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日本の大麻企業に求められる「法的責任」と「道徳的責任」

2023年11月、日本では「大麻グミ」と呼ばれるものが注目を集めており、社会問題の一つとしてニュースやメディアで大きく取り上げられいる。これは2012年前後に起きた脱法ハーブ問題を想起させるものであり、当時の被害が繰り返されるのではないかと危惧している人も少なくないのではと思う。

大麻という植物はどのように規制されているのか知らない方のために、ここで簡単に説明しておこう。

日本で大麻は部位に基づく規制を行っており、具体的には成熟した茎や種子を除く花穂、葉等が規制の対象となっている。大麻にはカンナビノイドやテルペンと呼ばれる精神活性作用のある成分が含まれいるが、成分による規制ではなく部位による規制とな った背景には、大麻取締法が制定された昭和23(1948)年当時、どのような成分により精神活性作用が引き起こされるのかについて判明していなかったこと、また繊維等の製品としての麻の流通等を規制の対象から除外する必要性があったことが挙げられている。1960 年代に入り、大麻草に含まれる成分としてTHCやCBD等のカンナビノイドが同定され、大麻の精神活性作用は主にTHCが原因で引き起こされることが明らかにされた。その結果、現在、THCは向精神薬取締法の対象として取り扱われている。

今回焦点となっている大麻グミは、大麻から抽出した成分を使用しているのではなく、そのTHCに似せて人工的に作られたHHCHという成分が使用されている。このHHCHという成分は、実際に大麻に含まれているTHCの何倍も作用が強いと言われており、取り扱いには注意が必要だとされているが、十分な研究やリサーチは行われていないため、実際の身体への作用、長期使用による影響などは分かっていないのが実情である。これらの原料は、アメリカやタイといった大麻が合法である地域で加工され、日本に送られてきている。

THCのような効果を得るために作られている成分には他にも色々あるが、日本では2022年3月のHHC規制を発端にそれらの成分に対して規制を進めており、今回の問題となっているHHCHも、11月22日より指定薬物に指定される事が決定している。

大麻の合法化

医療目的か嗜好目的かに関わらず、大麻を合法化するべき理由は、道徳的なものであると考えられている。また大麻を合法化する事は、人権問題へのアプローチであるとも言える。大麻を合法化する事が道徳的で、またそれが人権問題へのアプローチであるロジックは以下の通りである。

  1. 自己決定権: 個人が自分の身体や意識に関する決定を下す権利。人々は自分の健康や生活に対して自分で責任を持つべきであり、大麻の合法化はこの自己決定権を尊重するものと考えられている。

  2. 刑罰の不均衡な影響: 大麻の使用や所持に対する刑罰は、しばしば社会的、経済的に不均衡な影響を与えてきた。大麻の合法化は、不公正だとされた刑罰の影響を軽減し、社会的な公正を促進する可能性がある。

  3. 刑事司法の過剰な負担: 大麻が違法である事により、刑事司法制度において非常に大きな負担を生み出している。大麻の所持や使用に関連する訴訟は、法執行機関や刑務所などのリソースを圧迫する事があり、これにより、他の重大な犯罪に対処するためのリソースが不足する可能性がある。

  4. 医療利用の権利: ヨーロッパや北米の一部の国々では、大麻は一定の症状に対して医療効果があるとされており、合法化はこれらの症状を抱える人々に対する医療利用の権利を支持するものであると考えられている。医療目的での大麻の合法化は、患者が必要な治療を受ける事ができる権利を守るものである。

HHCHが身体に悪影響があるのかどうかという議論の答えは、現時点で出すことは難しいだろう。緊急搬送されているケースは多くあるものの、重篤な状態になったというニュースや報告は今のところ見られない。HHCHの販売や使用の是非については、日本で大麻の合法化を望む人たちの間で頻繁に話し合いが行われているが、現時点で安全性についての答えが出ていないのであれば販売は控えるべきと考える人もいれば、大麻成分に近い物質を少しでも多くの人に広げて、日本国内で大麻の認知を獲得し、大麻の合法化に繋げようと考える人もいる様だ。

大麻合法化へのアプローチには様々なものがあると考えられる。また私も、個々人が思う方法で行えば他人に咎められる様なものではないと考えている。しかし、最近の日本では、そのアプローチの良し悪しを「合法」「非合法」で判断するケースも増えて来ている様で、その事についてはいささか違和感を感じている。「合法」だったら何をしても問題ない?それは違う。

合法だから良くて、違法だからダメという判断は、今まで日本が大麻に対して行なってきた取り締まりと変わりがない。今ある法規制を守る事は当然だが、それだけではなく、道徳心に則り、モラルを守り、法改正の必要性を訴えていくべきである。

今回は今話題となっているHHCHに焦点を当て、これからの日本の大麻合法化について考えてみたが、現在の日本の大麻取締法や関連法案では、日本のCBD市場の安全性や品質、一貫性を確保する事は難しくなっている。これから品質管理に関する法律も整ってくる事が予想されるが、その法律が制定され施行されるまで、この業界に関わる人や企業がどれだけ自らを律し、安全で効果的な製品を市場に送り続ける事ができるかは、今後の日本のCBD業界の行き先を大きく左右するであろう。


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