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ラオス旅行記#4『僕はラオスでゾウ使いの免許を取得した』

ラオスに来てから4日が経ち、次第に暇を持て余すようになってきた。ふらふらと寺院を巡って無常を感じたり、物珍しそうにナイトマーケットへ足を運んで結局冷やかして帰ったりと、町でできることはほとんどやった気がする。

この3日間は暇になればカフェに入ってラオスの美味しいコーヒーをすすっては、店内のソファで休憩していた。冷静に考えてほしい。3日もだ。はっきり言ってこれは暇すぎる。

体力が有り余っている男子大学生4人組がカフェに入り、まったりとコーヒーやスムージーを飲みながらおしゃべりしている様子は、原宿にいる女子高生と何も変わらない。おまけに、「このコーヒーおいしい~。インスタ映えじゃん。」なんて言って写真を撮るものだから、地方の女子高生よりは女子力が高い気がする。

ラオスのコーヒー

しかもラオスのコーヒーは安くておいしい。上の画像のコーヒーは一杯200円で飲める。コーヒー豆は全てラオス産で、栽培から加工まで国内で行えるから安いのかもしれない。ラオスのコーヒーはブラックで飲んだとしても苦みがなくて飲みやすいし、スタバのフラペチーノみたいな甘いコーヒーも置いている。これなら種類が豊富で全く飽きない。僕らは店内の居心地の良さに引き寄せられるように、暇になればいつもカフェで入り浸っていた。

だが、僕らは思ってしまった。せっかくラオスまで来たのに、ここまで堕落した生活をしていていいのか。もっとラオスでしかできないことをした方がいいのではないかと。

気が付くと、体が動き出していた。

ルアンパバーンにあるツアー会社をスマホで検索すると、manifa travelというツアー会社がヒットしたので、そこの支社まで歩いて訪問し、なにか良いツアーがないかを尋ねる。気前のよさそうなおじさんがカウンターに座って僕たちを出迎えてくれた。

おじさんに手渡されたツアーガイドを見ると、メコン川のクルーズで少数民族の村に訪問するプランやカヤックを漕いでメコン川の自然を感じるプラン、サイクリングでルアンパバーン郊外を走り回るプランなど、豊富な種類のツアーが数ページにわたって紹介されている。

とりわけ僕たちが注目したのはゾウに乗ってメコン川沿いを歩行するプランだった。理由はゾウに乗るだけでなんだかラオスっぽさが味わえそうだから。とても安直な理由だけど、今まで体感したことのない非日常を味わえそうで、申し込むときは期待感で胸が高鳴った。

そして当日

肌が真っ黒に焼けたラオス人ガイドの車に乗って、ゾウが生活している川沿いへと向かう。1時間ほど車で進んだところに、、

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いた!なんじゃこれは。それはもう見事なエレファントだった。成人男性の身長が二人分あってようやく張り合えるくらいデカい。あまりの大きさにゾウに乗るための小屋が建てられていた。

僕たちはガイド連れられて小屋まで案内され、2階へと上るように言われた。小屋の脇でゾウが待機しているので、そのままゾウに結びつけられた椅子へと座る。僕の前ではゾウ使いがラオス語でゾウに掛け声をかけながら、この大きくてゴツゴツした生物を巧みに操っていた。

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ゾウは一歩前進するごとに大きな振動を生む。背中の上で座っているとその振動が直接体に伝わるので、椅子から転げ落ちそうになる。気を抜いて転落するわけにはいかないので、僕は足と腹に力を込めて体を安定させようと必死になった。最近はすっかり運動不足になってしまった僕の体は、少々厳しめの体感トレーニングを受けて悲鳴を上げている。

ゾウの散歩コースをしばらく進むと、ゾウ使いの人が後ろを向いて何やら声をかけてくる。手を上下に振りながらラオ語で話しかけてくるので、全く聞き取れない。だが、人間は言葉が通じなくても、気持があれば分かり合えると僕は信じている。時間をかけて相手の表情やしぐさに集中すれば、なんとなく言いたいことがわかってくるものだ。

なんとなく言いたいことが分かったような気がして、嫌な予感がした。

ゾウ使いは前に来いと言っているのではないだろうか。そんな予感がして不安になった。彼は自分の腰のあたりを手で2回ほどたたくと、たたいたところに向かって指をさした。

これ、絶対そうだ。僕は恐る恐る椅子の上で立ち上がり、ゾウの背中を渡ってゾウ使いのもとへ座り込んだ。その瞬間、ゾウ使いは素早い身のこなしで元の場所を離れ、僕が座っていた椅子に座った。もちろん、この大移動はゾウの上で行われているが、この間もゾウは振動しながら歩行しているので、移動は振り落とされそうになりながら行われている。

完全に場所が入れ替わった。

ゾウの首元にまたがると、自分の体が非常に不安定なのが分かる。椅子に座るだけであそこまで安定していたのか。ゾウに直接乗ったことで、改めて椅子の大切さに気付くことができた。

いや、今は椅子の大切さなんてどうでもいい。この状況をなんとか耐えなければ。

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ゾウが止まったときにふと後ろを振り返ると、心なしかゾウ使いは退屈そうだった。やっぱり現地の人は慣れている。僕は楽そうなゾウ使いに嫉妬を抱きながら、元来た道を戻っていった。

「はい、これで1周目が終わりです。」

肌が黒いガイドがツアー客に呼び掛けている。

一周目ってことは、、え、これ何周するの?

結局、僕たちはゾウのライディングコースを3周した。散歩の合間にゾウの勉強会と昼食をはさみ、十分に休憩を取りながら、一日かけて同じコースを3周したのだ。

さすがに3周もするとゾウに乗ることへの抵抗はなくなり、自分の体はすっかりゾウ使いと同じような能力を発揮していった。

当たり前のようにゾウに一人でまたがり、エサを与えながら散歩コースを周回する。

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ゾウに話しかけるラオ語はもう覚えた。メコン川に入って水を浴び、ゾウの大きな体を丁寧に洗ってあげる。

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僕はもはや完全にゾウ使いとして覚醒していた。ゾウ使いのように日焼けし、ゾウと優しく触れ合うことで僕はゾウ使いと一体化した。

だからゾウ使いの免許を取得でました。manifa travel、とてもおすすめです。


これからの可能性に賭けてくださいますと幸いです。