セルフレジとコミュニティ
セルフレジが話題だ。そこで「コミュニティ」と関連づけて考えてみた。
論点
まず、今回話題(というか「悪役」)になっているのはセルフレジに適応できない高齢者。
・機械が苦手なので敬遠してしまう
・客が操作するのは店員の労働の代わりだ
・店と客とのコミュニケーションが無くなったのが嘆かわしい
などの高齢者の主観的な意見が糾弾されている。SNSの世界では度々このような「悪者の退治」が話題になるが、まず客観的に俯瞰してみることにする。
脳の老化
早い人で40代から始まる、という脳の老化。前頭葉が萎縮することで起きるという。
加齢による思考の柔軟性の欠如は、科学的に解明されていた。私ごとだが身近に高齢者がいて日常の生活でたいへん心が疲れていたが、理由を知ったら気が楽になった。物理的に、科学的に「弱者」なのだと。何事も真正面から争うのではない。”かわす”のだ。こちら側が譲るのがスマートである。
客が操作するのは労働か
スキャン作業を客が行うことは店の労働を代わっていることになる。なのでその分が金額に反映されるべきという主張があるが、これはどうか。1925年頃に鉄道の切符を自動で販売する券売機が登場したという資料がある。今から約100年前には客が自分で商品を選び支払いする「セルフレジ」的なものは存在していたことになるので、これは「適応できない」高齢者だと言われても仕方ない。今までの様式が、変わったのだ。そしてスーパーの売上高営業利益率(本業の儲け)は1〜3%が平均で、全体平均は約2%だと言う。それだけギリギリでやっている、いややって「頂いている」業界。あれだけの品数をどんな時間でも棚いっぱいに取り揃え、鮮度まで管理してくれている。それを自分でやることは不可能だ。つまり、セルフレジは新しい形の「おもてなし」なのだ。
店と客とのコミュニケーションが無くなった
店と客との会話が無くなったのが嘆かわしい、という主張についてはどうか。これも未だに飲食店(特に居酒屋や個人経営の寿司・割烹など)では接客が重視されていることから、高齢者が様式の変化に適応できない例であろう。自身の取引先(店舗経営のプロ)から聞いた話なので客観的な情報源は提示できないが、カフェ形態で飲食店で支払い部分を無人対応にすると売上が減るという。やはり人は最後には「笑顔」と「ありがとうございました」で見送られたいのだろう。
セルフレジとコミュニティ
そこで、本題。セルフレジとコミュニティについて。まず、「弱者」への理解はコミュニティでも考慮すべきだ。コミュニティイベントでの実体験として、視力が弱いために最前列に座りたいという要望を頂いたことがあった。外見だけでは判断できない、その人なりの立場を理解する必要があると痛感した。次に、機械な対応で接客が無くなったことについて。これについては、今回の検証で改めて気づいたことがあった。
誰もが接点を濃く持って欲しいわけではない
たとえば、毎日のように行くスーパーではお互いに「覚えてしまう」が発生するので「どんな生活なのか」を探られる、毎日顔を合わせて覚えられるのが嫌だという意見がある。また、あまりに「見られすぎている」と感じるのも不快になる。客はわがままなのだ。「見られなさすぎ」も嫌だし、「見られすぎ」も嫌なのだ。こういった背景から、コミュニティの参加者の
誰もが接点を濃く持って欲しいわけではない
ことを意識する必要がある。自身の #note で、飲食店での体験をコミュニティと比べてきたが、これは飲食店のジャンルにもよる部分も大きい。
マクドナルドではセルフ注文端末「キオスク」が一般的になったが、これはファストフードというジャンルにおける現代の最適解なのだ。
自身も最近、このキオスクを使って店内でオーダーしてみたが、最後の商品引き渡しでの接客には力が入っていた(顧客接点をもつように故意に会話していた)ように感じた。また、厨房には多くのスタッフがいて「提供スピード」を上げるような人員配置となっていた。オーダー段階は無人化し、商品提供段階では接客に注力する。つまり、最適化である。それでは、コミュニティの最適解、最適化はどうか。これはやはり、そのコミュニティの目的、(ベンダーにとっての)ビジネスシナジー、地域性、参加者属性など様々な要素によって可変する。そして、パンデミック時にみられた「オンライン配信」の登場と普及もまた、そのときの最適解であり、最適化である。
まとめ
かのセルフレジの話題を通じてコミュニティを考えた結果、以下のことがいえる。コミュニティにおいては、
・参加者の包摂と理解
・参加者接点の距離感
・最適解探しや最適化
が必要であることを再認識した。
明日のコミュニティは、常に新しく「受け入れ」「変(替)え」ていく必要があるのである。参加者と心地よい距離感を保ちながら。
#コミュニティデザイナー
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