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実例:懇親会の体験価値を高める方法

コミュニティの育成・活性化を支援している立場から、改めて過去の経験・知見を整理して今後に活かしたいと考えました。コミュニティのご相談を受ける際に、議論の「土台」になれば幸いです。今回はコミュニティ活動における「交流」を重視する観点から「懇親会の体験価値を高める方法」について、対面(オフライン)イベントの例を考えてみます。

(1) テーマの「トンガリ」

コミュニティイベントにおける懇親会は、ある意味「ハード」で「タフ」な場です。なぜなら「初対面」の人と「笑顔」で「挨拶」し「共通の会話」をしなければならないからです。以前にコミュニティでは誰もが陽気に振る舞わなければいけないのか?という観点で考察しましたが、この際には「自分は初対面の人との会話が苦手」という方から共感の声を多く頂きました。

この初対面でのコミュニケーションの得手・不得手の差を超えて、まず第一に企画者(主催・主宰者)として最も重要であると考えている要素がそのイベントにおけるテーマの「トンガリ」です。これは自身が一時期、求人広告の営業をしていた際に学んだ”鉄則”からも言えます。

誰にも響く(と考えた)広告は、誰にも響かない

求人広告枠の価格は、10万単位もあれば100万単位もありました。初めて100万単位の大きな枠を買ってくれた不動産会社の社長は「なるべく多くの人に刺さる内容で」と言いました。しかし当時の上司は正反対のこと、つまり

高額な求人ほど「狭く」「絞って」作れ

と言うのです。「こういう人物に来て(応募して)ほしい」というペルソナ設定をなるべく細かくやるべきだと。イベントのテーマも、同じことが言えます。「これは自分にとって必要な内容だ」と、明確にわかるような「トンガッた」テーマ設定が必要です。イベントの企画側にとって、前述の不動産会社社長のように「なるべく多くの人に来てほしい」との願いは理解できます。しかし、多くの参加者にとって忙しいなか会場まで足を運び、懇親会まで参加するという「コミット」をするには「これは自分ごとなのだ」とハッキリ記憶に残るテーマであることが重要です。つまりこのことが、

「自分ごと」の参加者で構成される懇親会

となり、自ずと参加者にとっての体験価値を高めることにつながるのです。

(2) 会費を有料に設定

前述の(1)テーマで絞ったのち、さらに絞ると参加者にとっても良い効果があります。それは「有料」に設定することです。これにより、そのテーマが

・自分ごとであり
・物理的に足を運び
・有料の「会費」を払って

まで参加したい人の集まりになります。ここまでの「コミット」をした人どうしであれば会話が「濃く」なり、参加者体験の質が上がることは言うまでもありません。なお、会費の相場としては1,000円が一般的で、それより多くても少なくても運営側に金銭負担が生じる、剰余が出て処理に困るなどの問題が発生します(コミュニティが任意団体の場合)。

(3) 同会場で1次会

前項ではテーマや会費の有料設定といういわば「ソフト」面についてでした。次は「ハード」面はどうでしょうか。イベントと「同会場」で懇親会(1次会、簡易なもの)を行うことが挙げられます。理由としては、前述のような「初対面者との会話」という高いハードルを直後の熱気(精神的な盛り上がり)で緩和することができるからです。同会場での実施ではなく、イベント会場を出て別の店まで歩くという工程を挟んでしまうと「離脱」が起きる可能性が高くなります。

(4) 「横つなぎ」係の配置

孤立した人がいないか全体を見てまわり、同じ興味・関心や業界の人々を「横つなぎ」する役割の人を配置すると良いでしょう。コミュニティの立ち上げ時には「知り合い」も少なく「アウェイ感満載」で不安な参加者も多く、このような「仲人役」は非常にありがたい存在です。「誰も知り合いがいなかった」と参加者に思わせたり言わせてしまわないように「つなぎ」役は必ず意識したいものです。また「まだ自分自身が実務経験に乏しいので登壇者と対等に話ができない」と考えている参加者にも気軽に声をかけて「新しい実践者」を歓迎する雰囲気づくりを行うことがコミュニティの生命線でもあると考えています。

(5) グループ写真

懇親会の体験価値に直結するか?と言われれば少しポイント(懇親会の前後におこなわれる「お決まり」事項なため)が違うとも言える「グループ写真」の撮影。これはコミュニティへの「参画意識」を高める効果があると考えています。特に懇親会に入る前、または最後に撮影する写真は「全員で映る」という「共同で行う行為」になるため帰属・仲間意識を高める効果があるでしょう。

令和元年GW全国ツアー

まとめ

既にお気づきかもしれませんが、ここでは懇親会においての「飲食」の質については一切触れていません。強いて言うなれば、おしぼりやトイレ(手を洗う場所)の案内などの細やかに気遣いがあれば「ベター」ですが、本質ではありません(ただし、そのイベントがベンダー・メーカーが前面に出る協賛色の強いものである場合は一定の質が求められることは言うまでもありません)。コミュニティ(特に有志で組成されたもの)は、本来「ベストエフォート」で行う趣旨が強いため「接待」的な要素がない(またはNGである)ことが多く、過剰な”おもてなし”は飲食だけを目的とした参加者を呼んでしまうことがあります。

この飲食だけを目的とした参加者も、前述の「有料」設定で排除することができるため懇親会の実施時は(たとえ予算があったとしても)なるべく会費を取るというスタンスを示すことが参加者体験の向上にもつながります。

コミュニティの懇親会は「接待の場」ではない
参加者にとって「理想の場」でなければならない

その理想の姿を追求するため常に仮説検証を行い、参加者体験の質を維持・向上する観点をもつことがコミュニティ発展の鍵となるでしょう。

【告知】コミュニティ担当者が集い、語り合うイベントを行います
3/28(木) 19:00 コミュニティの失敗例(アンチパターン)を語るLT大会

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