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高校生殺人カップルの地獄の逃避行『ファンファーレが鳴り響く』

10月17日に公開された『ファンファーレが鳴り響く』スプラッター青春群像劇という聞きなれない言葉ながらもなかなかインパクトのあるジャンルの本作。予告編を見たら、無性に観に行きたくなってきたので、K's cinemaの16時45分の回で観てきたぞ。ちなみに筆者が観た回は初日という事もあり、主演の笠松将、祷キララ、監督の森田和樹による舞台挨拶があったぞ。

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【作品情報:『ファンファーレが鳴り響く』】

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製作年:2020年 製作国:日本 監督:森田和樹

吃音症が原因で、同級生からイジメられている高校生の明彦。彼は妄想上の神を殺すなどして鬱屈とした日々を過ごしていた。そんなある日、明彦は同じクラスの光莉が野良猫を殺す場面を見てしまう。生き物の死ぬ姿に興奮すると語る光莉にドン引きする明彦だったが、それを機に次第に光莉と話すようになっていく。そして、ホームルームで自分がイジメられていること訴える明彦だったが、逆にいじめっ子達の逆恨みを買い、下校中に追い掛けられることとなる。偶然、その現場に居合わせた光莉は、持っていたナイフでいじめっ子の1人を殺してしまうのだった。そしてその事をキッカケに2人の逃避行が始まる…。

【人が死にまくる!血にまみれた逃避行】

本作は吃音症によりいじめられている少年と、生き物が死ぬ姿に興奮を覚える少女の逃避行という何とも異色のロードムービーだ。
不慮の事故などで人を死なせて逃亡する作品なら少なくないが、人を嬉々として殺すカップルの映画なんてそうはないだろう。海外の作品でいえば『地獄愛』(元となった『ハネムーン・キラーズ』も)や作中でも言及されてるが、ボニーアンドクライドを描いた『俺たちに明日はない』などが挙げられるだろうが、それでも数えるほどしかないし、邦画でそういう作品はすぐには思い当たらない。(行く先々で人を殺しまくるカップルの邦画、逆にあれば教えて欲しい)

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今作が商業映画の1作品目になる森田和樹監督は、初の長編作品『されど青春の端くれ』で、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019のシネガーアワード(批評家賞)を受賞した新進気鋭の監督だ。
行く先々で無軌道に殺人を繰り返していくカップルのロードムービーなんて、下手すれば批判の的になりそうな題材だが、何故このような作品を撮ったのか?この疑問に監督は、こちらのインタビューで以下のように答えている。
自分勝手な人たちがいっぱいいて、何も関係ない人たちが不幸になってしまうという不条理を、変えたいというよりも皮肉ってやろうという気持ちが強かった、実際の事件を元にしたら、被害者の方がいるので、それはできないと思い、自分の中でもしかしたら起こるんじゃないかと想像する事件を描いた』世の中に対して斜めに構えた視点が面白い。また、主役の明彦の吃音症という設定も、監督自身の体験から生まれたと語っている。(監督が病気を患った際に、就職面接で面接官に厳しい言葉が掛けられたことがきっかけとのこと)

そんな本作では、実に多くの人が殺される訳だが、その殺され方もどこか間が抜けているのが本作の面白い点だ。
前述した舞台挨拶の司会進行役が、映画秘宝の編集者の方だったので、「もしや…」とも思ったが、本作はまさに映画秘宝的な作品。主人公カップルに殺される可哀想な人達(一部自業自得)とのやり取りや殺され方にもどこか可笑しさあるので、秘宝読者なら刺さるのではないかと。特に劇中で祷キララ演じる光莉と木下ほうか演じる国会議員との一連の場面はカオス過ぎて笑いがこみ上げてくること必至だ。

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【笠松将×祷キララの若手注目俳優をはじめ実力派俳優が脇を固める!】

主演の明彦を演じたのは、若手俳優の笠松将。今も最も注目の若手俳優だ。『花と雨』(2019年)で、実在するラッパーのSEEDAを見事に演じ切った笠松将が、いじめられっ子を演じるのは、正直、意外な組み合わせだと思ったが、難なくこなしている。着実に演技の幅を広げているのを感じた。

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そして、光莉を演じたのは、こちらも若手女優として注目を浴びている祷キララ。筆者は、彼女を観たのは今作が初めてだが、独特の雰囲気を持った女優だと感じた。生き物が死ぬ姿に興奮するというなかなかエキセントリックな役なのにその雰囲気で見事にハマっている。

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そのほかにも、明彦の優しい母親を演じた黒沢あすかや、厳格な父親の川瀬陽太、明彦の駄目な叔父さんを演じた大西信満など、脇を固める俳優も実力派が揃っている。この映画、主演も脇もキャストがかなりハマっているので、そこが映画の魅力を引き立たせている。

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【青春の煌めきと印象的なロケーション】

本作はその内容的にグロ要素が強めと思われるかもしれないが、劇中のところどころに美しさが感じられるのも特徴的。個人的に気に入ったのが、ロケーションの美しさ。明彦と光莉が住んでいる町の背景ににちょくちょく海が映されるのだが、その海の青色がとても美しい。青空とも合わさって強く印象に残る。どこで撮影したかは特に触れられてないが、このロケーションの美しさも筆者が気に行った部分の一つ。

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また明彦と光莉が真夜中に自転車を2人乗りしている場面は、作中随一のエモさ。またラストの明彦など、どこか切なくなるような青春の煌めきが散りばめられてるのも本作の見どころの一つだ。正直、全編通じて突っ込み所は少なくないが、ところどころハッとさせられる場面も感じさせられる作品だった。森田和樹監督、これからが楽しみな監督だ。気になった方は是非チェックしてみて欲しい!


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