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木の話 外部で使う木材の性質 「風化」

木材というのはとても魅力的な材料です。
建築材料や家具、様々なものに使われる木材ですが、素材の特性を捉えることができると、手入れをしてとても長く付き合える素材です。今回は屋外で使われる木、その材質の秘密を紐解いていきたいと思います。

デッキ材を再生利用
30年ほど経った住宅のリノベーションの現場から、外したデッキ材をもらってきました。長い歳月、風雨にさらされ、苔が生え黒くなった木材でしたが、まず、高圧洗浄して、苔や汚れ、柔らかくなった表面の木を取り除きます。そして、風化した表面を仕上サンダ(サンドペーパーをあてる機械)で削りました。
すると、元気な木材の表面がうっすら見えてきました。経年変化の魅力がある古材です。
樹種は「セランガンバツ」南洋材や熱帯材といわれる樹種ですが、とても強い木材です。
そして、デッキ材の長さを生かした3.4mのテーブルを作ってみました。
デッキ材の第二の人生のはじまりです。

デッキ材を再利用したアウトドアテーブル

じつは強い木材
木材は屋外で使うとすぐに色が変わってしまい、一見、日光や雨に弱そうですが、じつは、とても耐候性がある素材なのです。
日本では木造住宅が主流です。柱や梁には主にスギやヒノキが使われています。
以前は、外壁にもスギ板が貼られていました。なぜでしょうか?
それは、スギやヒノキがとても耐候性のある素材だからなのです。
ただし、木材は表面の風化はさけられません。
木材は日光にさらされると灰色に変色していきます。
できた当初は鮮やかなブラウンだったデッキ材がしばらく経つとグレーになってしまいます。
ただし、その変色の範囲は1mmに満たない範囲にとどまります。

30年経ったデッキ材の切断面。内部は元気な木材が残る。木種はセランガンバツ

強さのひみつ
木材の強さの秘密はリグニンという物質です。植物の細胞と細胞を繋ぐ物質ですが、とても強いことがわかっています。木材の20%から35%がリグニンです。リグニンは人口的に分解することがとても難しく、長く強い木材の性質を保ちます。
日本で最古と言われる木造建築、法隆寺の五重の塔は1300年の歴史があり、社寺仏閣の木造建築物も大変長い寿命で現存します。
それも木材の特性です。風雨にさらされていても、灰色になった表面が風雨から内部を守っているのです。

木材の風化
木材が灰色になるのは風化です。
紫外線がリグニンを分解し、雨で流れていった結果、木材は灰色化します。灰色になってしまうのは、リグニンはもともと木に色をつけている物質だからです。そしてリグニンが流出した表面はその強い構造を失います。しかし、その風化スピードはとてもゆっくりで、最近の研究では、針葉樹で0.014mm/年 広葉樹で0.198mm/年 南洋材で0.02mm/年という結果が出ています。※1
うちにやってきた30年もののデッキ材はセランガンバツという南洋材ですから、30年×0.02mm=0.6mm   つまり、30年で0.6mmしか風化していないということになります。
ただ、様々な条件がありますから、実際の切断面を見ると1mmほどは灰色になっているように見えました。それでも1mm。木材の強度などはほぼそのままです。
前述の実験結果で、もう一つ興味深いことがありました。
通常、家具に使われる木材はナラやブナ、クリなどの広葉樹です。それは密度が高く、強度があるためです。しかし、この実験では密度の高い広葉樹よりもスギやヒノキやヒバなどの針葉樹の方が風化が遅いのです。実験結果によると、なんと100年で1.4mmです。日本の建築材料に針葉樹が多い理由は昔の人たちが様々な樹種を使った結果、体験的に針葉樹の方が風化に強いことがわかっていたのかもしれません。

さて、みなさんも年月の経った木材を見たら、ひび割れた灰色部分にとらわれず、そっと観察してみてください。もしかしたらその木材の第二の生き方が見えてくるかもしれません。デッキ材のテーブルも、ホームセンターで用意できる道具で、年末のDIYでした。

参考:
※1.   山田 昌郎・森 満範     臨海部での暴露実験による 木材の風化速度の検討


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