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【邦題でスルーするなかれ】『トマホーク ガンマンvs食人族』【傑作映画紹介】

『ガンマンvs食人族』。このタイトルだけで本作をスルーしようと皆さん、それは大間違いだということを述べたい。結論から先に言うと、本作は一見の価値ありの傑作映画だ。

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本作の監督をつとめたのは、S・クレイグ・ザラー。「誰?」となった映画好きの方も多いだろうが、チェックしておいて損はない話題の監督だ。映画評論家のライムスター宇多丸さん、映画ライターの村山章さん、映画ブロガーの三角絞めさんなど、数多くの映画人から支持を受けている。

人気の理由はその作風。独特の会話劇や暴力演出などで多くの人を引き付けており、日本だけでなく、海外の最大手レビューサイトRotten Tomatoesで91%の高評価を獲得するなど、海外の映画人達からも絶賛されている。

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本作は邦題の通り、ガンマンと食人族の死闘を描いた作品だ。食人族にさらわれた人達を救うために、4人のガンマン達が食人族の住処に殴り込みを掛けに行く。

そんな本作の魅力だが、まず、登場キャラクター達が魅力的。4人のガンマン達のキャラクターが立ちまくっていてる。

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4人の中で主人公ポジションなのが上の2人。保安官のハントは、冷静かつ頼れる保安官で皆のまとめ役。ハントを演じたカート・ラッセルが渋くて、このキャスティングだけで大正解といえるだろう。

さらわれた奥さんを救出するために、ガンマン一行に参加するアーサーは不屈の男。どんな困難を目の前にしても、決してあきらめない姿はまさにヒーロー。アーサーを演じたパトリック・ウィルソンもガンマン姿がハマっていて格好良い。

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その2人と行動を共にするのは、補佐官のチコリーと伊達男のブルーダー。
チコリーは他のガンマン達と違い、完全に補佐役のため、少し頼りない。物語的にはチコリーがコメディリリーフの役割を担っているので、彼関連に関してはクスリとさせられることも多いだろう。ブルーダーとの憎まれ口の叩き合いには思わず顔がにやけてしまう。

ブルーダーは原住民なら女子供も遠慮しないというとんだレイシスト。物言いもキザで嫌みったらしいので、観客の多くは嫌いそうだが、個人的には大好きなキャラクター。劇中の彼の生き様が切なくて良いのだ。是非、実際にその目で観て確かめて欲しい。

以上のメンバーで食人族の住処に向かう訳だが、全員、年齢も若くないのが分かるだろう。おっさん4人が死への旅に向かう…本作のこの設定だけで燃えるのだ。

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ザラー監督作品の特徴ともいえるのが会話描写。通常のアクション映画と違い、間の取り方が独特。加えて、ギャグ的描写もあるのだが、登場人物達が至って真顔のため、シュールさすら感じてしまう。

『ガンマンvs食人族』とあるが、食人族との死闘はクライマックスに凝縮され、むしろ住処に向かうまでの道のりがメイン。ネットの感想などを読む限り、この道中のパートを長いと感じるか、感じないかが、好みの分かれどころだろう。筆者は完全に前者。会話パートが苦痛に感じないどころか癖になってしまった。全編通して、作品全体を占める緊張感も失われていないのも本作の素晴らしいところだ。

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そして、本作の最も重要な要素ともいえる暴力描写もしっかり描かれる。それまでからの旅パートから一転、住処に辿り着いてからは緊張の連続。ザラー監督、ゴア描写がいちいち凝っているのが面白い。食人族の住処でのある描写はヒドすぎて笑ってしまいそうだった。
正直、食人族の衣装や彼らの巣の描写など、チープに感じる部分も多いが(低予算映画ということも分かる)しっかり怖い。キャストの演技力はもちろん、こうした点からもザラー監督の確かな演出力が伺える。

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4人のガンマン達は、それぞれの信念に基づいて行動し、それを曲げることはない。その生き様が観る者の胸を打つ。
最近の映画では、こうした作品はマッチョズムとして批判の対象にも上がりやすいが、思想とは別に面白いものは面白い。本作はまさに素晴らしい『漢映画』といえるだろう。

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筆者にとって初ザラー監督であった本作。ちなみに本作は劇場公開されなかった作品だが、今回、新文芸坐の『boid sound映画祭』でスクリーン鑑賞することができた。机を叩く音すら響くboid soundは迫力満点。記憶に残る映画体験となった。本作をチョイスしてくれた新文芸坐とこの映画祭に誘ってくれた友人にも感謝したい。

ということで、『トマホーク ガンマンvs食人族』、意外な傑作ということで、今回記事を書いてみたが、いかがだっただろうか。この記事をここまで読んでくれてる方は、きっと少なからず本作に興味が持ったはず。気になった方はレンタルや配信があるので是非チェックしてみてほしい。

(Amazon Primeほか、Rakuten TV、TSUTAYA TVにて配信中)

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