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フィードバックは「鏡」のようにと言われるけれど

「老いとは残酷なものです」

そうなのか……。Netflixで配信されている「ザ・クラウン」を観ながら、思わずつぶやいてしまいました。

エリザベス女王の生涯を描いたドラマの中で、彼女が女王として最初に迎える首相がチャーチルです。

君主としての薫陶を受けたり、病気を隠していたことを叱ったり。大きな年齢差がありながら、ふたりは信頼関係を築いていくのですが、齢80になっても首相であり続けようとするチャーチルには、不満の声も高まっていました。

シーズン1の第9話は、そんなチャーチルの引退決意を描いています。

80歳の誕生日を祝って、肖像画を贈られることになったチャーチル。でも、絵を描きにやってきたのがモダンアートの画家だったため、不機嫌に。

チャーチルはすでにデブデブで、ヨレヨレに見えますが、本人としては「オイラはまだまだやれるゼ!」という感じ。若手(といっても年齢的には中年ですが)の引退勧告も完全スルーしてます。

チャーチル自身も絵を趣味としていたこと、子を持つ親としての想いを語るうち、少し打ち解けるのですが。

セレモニーで肖像画が披露されると、チャーチルは激怒。だから現代アートはダメなんだと言わんばかりに「オイラはこんな妖怪みたいじゃないゼ!」と怒鳴り散らすんですよね。

肖像画も燃やしてしまったため、ドラマの中でもほとんど映し出されません。

だからどんな絵だったのか、想像をたくましくするしかない。

ここまでのチャーチルの言動から思い浮かぶのは、「老害」という言葉でしょう。デブデブで、ヨレヨレで、髪の毛も梳かしてないからホワホワになってるのに、権力欲だけムッキムキ。

肖像画に文句をつけるチャーチルに、画家が応えたセリフが冒頭のひと言です。

「老いとは残酷なものです」

チャーチルだって、鏡は見ていたんじゃないかと思います。毎日ヒゲくらいは剃ったでしょうしね。

でも、鏡の中に写る姿は、若き日の自分に「変換」されていたのかも。そうして考えたんじゃないでしょうか。

「オイラはまだまだやれるゼ!」と。

でも、他者によって描かれた自分の姿に、ようやく「老い」を自覚した。それが受け入れがたくてキレた。老人としてのチャーチルの戸惑いが、強く心に残りました。

こういうの、わたしもとても心当たりがあります。最近、ちょっと太ったかも?と思って鏡を見ても、「まだ大丈夫」と思ってしまう。

いやいや、明らかにジーンズきついやん!!!

閑話休題。

理想的なフィードバックは「鏡」になることだとよく言われます。わたし自身、コーチングのセッションの中でフィードバックをするときは、「鏡」を意識しています。

でも、このチャーチルの肖像画の話を観てから、「鏡」自体が歪んでいたら? 「鏡」に自分が見たいものを見ていたら?ということも、一歩引いて疑うようになりました。

コーチングのスキルの中でも、最も効果が高く、かつ、使うのが難しいといわれるフィードバック。

適切に使えば劇的に思考が変わり、結果として行動が変わる。でも使い方を誤れば、嫌味なダメ出しと受け取られ、相手を傷つけてしまう。

切れない刃を振り回して悦に入ることほど、かっこ悪いモノはないですからね……。

フィードバックの効果を知っているからこそ、まず意識するのは相手との信頼関係です。

相手を変えてやろうという下心があっては、絶対に届かない。いいこと言いたいという自分の欲は、鏡を曇らせる。

フィードバックの精度を高めるためにも、必要なのは自己信頼と他者信頼です。

あなたは鏡に、何を見ていますか?

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