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暗君か名君か、矛盾だらけのシャルル七世:救いがたい王

カクヨムにて『歴史家たちのポジショントーク:暗君か名君か、矛盾だらけのシャルル七世』を新規投稿しました。

あらすじ:各時代の歴史書に書かれている「フランス王シャルル七世」の評価が乱高下しすぎで面白かったので、歴史家たちのポジショントークの移り変わりをまとめました。

noteでは紹介を兼ねて、昨日と今日の更新分から一部引用します。

まずは昨日の更新分より、アンリ・マルタンの新しい『フランス史』への反論。

 ある学者の言葉を借りれば、「歴史家には崇高な特権」がある。
 特定の時代・人物について、数百年におよぶ悪意や誤解、それによって下された偏見という判決を、壮大な再審査のプロセスを経て、断ち切る能力を持つ。

 歴史家のルールに従い、マルタンの著書——いわばシャルル七世に対する起訴状を前に、「オリジナルの出典に基づく反論」を展開するのは当然の流れだ。

 まず、キャリアの浅い若手のある作家が、果敢に反論した。
 幸いなことに、反論を試みたのは一人だけではなかった。現代評論(Revue contemporaine)のエミール・シャスル、ユニオン誌のアルフレッド・ネットマンが議論に介入し、ジャーナリストの矜持をかけて歴史家の著書に堂々と戦ったのである。

 アンリ・マルタンは、自著に対する批判に答えるために順番にペンを取らなければならず、それはかなり鋭い反論を引き起こした。

 この論争の結果、どれほど無知な陪審員が見ても、「この歴史家(マルタン)は的外れで、彼の評価は偏見に満ちている」という感想で一致した。

19世紀後半:新しい『フランス史』(2)異議あり - 歴史家たちのポジショントーク:暗君か名君か、矛盾だらけのシャルル七世(しんの(C.Clarté)) - カクヨム


反論の弁は、原文を見ていただくとして。

歴史家の権威を使ったイデオロギー煽動、印象操作について問題提起されている。
著者アンリ・マルタンはどうやら復古王政とシャルル10世を嫌っていて、その煽りで、国難を乗り越えた同名の王「シャルル七世」に偏見を持っているのではないかと指摘されています。
マルタンは政治的な信念のために、歴史家としての矜持を曲げた…と。


それからさっき更新したばかりの最新話から引用。

イポリット・ダンシンは著書の中で、シャルル七世の政府がおこなったことに新たなスポットを当て、この王を厳しく批判しているが、鋭い見解をいくつか引き出している。
————————————
 この王子に少しでも魅力を感じるのは愚かなことだ。
 無関心、不信感、利己主義が、シャルル七世の性格の根底にあった。人生のどの段階でも、幸運に翻弄されたさまざまな状況でも、彼を支配し続けた。

 シャルル七世を過小評価する根拠となっている「道徳的資質」を見いだし、彼の治世が果たしたすばらしい「政治的措置」のすべてを、シャルル七世の自発的な活動と精神性に由来すると考える動きがある。

 シャルル七世の復権を、まじめに追求する人たちにとっては残念なことだが、この王子の生涯と行動に関する現代の文献は、彼の性格が「不治の病」に冒されており、救いようがないことを間違いなく示している。

 彼の人生は、嘆かわしい失敗の連続にすぎない……。

 当時の年代記を読めば、シャルル七世は30歳になるまで、誰かに必要とされることもなければ、どこかに帰属することもなかった

------(中略)------

 彼の人生を占めているのは、少年時代を荒廃させた疑惑と恐怖である。

 恐ろしい悩みにさいなまれ、彼は民衆の目を避け、愛されていた都市さえ避けた。城の奥深くに身を隠し、彼が死んだとき、国政にその名を与えてからすでに長い年月が経っていた……。

19世紀後半:イポリット・ダンシン「救いがたい王」 - 歴史家たちのポジショントーク:暗君か名君か、矛盾だらけのシャルル七世(しんの(C.Clarté)) - カクヨム


愛されることが怖い…? いかにも子供時代のトラウマっぽい。

ですが、内なるシャルル七世は、「そういう感傷的な解釈はいらない。単に偏屈なだけだw」と言ってますが、どうでしょうね😂

シャルル七世を評価するにしろ批判するにしろ、両親からの悪影響と、幼少期が悲惨だったことは共通している。人格形成に影響があったことは間違いない。


続きはカクヨムにて。

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自著の紹介

既刊:デュマ・フィスの未邦訳小説『トリスタン・ル・ルー』

2022年10月21日、シャルル七世即位600周年記念にリリースしました。
Kindle版(電子書籍)とペーパーバック版があります。

新刊:『十九世紀の異端科学者はかく語る』

ジョン・ラボック著『The Pleasures of Life』第一部を翻訳・書籍化しました。訳者・序文で「ダーウィンとラボックの師弟関係」を書き下ろし。

web小説『7番目のシャルル』シリーズ

シャルル七世が主人公の小説(少年期編青年期編)連載中。


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