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ミツバチ 未知との出会い

「ミツバチ(養蜂)をやりたい」

以前勤めた会社でのある日の出来事でした。
イギリス人社長がこう言いだしたのです。

「ふざけるな!」
私は心の中で叫びました。

当時勤めていたのは、屋外型でエンターテイメントを含む複合商業施設。

「蜂なんか飼ったらゲストが刺されるじゃないか。何を考えているんだ!」
それが正直な感想でした。

でも社長の思いが強く、あるつながりの紹介で銀座で養蜂をされている方々に会いにいくことになったのです。

「え?銀座?」
と思われる方も多いのではないでしょうか。

そう、あの銀座です。
高級なお店が揃いビルが立ち並ぶ都内有数のショッピング街です。
実はその銀座で養蜂を始めた方々がいるのです。

その名を、「銀座ミツバチプロジェクト」と言います。
2006年春から、銀座のビル屋上で養蜂を始められたのです。

訪問の日、紹介者とイギリス人社長とともに銀座のとあるビルで集合。
プロジェクトの代表の方とご挨拶させていただきました。

恐らく誰もがするであろう質問をしました。
「刺されるのではないですか?」
「ミツバチは人を刺しません」
それが答えでした。

銀座でも、刺されるという事象は年1回あるかどうかで、たまたま寄ってきたミツバチを掃おうとした際に刺されることがあるということでした。

ミツバチは蜜を集めることにしか興味はなく、他の蜂のように人を刺さないのだそうです。
刺されるのは、お花を触ろうとした際にたまたまミツバチがいて、攻撃されたと思ったミツバチが刺してしまうということでした。

その後代表の方からミツバチの生態などについてお話を伺いました。

・ミツバチの世界はとてもシステマチックにできている
・ミツバチの一生は約1.5ヶ月
・幼虫で2週間、巣箱内の掃除役として2週間、働きバチとして2週間
 (寿命については諸説あり)
・掃除役は弱った蜂、死んだ蜂を巣箱の外に捨てる
 (切ない😿)
・行動半径は3km程度、範囲内に蜜源があれば成り立つ
・一匹のミツバチが集める蜂蜜は小さじスプーン半分程度
・蜂蜜を食べるとは、ミツバチの命をいただくことに等しい

私は、お話を聞いて正直感動してしまったのです。

そして、「これはビジネスになる!」と思いました。
蜂蜜を売るというのではなく、養蜂に関してワークショップをすることで、特にお子さまに感動を与える知育ビジネスとして成り立つと思ったのです。

「ふざけるな!」と思ったところから考えが一変したのです。

そこから自施設でのミツバチプロジェクトを発足。
社内で有志をつのり、タイトなスケジュールでの養蜂立ち上げがスタートしました。

養蜂は行政に蜜蜂飼育届というものを出さなければならないなど、近隣や同業者への配慮も含め様々な調整作業が必要となりました。

バタバタ劇でしたが、ミツバチ2群(巣箱の数)を迎え、無事養蜂がスタートしました。

ミツバチはとても愛らしく、一生懸命に生きているのが直に伝わってきます。
日を追うごとにミツバチへの愛情が増すのが印象的でした。

またミツバチの生態はとても面白いものがありました。

例えば、毎週「内検」といって巣箱内をチェックするのですが、その際には燻煙器というものを使い、紙などを燻してミツバチに煙をかけるのです。
煙をかけられたミツバチは、まわりで火事が起きたと錯覚。生き延びるために蜂蜜を食べます。するとお腹いっぱいになったミツバチは眠くなり、おとなしくなって巣箱を開けても攻撃してこないというのです。
(諸説あり)

聞いてるだけでかわいくなってしまいます。

また、巣箱の正面に立ちさえしなければ刺されることはなく、巣箱の横側から近づけば、真横から間近でミツバチを見ることができるのです。

実際に撮影したミツバチ。足に花粉のだんごをつけている。

ともかくどんどん愛情が増していきました。

その後、残念ながら転職にともなう退職で、夢に見たワークショップは行えませんでしたが、引き継いだメンバーが翌年ワークショップを実現してくれたのです。
「ぜひ来てください」と言われ、久しぶりに古巣を訪れました。

ガラス張りの特別な巣箱でミツバチを見ることができ、ハンドルをまわす特殊な機械で蜂蜜を採取し、小瓶につめて持って帰れる体験のワークショップを作りあげてくれていました。

まさか自分が養蜂をやることになるとは夢にも思っていませんでしたが、まさしく未知との出会いで、人生においてとても貴重な経験になっています。

きっとこれからも機会があれば熱くミツバチについて語るのだと思います。

今日は仕事の姿勢などからは離れて、仕事での良き思い出話をさせていただいたのでありました。


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