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デジタル・ガバメント推進標準ガイドラインをHTML化しました

新型コロナ対策の流れもあり、これまでになく政府、自治体が提供するITシステムに注目が集まっています。政府CIO補佐官としては、デジタル・ガバメントを適切な方向に推進するために「標準ガイドライン」なる文書をとりまとめています。今回は、pdf/docxで公開していた標準ガイドラインをHTML化しました、というお知らせです。pdf/docxファイルも従来通りお使いになれます。主な想定読者は、各府省、自治体のシステム導入担当者や、システムを構築する民間事業者の担当者ではありますが、せっかく世間の関心が高まっている状況ですので、多くの方々にお読みいただければと思います。

とはいえ、普段システム構築に関与されてない方々にはなじみにくいところもあると思いますので、実践ガイドブックあたりから読み進めるとよいかもしれませんね。ちょっとスクロールするとでてくるチェックリストは全体感を把握するのに便利だと思います。実際のシステム構築プロジェクトで、政府CIO補佐官メンバーが関与した課題やその改善例などを、現場感ができるだけそがれないように記載しています。エンタープライズIT業界みなさまにとっては、公共系システムのみならず、あるあるな事象に共感持っていただけるかもしれません。プロジェクトマネジメントや各技術領域のスペシャリストを集めた政府CIO補佐官が分担して記載しており、内容としては読み応えのあるものに仕上がっていると思います。

さて、読み進めていただくと、いたるところに「サービスデザイン指向で利用者視点にたった設計を」という記載があることに気づくと思います。それなのになぜ使いにくいシステムが乱立してしまうのか、不思議ですよね。我々の努力不足もありますが、この標準ガイドラインのさらなる周知徹底が必要と考えています。今のところ残念ながら強制力をもつものではありませんし、我々や政府CIOによるレビューも一部のプロジェクトに限られています。このnoteを見つけていただいたみなさまの力で、世の中に広めていっていただけますと助かります。世論醸成というやつですね。

以下、少し個人的な見解を述べさせていただくと、行政システムのUI/UXの観点で本当に難しいところは、いわゆる頭のいい、思考体力がある人たちが「このくらい対応できますよね」と自分の視点で判断してしまうところにあると考えています。ここでは思考体力という言葉を、複雑に絡み合った課題を緻密かつ正確に解く能力のことをさしています。なまじこの思考体力があると、運用マニュアルが分厚かろうが、入力項目数が多かろうが、画面遷移が複雑になろうが、ご自身は理解できてしまうのですよね。そして、時間や集中力を投下して一度理解したものに対しては、変更したくなくなる慣性が働いてしまう。それでは多くの人たちにとって使いやすいシステムにはなりません。

この標準ガイドラインの公開においても、これまでは各文書ごとのpdf/docxファイルを掲載する形式となっていましたが、検索エンジン経由での文書の見つけやすさや、文書をまたがって類似トピックがある際の関連付けなどに課題がありました。それでも、思考体力がある人たちには読めてしまうのですよね。これら文書を大量の紙に印刷して太めのバインダーで綴じられているというのは霞ヶ関でよく見る光景です。標準ガイドラインのさらなる浸透には、もう少し裾野を広げ、巻き込んでゆくべき多くの人たちに読まれやすくする工夫が必要であると考えました。

今回のHTML化で、検索性や回遊性の課題はある程度解決できたと思いますが、実は別の狙いも同時に実現しようとしています。それは、一度文書を公開したら職務終了というお役所的概念を改め、サービス公開はスタート地点でしかなく、アクセス状況から利用者の意図や要望を推察し、継続的に改善してゆくネット文化では当たり前の作法を、行政システムの構築、運用にも浸透させるきっかけにしたいという想いです。そのためには、アクセスログを取得しやすい形式での情報公開は重要ですし、コンテンツの更新や改善はFactベースで行われるべきです。

使いにくい、不便であると文句を言うことはたやすいですが、ではどうすればよりよい仕組みにできるのかを、政府CIO補佐官およびLINEに所属する立場として、引き続きあきらめずに考え続けてゆきたいと思います。

HTML化で読みやすくなったデジタル・ガバメント推進標準ガイドライン、是非一度ご覧くださいませ。


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