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えっ!赤字の税務署 日産下請け減額強要問題の背景 消費税収2割をトヨタ、日産など輸出系大企業に還付 経団連が消費増税に賛成する汚い思惑 

企業は罰を受ける体も、非難される魂も持たないのだから、好き勝手に行動する

―初代サーロー男爵エドワード(1731~1806)、ウォーレン・ヘースティングズ弾劾裁判の大法官
 
「略奪の帝国 東インド会社の興亡」(ウィリアム・ダルリンプル著、河出書房新社2022年発刊、原題は「ジ・アナーキー」)の冒頭で紹介されたこの言葉を思い出しました。
 
「下請けいじめ」という視点にとどまる日産問題ですが、その奥底には、「俺たちが払う消費税分は下請けのお前たちが負担しておけ」という消費税の不条理「転嫁できるもできないも力関係で決まる」があることを多くの大手メディアは指摘していません。
 

1990年代から続くいじめ?


日産の「下請けいじめ」問題を少しおさらいしてみましょう。
3月4日から9日までの読売新聞をまとめると、
<公正取引委員会は7日、自動車部品を製造する下請け業者への納入代金を一方的に引き下げたとして、日産自動車(横浜市)に下請法違反(減額の禁止)を認定し、再発防止などを求める勧告を行った。
違法な減額は36社に対して計約30億円で、1956年の下請法施行以来の最高額
違法と認定されたのは2021年1月~23年4月、タイヤホイールやエアコンなどの部品を製造する全国の下請け業者に納入代金を支払う際、発注時に取り決めた金額から支払い分を3~5%程度減らしていた。減額分は日産側が決定し、36社のうち6社の減額は1億円を超え、約11億円を減らされた業者もあった。
日産は違反を認め、今年1月末に各業者に(認定された)減額分を全額支払った。
違法と認定された期間は2年だが、1990年代から続いていたとみられる。
日産の資本金が6000億円超なのに対し、下請け業者の大半は1億円以下
業者側は取引の打ち切りを恐れ、減額を拒否できなかったという。
自動車メーカーでは、マツダも2008年と21年に、不当な減額を行ったとして、下請法違反で勧告を受けた。>
資本金にして6000倍のガリバー企業が過酷な下請けいじめをしていた背景にあるのは、消費税、株主資本主義だと考えます。
特に消費税について考えます。
消費税はそもそも、消費者にとっては単なる値上げに過ぎません。なぜなら、消費税は一般会計に入れています。社会保障目的税と言うなら特別会計に入れるべきではないですか。中小企業にとってもただの負担に過ぎません。赤字でも払わないといけない最も過酷な税金です。
一方、大企業はその強い立場を利用して、「値引け、値引け」と国内販売で自分たちが支払うべき消費税は中小に押し付けています。
消費者からの預り金ではなく、預り金的性格でしかないことは、最高裁も認定しています。
 

モラルハザードの輸出還付金は消費税収の26%


消費税の大問題は、輸出系大企業に消費税のかからない海外取引に消費税をかけるのはかわいそうだからと返金してもらえる還付金です。そんな優遇を受けていながら、おそらく輸出品の部品も納品している中小企業に一方的な値下げを求め、負担すべき消費税の何割から逃れていたというわけです。
財務省の2022年度の消費税決算書によると、収入は約31兆円で還付金が約8兆円と26%に及びます。
 
全国商工団体連合会のホームページ
https://www.zenshoren.or.jp/2023/11/27/post-29301
に重要な指摘がアップされています。
それによると、<トヨタ自動車など輸出大企業20社が国から還付された消費税還付金額が1兆9千億円に達することが分かりました。元静岡大学教授の湖東京至税理士が、2022年4月~23年3月期(一部22年1月~12月期)の決算に基づき、各企業の輸出割合などを推計して算出しました。湖東税理士は、「輸出還付金を正当化するためにインボイス(適格請求書)が導入された」と告発します。>
消費税率には10%、8%、0%があると指摘しトヨタの消費税還付金を試算。
<トヨタの輸出売り上げは約10兆6千億円です。
①10兆6千億円に0%をかけると、消費税額はゼロ円②トヨタの国内販売分の売上金額は3兆5千億円。これには10%の消費税がかかるので、消費税額は3500億円③消費税が含まれている仕入れや外注費、諸経費が8兆8千億円あり、これにかかる消費税分(仕入税額控除額)が8800億円④売り上げにかかる消費税額3500億円から仕入税額控除額8800億円を差し引くと答えはマイナス5300億円。税務署に支払う額はマイナスとなり、逆にトヨタには、税務署から還付金として5300億円が支払われます。輸出還付金がもらえるのは、ゼロ税率と仕入税額控除方式があるためなのです。>
 

インボイス制度は輸出還付金正当化のため


<インボイス制度の原型は、輸出企業への還付金の正確性を保証するためのものだったのです。>
<インボイス制度導入の動機は、直接税である「付加価値税」を間接税らしく見せるようごまかすためだったのです。>として丁寧な解説もありますので、それは上記のHPで見ていただくとして、還付額上位企業20社(還付金合計1兆8972億円、2022年度分、標準税率10%)の推算に急ぎます。
 
1位はダントツでトヨタ。売上高14兆769億円、輸出割合75.4%、還付額5276億円、所轄税務署:愛知・豊田で、上記の試算5300億円と近接しています。
2位は下請けいじめの日産です。売上高3兆2406億円、輸出割合83.7%、還付額1897億円、所轄税務署:神奈川・神奈川。
3位は本田技研工業。売上高3兆5864億円、輸出割合87.3%、還付額1879億円、所轄税務署:東京・麻布。
4位はマツダ。売上高3兆3億円、輸出割合85.7%、還付額1396億円、所轄税務署:広島・海田。
以下5位にデンソー、6位に三菱自動車と続きます。
自動車メーカーが1~4位、6位を占めています。
 

えっ!赤字の税務署


<赤字額が第1位(21年4月~22年3月期)の愛知・豊田税務署では、トヨタやその他の輸出企業に還付された金額から、同税務署管内で中小業者らが納めた消費税額(約676億円)を差し引いた赤字額は4943億円となり、トヨタ1社への還付金額は、約5300億円となって先の推計とも一致します。>
 
しかし、なぜ政府はこんなごまかしの特例をつくるのでしょうか。
業界団体の日本自動車工業会は、自民党への寄付金が二番目に多い団体です。最新の自民党の献金窓口である国民政治協会への政治資金収支報告書(2022年分)によると、日本自動車工業会の献金額は、日本医師連盟に次ぐ第2位の7800万円で、各社は個別にトヨタ5000万円、日産3700万円、本田2000万円などと支払っています。
消費税の還付金など自動車輸出系大企業への優遇政策は、国民が支払っている政党交付金(2023年自民159億円など9党に315億円)よりはるかに安いものの謝意を表す顔が見える企業献金への明確な見返りと言えます。
 
日産の下請けいじめの背景は、国民への重税を下敷きにした企業献金と優遇税制の相互依存にあると考える所以です。

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