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精神科病院で導入している瞑想法

「坂本さんラジオ体操の担当をやってもらってもいいですか?」

夕方の16:30ごろに唐突に女性の看護師がやってきてラジオ体操を頼んできた。坂本はその時間帯は空白の時間ということにしていたので特にやることはなかったんだけど、いきなりラジオ体操と言われてもラジカセやCDがどこにあるのかも分からないし、何からすればいいのかまったく見当もつかない。看護師はまずは放送で患者をホールに呼び、ラジカセを用意して患者が集まったところでラジオ体操を始めた。

高齢の患者が多いのにも関わらずラジオ体操のやり方はだいたいみんな覚えているようだ。ラジオ体操が終わると次に水前寺清子の365歩のマーチを流してみんなで手拍子を打って足踏みの練習をする。一連の動作はこれだけで、16:30になると7〜8分くらいの時間を使ってその看護師と僕のふたりでラジオ体操を毎日やることになった。

しかし一年も経つとその看護師はいつの間にかに病院を辞めてどこかに行ってしまった。そしてラジオ体操の担当が僕ひとりになると坂本は気兼ねなく好きなCDを流せるようになった。基本的にはラジオ体操→水前寺清子→そして最後に坂本のリクエスト曲1曲というルーティンで音楽を流すようになった。職場のスタッフはおおよそ3年で病棟移動をするので、古いスタッフはどんどん移動し、新しいスタッフが定期的にやってくる。そして新しいスタッフがやってくるたびに、ここの病棟では音楽を流すんですね、とみんな物珍しそうに言った。

そしてスタッフはどんどん入れ替わり、なぜか病棟移動がない坂本は1年経ったら流す曲をもう1曲増やし、もう1年経ったらもう1曲増やしと少しずつ流す曲を増やしていった。そして6年も経ったころには元々16:30からスタートだった時間も16:20からに変え、坂本のDJタイムは30分となり、科長も含め全てのスタッフは全員入れ替わり、この坂本の音楽タイムは元々昔からこの病棟に存在する恒例行事だと思っている人たちばかりになった。しかしそれは坂本がコツコツと他のスタッフの目を気にしながら内緒でこっそりと作り上げた坂本と患者が楽しむための勝手な暇潰しの時間だった。曲の順番はラジオ体操と365歩のマーチは不動でその後は坂本の気分による。たとえば昨日の選曲で言うと1曲目はラジオ体操でその次が365歩のマーチ、3曲目が昨日は暑かったので夏祭りの気分をだすために炭坑節、4曲目は熊本のお祭り気分を出すためにザ・ピーナッツのおてもやんのジャズバージョン。5曲目は夕方の差し込む夕日がきれいだったので瀬戸の花嫁でまったりと。瀬戸の花嫁で落ち着いたところで感動系の曲でテレサテンの時の流れに身を任せ。7曲目の最後は1日の締めくくりを演出するために石川さゆりの歌う奄美民謡の朝花を流す。

ということで普通は3年で移動するはずの病棟に8年間(去年1年間だけ別の病棟に出向したが)も居座って、なんの相談もなく30分間の音楽タイムを勝手に作ってしまった坂本の仕事だが、坂本が別の病棟に出向しているときでも他のスタッフがやれるようにと副師長が坂本に相談のうえマニュアルまで作ってくれて誰でもラジオ体操をできるようにした。坂本が今年の3月に別の病棟から今の病棟に戻ってきたときに他のスタッフがラジカセで音楽を流しているのを見て我ながら良い職場で働いているなと思った。

そして職場で毎日ラジオ体操をしているのに今度はプライベートでラジオ瞑想をすることになった。普通はラジオは音楽を流したりトークしたりといったことが多いんだろうけど、今日のbudspackers radioはラジオ瞑想をやります。もし瞑想に興味がある方はマインドフルネスという僕の精神科病院でも導入された誰でもできる瞑想をするので軽い気持ちで体験してみてください。いずれ催眠術もしようかなと思います笑。かなりカルトなラジオ番組になってきたけど、たぶん他にはない番組だと思いますので興味のある方はよろしく道中。下のリンクから聞けます。

※ラジオ放送は終了いたしました。また来月よろしくお願いいたします。


*写真は坂本の働く病院のビルで、写真を拡大してよく見ると屋上で坂本のバンドメンバーのタローファンクJrが手を振っている。

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