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【EUフィルムデーズ2022】『神に仕える者たち』感想【スロヴァキア映画】

欧州連合(EU)加盟国の映画作品を一堂に集めて上映する映画祭「EUフィルムデーズ」。今年で20回の節目を迎えるユニークな映画祭で、東京はじめ京都や広島と全国各地で開催されている。筆者も過去に何度か東京会場に足を運んでいたが、今年は現地での参加は難しいため、オンラインで配信されている作品を鑑賞することにした。

今回鑑賞したのは『神に仕える者たち(原題:SERVANTS)』という作品。スロヴァキア映画という、日本ではあまり目にする機会のない国の映画を目にする事ができるのもEU映画祭の良いところだ。

スロヴァキア映画だとマルティン・シュリーク監督の『不思議の世界絵図』が大好き。

物語の舞台は1980年代のチェコスロヴァキア。神学校へ入学した2人の青年が共産主義政権とキリスト教との狭間で翻弄される姿を描いている。

本作は、2020年のベルリン映画祭のエンカウンターズ部門(カンヌ映画祭でいうところの「ある視点部門」に相当する部門)にノミネートされており、他にも多くの映画祭で受賞・ノミネートされるなど高い評価を得ている。

2020年製作/スロヴァキア、ルーマニア、チェコ、アイルランド/80分

あらすじ:1980年にチェコスロヴァキア社会主義共和国のブラチスラヴァで神学を学ぶ2人の学生、ミハルとユライ。彼らの教師たちは、当局による学部閉鎖の可能性を恐れ、共産党への恭順の精神で未来の司祭たちを育てていた。若いゼミ生たちはそれぞれ、協力する道を取るか、国家秘密警察の標的になるかもしれない自身の宗教的信念を貫くか、選択を迫られる。

EUフィルムデーズ2022公式サイトより拝借

【感想】

キレッキレのモノクロ映像が良い。本作は決して分かり易い作品ではないが、最後まで集中力を切らさなかったのは、この映像の力によるところが大きいだろう。開始直後の田舎道を走る車の映像から引き込まれた。控えめな音楽と不穏な空気が緊張感を保たせる。

時代背景を知っていれば、より本作への理解が深まるのだろうが「信念を貫くか、権力に従うか」という選択は、多くの人が共感できる普遍的なテーマであることには違いない。

主演2人以外に秘密警察へ加担する教師など、個々のキャラクターに焦点が当てられてるが、感情移入させるというよりは、より俯瞰的な視点で物語を描いているように感じられた。筆者はブロマンス好きなので、主演2人の関係性を掘り下げて欲しかったが、淡々と物語が進む分、より無常さと諦観が濃くなっている。作風に関しては好き嫌い別れる部分かもしれない。

人が簡単に消え殺される当時の共産主義の恐ろしさは言わずもがな、時代と世の中の流れに翻弄され抗えない人々の姿が悲しくも空しい。宗教と国家権力の関係というのは、奇しくも日本でもタイムリーなテーマだけに興味深く見せてもらった。

ちなみにEUフィルムデーズ2022のオンライン配信について、本来は7月31日までで配信終了をする予定だったが、8月7日まで期間延長となっている。鑑賞料金も無料となっているため、興味ある人は是非ともチェックして見て欲しい。


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