コントロール幻想
「体の病気を治したい」「遠くにいる人と話をしたい」
医療や電化製品、薬、電話、飛行機、車、スマートフォン…
人類のとどまることのない欲求は、より高次の科学技術を開発し、文明の発展を遂げる推進力となってきました。
その歴史は、人類の欲求を叶えるために「この世界を思い通りにコントロールする」挑戦であったと言い換えることができるのかもしれません。
テクノロジーの進化とともに、人類がコントロールできる領域が広がってきたことは間違いないでしょう。
現代に生きる私たちは、昔の人に比べて、明らかに世界を思い通りコントロールできるようになっています。
江戸時代に260年に及ぶ幕府を築いた徳川家康でさえ、エアコンの効いた部屋で快適に過ごすことはできませんでした。
ところが、私たちはテクノロジーの進化のおかげで享受できる豊かな生活に感謝するどころか、それは当たり前のこととして、さらなるコントロール領域を増やしていこうといています。
今日は、現代人が気を付けたい「コントロール幻想」について記事にしました。
コントロールできる領域が増えると幸せを感じる
人の幸福感とコントロール領域には密接な関係があります。
人はコントロールできる領域が増えると幸せを感じやすくなるのです。
例えば、生まれて間もない幼児は、自分で箸を使い食事をすることができません。
親や保育士、保護者の助けてもらって、ものを食べることができます。
それが成長するにつれて、自分で箸を使えるようになり、自分の手で食べ物を口に運ぶことができるようになる。
すると、自分が思いのままにできること=コントロールできる部分が増えて幸せを感じられます。
さらに成長するにつれて、走れるようになる、自転車に乗れるようになる、字を書くことができる…
自分の体を思い通りに使えるようになります。
思い通りにできることが増えると、成長を実感することができ、喜びと幸せを感じることができます。
子供が「自分は何でも思い通りにできる」という万能感を持つことは、極めて自然で健康的なことなのです。
大人になってからは、職場で働く場面でもコントロールできる領域を増やすことができます。
社会人として初めて就職する新入職員は、自分が働く環境を変えたいと思っても変えることはできません。
ところが、数年同じ職場で働くと、職場に意見を言うことができるようになり、部署を任される管理職になると、職場の環境をつくっていくことが求められます。
職位があがるほどに、職場をコントロールできる領域が増えていきます。
部下に対して指示を出すということは、ある意味で、他者をコントロールする立場になると思う人がいるのかもしれません。
コントロールできる領域が自分を超えて、自分の周りの環境や他者に及ぶことになると、それ相応の責任を背負うことになります。
しかし、コントロールできる領域が増えていくと、根源的に人は幸福を感じることができるのです。
技術の進歩が生む弊害
テクノロジーの進歩とともに、私たちは周囲の環境をコントロールし、快適な生活を過ごすことができるようになりました。
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