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ウクライナ危機で第2次リーマンショックは起こるのか(第1回)20220309

スマートバンクCFOの下河原です。
金融市場について自分が思うことを社内向けに不定期に朝発信していたのですが、不定期にでもやっていたらある程度情報として溜まっていきそうなのでnoteに書き溜めていこうかと思います。
ちなみに社内向けに書いているものでもあるので、なるべく専門用語は使わない形で書く、専門用語は解説をしていくことを前提に書いていこうと思っています。

第1回投稿: こちらです。
第2回投稿: こちらです。
第3回投稿: こちらです。
第4回投稿: こちらです。

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- Twitter @Yshimogawara

今日のテーマ
「ウクライナ危機で第2次リーマンショックは起こるのか」

なお、初回公開にしてはテーマが複雑なので、複数回に分けて書こうと思っています。
本日は、
- リーマンショックがなぜ起こったのか
- リーマンショックの引き金は
- CLO / CDO とは
という点に絞って書こうと思います。

何故このテーマ?

直近、ウクライナ危機によって株式市場は大幅に値下がりを続けています。マザーズ市場は、グロース株が集中していることもあり、世界的に見ても特に値下がりが激しい市場になっており、日本のベンチャー株・成長株への不安感が一定高まる展開にもなっています。
金融市場の不安というと、最近のものではコロナショック、チャイナショックなどがありますが、これらはいずれも短期で回復しております。
金融市場として一番気になるのは、やはり「リーマンショック級」の金融危機が起こるのか、ということかと思います。

リーマンショックはなぜ起こったのか

リーマンショックが起こった理由は、シンプルに考えると二つあると思います。
① CLO / CDO などの新しい金融商品の開発及び流行
② CDSによるプロテクションがリスク管理手法として主流だったこと
それぞれ「なんのこっちゃ」かと思いますので、説明します。

CLO / CDO などの新しい金融商品の開発及び流行

CLO:  Collateralized Loan Obligation 
CDO:  Collateralized Debt Obligation

以降は仮定の話です。
(働いていない方には固有の事情もあるので、いい・悪いの話をしているわけではありません。)

CLO / CDOとは

- Xローン: 借り手は大金持ち
- Yローン: 借り手は小金持ち
- Zローン: 借り手は今現状全く働いていない方

上記の場合、一般的にはXローンの方が、Zローンに比べてちゃんと返ってくる可能性は高そうです。
一方で、この状態では実際にはZローンを貸してくれる銀行はいないかもしれません。
ここでCLO / CDO が登場します。

CLO / CDO は、
- 80億のXローン(80人向け)
- 15億のYローン(15人向け)
-  5億のZローン(5人向け)
みたいな割合で、色んな人に出したローンを壺に入れて混ぜるイメージです。
そうすると、「Xローンよりはリスクがありそうだけど、Zローンよりは遥かに安全そうな「混ざった何か」」が出来上がりました。
この「混ざった何か」がCLO / CDOです。

金融機関はこの「混ざった何か」であるCLO  / CDO を、
- リスクが高い資産(エクイティ)
- リスクが中くらいの資産(メザニン)
- リスクが低い資産(シニア)
と切り分けて、投資家に販売したり、自分で抱えたりしました。

例えば、こんな感じです。
100億のうち、5億以下の返済が滞った場合:
 エクイティが毀損する。エクイティ投資家は損をするが、メザニン・シニアは守られる。
100億のうち、5億を超えて30億まで返済が滞った場合:
 エクイティが全部毀損した後、メザニンが毀損する。エクイティ投資家、メザニン投資家は損をするが、シニアは守られる。

こうすると、100人に対して貸した100億円のうち、一番安全な資産を買った人は、「30億円の返済が滞って初めて損が少しずつ発生する」というかなり安全(に見える)資産を買うことが出来ました。

何故CLO / CDOが流行ったのか

CLO/CDOは上記の通り、「混ざった何かを切り分けて、リスクの異なる商品を作り出す」というコンセプトなのですが、これが流行った理由は投資家側・借り手側・貸し手(当局)側の3つの観点があります。

投資家側
- リスクの高い投資を好む人は、リスクの高い投資が出来た
 (高いリスクの代わりに、リターンも大きい投資が出来た)
- リスクの低い投資を好む人は、リスクの低い投資が出来た
 (リターンが低い代わりに、安全な投資が出来た)
- 特に一番リスクが低い「シニア」にまでダメージが届く可能性は限りなく低く見えるような設計になっている(と思われた)し、格付機関(投資商品のリスク分析をする機関)も極めて低いリスクの商品であると評価していた

借り手側
- Zローンの借り手に分類される人たちは、普通であれば銀行に貸してもらえないかもしれないが、CLO / CDO という商品が開発されたことによって、「壺に入れたら、高リスク高リターンをもたらす商品」として使われることが出来て、貸してくれる金融機関が増えた

貸し手・当局側
- 通常は、ローンを出せない相手に対してもローンを出すことが出来るようになった
- 特に、アメリカ当局としては「どんな人でもマイホームを持ってアメリカンドリームを実現できるんだ!」というプロモーションを実施していた。現にリーマンショック前には、定職についていない方でもなぜかローンを組んで、マイホームを買えるという状況が出来ていて、「アメリカンドリーム」と言われてました。

結果、リーマンショック前にはCDO / CLO という商品が流行り、結果的に色んな人に対して積極的にローンが出される背景となりました。結局この商品がリーマンショックを引き起こすことになるのですが、それについては次回(明日)。


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