「消費増税を凍結せよ!」元日銀副総裁の講演

表現者クライテリオン主催のシンポジウム「消費増税を凍結せよ」に参加してきました。

「反緊縮」が広がりを見せる中、注目のシンポジウムで、会場はほぼ満席(200名以上?)でした。
僕は、一般席の最前列中央から二番目という席が空いているのを見つけ、着席(なんと目の前に元日銀副総裁の方が…)しました。

お目当ては、元日銀副総裁で上智大学と学習院大学の名誉教授である岩田規久男さんの基調講でした。配布された資料に「リフレ・レジーム」の文字があり、一目で岩田規久男さんの資料と分かりました。

基調講演のタイトルは「消費増税はデフレ脱却を不可能にする -財政緊縮度を下げて、財政の「リフレ・レジーム」転換-」です。

僕なりに要約すると
“金融緩和でデフレ脱却まであと一歩だったが消費増税に邪魔された。年金受給者や非正規雇用という消費税に弱い人が人口の約半分となり増税凍結+α(家計の可処分所得増)が必要である。緊縮策をやめ財政金融政策が協調せよ!”
となります。

各スライドのタイトルは次の通りです。
① 14年消費増税で、毀損された金融政策の「リフレ・レジーム」
② 19年度から20年度にかけての財政緊縮度上昇は20年度を超える
③これまでは、基礎的収支赤字GDP比を下げると債務残高GDPは上昇した
④ 内閣府予測では、これまでとは逆に、消費増税すると、基礎的収支赤字対GDP比の低下とともに、政府債務残高GDP比は下がる
⑤ 財政再建の原則は、財政政策と金融政策が協調して、名目成長率を上げること
⑥ ユーロに学べ財政政策と金融政策の協調
⑦ ユーロ圏は「金融緩和と財政緊縮度緩和」で、財政再建に成功

もう少し詳しく振り返ってみます。

① 岩田規久男氏の著書「日銀日記」に書かれています。
“古舘氏は「デフレ脱却できなければ、消費税は上げないということですね」と何度も念を押す。これに対して、安倍総裁候補は「そういうことです」ときっぱりイエスと答え”
この発言と異なり安倍晋三氏は、デフレ脱却途上で消費税率8%への引き上げを2013年10月1日に「確定」させしまいました。

三党合意に基づく法律で決められていたとはいえ、金融緩和をしている最中に緊縮財政である消費増税をしてしまったのです。
岩田氏は講演の中でも、消費増税でが無ければ、2014年中にも物価上昇率2%に到達していただろう、との見通しを述べています。

② 財政赤字GDP比、プライマリーバランスGDP比を基に財政緊縮度を分析されています。
岩田氏は、期日を切ってプライマリーバランス黒字を目指すこと自体を誤り、と指摘し、名目GDP成長率を高めることの重要性を説きます。

③2009〜2017年度のデータを基に、基礎的収支赤字GDP比を下げると債務残高GDPは上昇した事実を示します。

④ ところが、内閣府の試算(2019〜2028年度)では、これまでとは逆に、消費増税すると、基礎的収支赤字対GDP比の低下とともに、政府債務残高GDP比は下がる、となっている点を信憑性が低い、と指摘します。

⑤ 財政再建の原則は、財政政策と金融政策が協調して、名目成長率を上げること、という基礎的な考えを示します。(プライマリーバランス黒字化では無いことに気をつけてください)

⑥〜⑧ IMFは緊縮の誤りを認め、その後のEUでは財政緊縮度が緩まり、財政状況が改善した例を示します。

当たり前のことを当たり前に行えば、当たり前の結果が出ることを丁寧に説明されていました。
それをやらずに、金融政策で間違いをおかす中央銀行総裁が恐慌を招いた、という書籍もあるそうです。どこかの国の中銀総裁が、増税しないと「どエラいリスク」と言っていたことを残念な話題として、取りあげていました。

古くは、元FRB議長を務めたベン・バーナンキが減税+金融緩和をデフレへの処方箋として提案していたことに言及されました。
シムズのFTPLも、ジャクソンホールで聞いて「目から鱗」ではなく、マクロ経済では当たり前のこと、とも。

ユーモアを交え、熱のこもった講演でした。
内閣官房参与や経済財政諮問会議メンバーなど、マクロ経済政策ブレーンとしてご活躍いただけないかな、と思います。

その後は、元内閣官房参与の藤井聡さん、薔薇マーク運動の松尾匡さんがそれぞれ講演。

最後は、宮崎哲也さんを司会にして、藤井聡さん、松尾匡さんの対談でした(熱い思いが伝わってきました)。

そして、思いがけない人も参加されていました。

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