、メコン川は人々の笑顔を豊かにしてくれる。

僕はこの川を一隻の小さな船に乗って上流へと進む。片側に寄れば転覆してしまうほどの小さな船で懸命に川の流れに逆らう様子は、急な坂道を自転車で必死に駆け上がろうとする小学生みたいに無邪気だ。船の下にあるこの川は泥のように濁っているが、川の周りには鮮やかな緑が広がっている。

明らかに汚なそうな茶色い川がどうして周りを豊かにできるのだろうか。泥のように濁った川をよく見ると、洗剤の泡らしきものが浮かんでは消えている。どうしても僕はこの川に生物が生息していることが信じられなかった。

そんなことを考えていたが、気が付くとうたた寝をしていた。緩やかな川の流れと吹き抜ける心地いい風に身を任せていると、いつの間にか睡魔に負けている。おまけに腹が出た船頭がいい具合の速さで運転してくれるものだから、ずっと起きている方が難しい。

眠りながらも僕と友人はある目的地へと向かっていた

そこはパーク・ウー洞窟という。自然が偶然に作り出した神秘の洞窟と人間が作り上げた無数の仏像が見られるらしい。

入口に船が停まり、僕は手作りの足場へ降りた。顔を上げると、正面には切り立った崖にぬかれた洞窟が広がっている。僕は自然が何千年もかけて作り出した洞窟のスケールの大きさに圧倒されていた。

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洞窟は2種類あって、それぞれに向かってきつい角度の階段が伸びている。僕はラオスに来てから、カフェに入ってはコーヒーを飲んで意味もなくだらだらと過ごしていたので、明らかに運動不足だった。息を切らしてへとへとになりながら階段を上っていく。少しはいい運動になったのかもしれない。

15分ほど上っていただろうか。ようやく洞窟にたどり着いた。洞窟内は真っ暗で、薄ぼんやりとした黄色い光が申し訳なさそうに周りを照らしている。少し薄気味悪いが、仏像は見事だった。

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人間と同じように、個体ごとに表情が違うのが面白い。ラオスにはおびただしい数の仏像があるので、誰しも自分が共感を持てる仏像を見つけられるそうだ。たとえそれは完璧な形ではないとしても、なにか感じられるものがあるらしい。なんだかオカルトチックな話だ。それでもどこか不思議な力を感じてしまうは、きっとここがラオスだからだろう。自然と共存している社会が作り出す雰囲気は、全てを信じてしまいそうになる。


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これからの可能性に賭けてくださいますと幸いです。