【言葉】「字幕は少なくともしばらくは人間だけができる仕事だと思う」~戸田奈津子さん
今回は個人的に常に気になっている「AI」関係の話題についてです。映画字幕の第一人者、戸田奈津子さんが雑誌のインタビュー記事で、この話題について取り上げていましたので、シェアしたいと思います。なんだか我が意を得たりと言いますか、AIと人間が共存できる(というか、むしろ得意分野を互いに活用すればいいと思っているのですが)ような希望を見出した気がしています。それでは早速本題に入りましょう。
どんなに英語が流暢でも、日本語表現が下手ではダメ
たしかに映画字幕は長すぎても目で追いきれませんから、短く簡潔に要約していかなければいけませんよね。当然、話のニュアンスや背景も掴みつつ作らなければいけないのですから、考えただけで相当ハードな作業ですね。しかもかつては台本だけを先に貰い、試写室で映像を初めて見た後に、音声を聞きながら、台詞を訳して字幕を作成していくというプロセスだったそうです。そんな背景だったとは・・・!
まだAIには無理。少なくともしばらくは
実際、ひとくくりに「英語」と言っても、アメリカとイギリスでは発音や単語が異なりますし、階級や地域によっても使われている言葉は違います。また、歴史や宗教政治などの背景知識がなければ、台詞として発している言葉の「ウラ」を表現できないということも多々あると思います。その点に関してはやはり人間の「知識」とか「経験・体験」が重要。これは翻訳アプリ等ではなかなか難しいかもしれません(今のところは、ですが)。
正しい日本語を学び、良書を読み、美しい言葉を蓄積させてきた
やはり幼少期(子ども時代)からの経験や体験が生きてくるわけですね。本だけでなくマンガや映画、なんでもいいですが、とにかくいろいろなものから知識を吸収し、良いものとそうでないものを選別する「眼」を養う。これは自分の感覚を大事にしながら、自分で伸ばしていくしかないですから、まだまだ人間が「自分で考えて行動する→知識を吸収し、学び、自身の中で咀嚼していく」スキルにおいてはAIを勝っているのではないかと思います。
まだまだ現役!戸田さんの「プロ魂」
これだけの第一人者、一流のプロフェッショナルであっても、未だにトレーニングを欠かさない。戸田さんの「プロ魂」に脱帽です。まだまだ自分は修業が足りないなーと反省。ちなみに現在はハリウッド俳優の来日時の通訳業は引退されたそうですが、字幕翻訳に関してはまだまだ「現役」。現在も新作の字幕翻訳に取り組まれているそうです。なんというバイタリティー!そんな戸田さんが若者たちへ、こんなメッセージを残してインタビューを締めくくっています。少し長いのですが、引用させていただきます。
もっと個性を出して、自分らしく生きましょうよ。
情報が多すぎる時代だからこそ、余計に周りの目や評価などを気にしてしまう、特に現在の若い「デジタルネイティブ」世代の方々は本人たちが意としていなくても、そうした渦中に巻き込まれているんだと思います。どの時代にも困難はあると思いますが、私のような「アナログ世代」からすると、今の若い方は便利な反面、SNS云々で大変な面もあるんだろうな・・・と思います。だからこそ、思いっきり逆張りで「自分らしく」生きる。そのためには「自分で考え・行動する」。そしてその源泉となるのが「良書」からの「教養」を高めることにつながるのではないでしょうか。これこそが人間の非常に高い利点であると思います。
もちろんこの先のことは分かりません。それこそAIがこうした面でも力を発揮するのかもしれませんし、我々が便利だからということで、そうしたものの力に頼りっきりになるのかもしれません。先のことは誰にもわからない。でも、「自分を高める」ことは誰にでもできることだと思うんですよね。また、賢くAIを活用するリテラシーを持つことも重要だと思います。うまく双方の良いところを生かしていく社会になれば、変にAIの恐怖を煽るようなメディアから距離を置くことができると思います。
がんばれ、映画字幕!・・・字幕文化は残ってほしい
最後になりますが、大の映画ファンとしては「字幕」が衰退し、「吹替」が主流になってきていることは、時代の流れとはいえ少しだけ寂しいですね。これも「アナログ世代」のノスタルジーなのか、やっぱり映画は俳優の「生」の声が聴きたい、と思ってしまうんですよね。もちろんコメディ映画など、会話が多いものは吹替の方が情報量が多いので、それでも良いのですが、それでもやっぱり・・・と字幕文化がなんとか残ってほしいな、と思っています。
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