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ウクライナ危機で第2次リーマンショックは起きるのか(第3回)20220311

スマートバンクCFOの下河原です。
本日は、「ウクライナ危機で第2次リーマンショックは起こるのか」の第3回です。

第1回投稿: こちらです。
第2回投稿: こちらです。
第3回投稿: こちらです。
第4回投稿: こちらです。
- Twitter @Yshimogawara

これまでのおさらいと今回の趣旨説明

これまでは、リーマンショックを引き起こした大きな原因であるCLO//CDOという商品の説明、なぜCLO//CDOという商品がリスクを全世界にばらまいたのか、という話をしました。
今回は、金融機関側に立って、どうやって金融機関はリスク管理をしているのかという話をしながら、第1回目の書いた「リーマンショックはなぜ起こったのか」の2つ目の理由として挙げた「CDSによるプロテクションがリスク管理手法として主流だったこと」について説明したいと思います。

CDS(Credit Default Swap )とは

金融機関のリスク管理の手法として、CDSという商品があります。
詳細を説明すると、24時間CDSについて語っても足りない。。。というぐらい奥が深い商品です。

XさんはA社のCDSをYさんから買う
→XさんはCDS premiumをYさんに払う
→そのかわり、A社が倒産した場合には、倒産に伴って生じた損失をYさんはXさんに対して支払う

一見わかりづらいですが、簡単には「保険」です。
例えば生命保険として、「Xさん=読者の皆様、A社=皆さんの生命、Yさん=保険会社」に置き換えてみましょう。
読者の皆様は自分の生命に関するCDSを、保険会社から買う
→読者の皆様は保険料を保険会社に払う
→そのかわり、読者の皆様の生命が倒産した(=万が一のことが起きてしまった)場合には、それに伴って生じる損失を保険会社が払う

イメージ掴めましたでしょうか。「生命保険に限らず、割と一般的な保険そのまんまなイメージだな」という印象です。
CDSの世界は奥深く潜っていくと、「CDSにおける倒産時の回収金額は、実際の損失のパターンもあるし、中央機関によって決められた回収額になるパターンもあるし」みたいに細かい分岐や規定が沢山あって、本当に面白い金融商品です。CDSについて語るだけで3次会くらいまで飲めそうなのですが、本題には関係ないので泣く泣く割愛します。。。

金融機関は、このCDSという商品を使って自分たちの持っているポジションのリスク管理をしていました。
例)
・A社という会社の投資商品を沢山持っている
・投資しすぎているなと、リスクを落としたいと思っている
・でも、持っている投資商品を売りたくはない、あるいは売れない事情がある(実は取引先企業で大事なところなので株を売ったと知られたらまずい、株自体が世の中であまり取引がされていない(流動性が低い)から売りづらい、など)

このような事例の時には、投資家はA社のCDSを買うことで、保険に入ることになるので、実質投資リスクを減らすことが出来ます。

CDSが何故リーマン・ショックにつながったのか

繰り返し、CDSという商品自体は素晴らしい商品です。
実際に、今も金融機関はCDSを使ってリスク管理を行っています。

リーマン・ショック時に問題だったのは、「CDSでリスクを減らせた!やったー!」まではいいものの、「保険を提供している相手方が倒産したらどうなるんだろう。。。」が考えられていなかったことです。

ここで、もう一度ですが、生命保険について考えてみましょう。
生命保険に加入していれば、万が一のことが起きた場合、家族に保険料が入ると思います。
が、その保険会社がその前日に倒産していたら。。。?
困ったことになりますよね。
リーマン・ショックがあれだけ混乱を巻き起こしたのは、このCDS管理が「相手方金融機関の倒産」を想定していなかったことです。

結果どうなったか(第1回・2回・3回のまとめ)

①CLO//CDOの壺の中に入っているローンの質が一気に悪化する
②CLO//CDOに投資をしている世界各国の色んな投資家のポジションがダメージを受けるし、金融機関もダメージを受ける
・普通の投資家は、これらの影響により倒産したり、業績が悪化するところが出てくる
・金融機関も、自分の持っている資産が劣化してくる
③金融機関やプロの投資家は、CDSにより保険を買っているので、損失はないと思っていた。。。
・あれ。。。いよいよ金融機関が全体的に危機的状況になってきた
④リーマンブラザーズの倒産。。。
・リーマンからCDSを買っていた(保険を買っていた)金融機関は、その保険がほぼ消失してしまった
・カバーできていると思った損失が、急遽カバーできていない大損失として復活してしまった。。。
⑤他の金融機関の含み損が一気に増加。
・一斉倒産するのでは、という金融市場不安が一気に市場を巻き込んだ

これがリーマンショックの凄く簡潔な流れです。
CLO // CDOやCDSの影響だけでもないですが、私が考える大きな理由・原因に絞って過去3回noteに纏めてきました。
いよいよ次回は「今回のウクライナ危機で同じようなことが起きないのか」について纏めたいと思います。

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