ピザ屋あり


 ピザ屋のウェブサイトを見ていた。イタリアらしさが売りの店ではなく、アメリカらしさが売りのチェーン店である。
 皆さんご存知だろうとは思うが、最近はいろいろなピザが増え、生地の固さから具の分割具合まで様々に選べる。 

 大陸のほとんど向こう側から、わざわざ二つの大洋とアメリカ大陸を経由して、こんなところまで伝わってきた。そしてここに来て照り焼きを乗せられるなどしている。人間の食への探究心には感心するばかりである。

  それはさておき、私はウェブサイトの上部に小さなアメリカ国旗のマークを見つけた。その横にはEnglishと書かれている。すなわち、そこをクリックするとウェブサイトの言語を英語に切り替えることができるようだ。

  しかし考えてみれば、「星条旗」と「English」というのもおもしろいものだ。星条旗はイングランドのものではないが、アメリカの公用語は英語と呼ぶ。 

 このピザ屋のコンセプトはアメリカらしいピザであるから、ここにアイコンとしてユニオンジャックを貼り付けるのはおかしい。現在の日本の義務教育で教えられているのも、アメリカの英語だったはずだ。

  私はしみじみとその文字とアイコンを見比べて思った。ピザも寿司もラーメンも海を超え、大きく姿を変えながら各地に存在し続けている。しかし、「English」がイングランドだけで話されるものではなくなったにも関わらず、英語は今も変わらず英語と呼ばれている。

  国破れて山河あり、コンビニ潰れてピザ屋あり。

 そして言葉は、実際の状況に伴わなくとも生き残っていたり、使われ続けていたりする。そのしぶとさが、私には少し好ましい。 


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