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なぜ今スポーツベッティングの話をするべきなのか

こんにちは。Murasakiというブロックチェーン上にコンテンツを開発する会社をやっています村田です。

スポーツが好きで仕事でもスポーツに関わることが多かったのですが、またスポーツに関わる仕事ができそうで嬉しいです。詳しくは先日のプレスリリースをご覧ください。

さて今回はなぜ今スポーツベッティングの話をするべきなのかについて書いていきたいと思います。スポーツベッティング最大の市場、ヨーロッパよりお届けします。

1. あらすじ

日本では各省庁によって管轄される公営ギャンブルが4つ存在しています。経済産業省管轄の競輪とオートレース、農林水産省管轄の競馬、国土交通省管轄の競艇、そして文部科学省がTOTOを運営しています。

公営ギャンブル運営の目的は省庁によって違います。例えば農水省が運営する競馬は「畜産の振興、社会福祉事業の振興及び地方財政の改善」を目的としています。文科省運営のスポーツくじは「スポーツの振興」が目的です。

原則として国が運営している日本国内のギャンブルですが、昨今経済産業省を中心にスポーツベッティングの民営化に関する議論がされています。

ベルギーSporting Hasseltのスタジアム

この背景には二つの流れが存在します。一つは世界のスポーツベッティングを取り巻く潮流の変化です。具体的には海外ギャンブルサイトへの参加による資金流出を抑えて税収化していく流れが存在ます。一つは日本の部活動の民営化の流れです。

2. 世界のスポーツベッティングを取り巻く潮流

スポーツベッティングは主要国 G7 の中では日本以外の 6 カ国で解禁されています。既に解禁されている国でもフランス・ドイツ・アメリカ・カナダの 4 カ国は 2010 年以降の解禁となっており、近年スポーツベッティングの合法化が相次いでいます。

背景は以下3点となります:

  1. インターネット・オンラインセキュリティ技術の発達によるオンラインスポーツベッティングの拡大(市場規模の拡大)

  2. オンラインスポーツベッティングの拡大に伴う国内のみでの規制難化

  3. 金融リテラシーの成熟

出典:UFJリサーチ)

国内から海外のオンラインギャンブルに参加することは厳密に言うと違法となりますが、実質取り締まりが難しく、また国内でも税収にならない為資金流出となります。資金流出になり、取り締まりが難しいのであれば健全なレギュレーションを整備して合法化し、きちんと税収を納めてもらいましょう、という発想でG7各国が合法化に踏み切っています。

合法化の状況

各種統計

そしてきちんと統計が取れ始めたことで市場規模が成長していることが明らかになります。以下はGrand View Researchの統計の簡単なサマリです。

2022年の世界のスポーツベッティング市場規模:約83.65 billion USD(約12.3兆円)
2023年から2030年までの年間複合成長率予想(CAGR):10.3%

Grand View Researchより

ヨーロッパが市場シェアでは最大の35%となっていますが、これからアジア太平洋地域は11%以上のCAGRで成長するという予測がたてられています。

また、セグメント別ではサッカーが一位で24%のシェアを占めています。ちなみに2位は競馬となっています。

このように、先進国を中心に急速にスポーツベッティングの民営化が進んでおり、また市場規模も拡大していることから各国で民営化しつつ税収を増やすアクションをとっています。

米国の状況と税収

アメリカを例に見てみると、2021年は既に$11.5bnという規模のマーケットですが、年率10.4%で成長し2030年には約2倍のマーケット規模になると予想されてます。2023年1月時点で、米国の36の州でスポーツベッティングが合法化されています。

米国ベッティング市場は軒並み成長しており、スポーツベッティング大手のFlutter Entertainmentは上半期の収益が42%増加しています。同社が運営するファンタジースポーツFanDuelのEBITDAは1億ドルを超えています。また同様にファンタジースポーツを運営するDraftKingsの売上高は7億7000万ドル、直近四半期YoYで84%成長しています。

税収でいうと、少し古い資料ですが米国は各州合法化後の2018年5月からの2年間で約247億円の税収増となりました。(出典:mixiより)

mixiの資料より抜粋

3. 部活動民営化の流れ

もう一つここ数年で顕在化してきた流れとして、部活動の地域移行の話が浮上しています。

ベッティングは様々な種類があり、当然スポーツベッティング以外にも様々なギャンブルが存在します。その中でも日本でスポーツベッティングの民営化が他のギャンブルに先駆けて検討されている背景としては部活動の民営化という背景が存在します。

読売新聞の記事にもありますが、スポーツ庁を中心に休日の部活動指導を民間団体に委任する案が出ています。

日本におけるスポーツというのは体育、つまり教育の一環として学校教員による「指導」が行われてきました。

体育は体育でたのしいの図

近年日本のスポーツは躍進を続けており、またその社会的効用についても注目され国民が健康で文化的な生活を営む為にスポーツ庁が設立されるに至りました。

当然、部活動が民営化されたらコーチ業や周辺領域で雇用が生まれます。伝統的な体育、教育の一環としてのスポーツから、近代的なスポーツ産業への変化を遂げる動きが存在します。

また教員が時間外に指導するスタイルは昨今の働き方改革の実現を妨げるものでもあり不健全です。スポーツ産業が発展している国では有資格者であるコーチが指導するスタイルが一般化しています。

スポーツ産業を健全に発展させ、教員の働き方改革を実現するには部活動を段階的に民営化していく流れは必然のように感じられますが、実現にするには財源が必要です。

今までは学費の一部、もしくは部費という形で学生の家庭が捻出していましたが、企業や個人に対して補助金が発生しないと受益者負担が大きくなってしまいます。スポーツを発展させるつもりが、経済的に余裕のある家庭のみクラブ活動に参加できるという形になってしまうのはよくありません。

なので新たな税収の財源としてスポーツベッティングが注目されている、という背景が存在しています。
(参考:読売新聞

原文より引用:
休日の部活動における生徒の指導や大会の引率については、学校の職務として教師が担うのではなく地域の活動として地域人材が担うこととし、地域部活動を推進するための実践研究を実施する。その成果を基に、令和5年度以降、休日の部活動の段階的な地域移行を図るとともに、休日の部活動の指導を望まない教師が休日の部活動に従事しないこととする。

出典:文部科学省)

経産省の公式資料にも受益者負担を軽減する文脈でスポーツベッティング民営化の記載。スポーツエコシステム推進協議会を中心に合法化に向けた議論が成されている。

経産省資料:地域✖︎スポーツクラブ産業研究会の資料より抜粋

4. 日本のスポーツベッティング市場規模

世界の市場規模が大きく、更に成長しているということと日本国内で部活動民営化という特殊事情によってスポーツベッティング民営化の機運が高まっていることを解説しました。

ここからは我々民間企業としてマーケットをどう見れば良いのか解説していきます。

サイバーエージェント調査では日本国内の潜在的な市場規模は7兆円と予想しています。出典
参考までにパチンコ・スロット市場は14.6兆円、公営ギャンブル市場(公営4種・くじ2種)は8.3兆円です。

一概にスポーツベッティングと言ってもその種類は多岐に渡ります。

UFJリサーチの資料より抜粋

出典:UFJリサーチ)

日本で合法的に運営されているのは公営ギャンブル4種とスポーツくじ2種のみですが、実態としては日本国内から海外のスポーツベッティングサイトを遊べてしまう状態になっています。


前述した通り日本のスポーツベッティング市場のポテンシャルは公営ギャンブルを含まず推定7兆円あるとされています。既に日本のスポーツコンテンツは海外のオンラインスポーツベッティングで賭けることが可能になっており、推定流出規模は5-6兆円とも言われています。
(出典:スポーツDXレポート by 経産省・スポーツ庁)

色々書きましたがサマリとしては、潜在的な市場規模は大きいものの日本のスポーツ業界が作ったコンテンツ収益が海外の違法事業者に流出してしまっている現状が存在します。

5. 国内各社の打ち手

上記のチャンスに対して国内大手各社が様々な打ち手を打っています。スポーツというより公営ギャンブル周辺領域が多いですが、既に公営ギャンブル事業に参入している各社は将来スポーツベッティングが解禁された際も主要なプレイヤーとして君臨しそうという意味で掲載しています。

マイネット - ファンタジースポーツ

まずはマイネットのファンタジースポーツです。

ファンタジースポーツとは、参加者が実在するプロのスポーツ選手を選択して仮想のチームを編成し、その選手の実際のパフォーマンスに基づいてポイントを獲得するオンラインゲームです。参加者は一定の期間(1日、1週間、1シーズンなど)の間に最もポイントを獲得した者が勝者となる方式で競います。

マイネットは既に日本市場においてファンタジースポーツ「B.LEAGUE#LIVE2022」「プロ野球#LIVE2022」を提供しています。

同社は「B.LEAGUE#LIVE2023」のリリースを予定しております。これらのサービスはプロスポーツリーグ公認のファンタジースポーツサービスです。海外で一般的な「参加費分配型」ではなく、「スポンサー賞金提供型」となっており、公営ギャンブルではない領域では国内で初の具体的な打ち手と言えると思います。

今後開発ラインを増やし他競技へ展開していくと発表されています。

https://www.mynet.co.jp/ir/library#ataglance

弊社もこの領域にてweb3 x ファンタジースポーツの領域にて業務提携させていただいております。以下のプレスリリースをご参照ください。

海外で2019年からNFTファンタジースポーツを展開するSorareの年間売上はEUR 240m(約380億円)と言われています。主に選手NFTカードのオークションで売上が上がっているのですが、日によっては売上は300 ETHを超えています。

Sorareのオークションボリューム(Sorare Dataより)

また、インドでクリケットを中心にファンタジースポーツ事業を行うDream11の年間売上も$480m(約700億円)、YoYで50.4%成長しています。

Dream11の決算情報(出典:ENTRACKER)

ちなみに海外で行われている参加費分配型ファンタジースポーツはこのような商流になっています。

参加費分配型ファンタジースポーツ

一方で日本で行われているスポンサー賞金提供型のファンタジースポーツの商流は以下の通りです。

スポンサー賞金提供型ファンタジースポーツ

米国で参加費分配型のファンタジースポーツ事業を展開するFanDuelや・DraftKings社の売上規模は1500億円を超えています。

MIXI

FC東京や千葉ジェッツというビッグクラブへの参画をはじめ、TIPSTARやチャリロトを通じ公営競技などにも参画、また英国風パブであるhubへの資本参画を行っています。
mixi社はスポーツクラブと公営ギャンブルを「スポーツ事業」という一つの括りとして捉えており、直近四半期の売上高は75億円となっています。YoYで18.8%成長していますが、

mixi社IRページより
https://c-hotline.net/Viewer/Default/382320a9ac05983e75bf54140548feedaec8

NewsPicksのインタビューに木村社長が「お酒を飲む場で大人がちょっとギャンブルを楽しむカルチャーを醸成していくと、より面白くなっていきます。」とコメントしております。
https://newspicks.com/news/5876643/body/

欧州のパブには簡易的なベッティングマシーンが置いてあったり、スポーツクジを買えるようになっています。仲間とお酒を飲みにきて、気軽に自分の応援するチームに賭けられるようになると盛り上がりそうですね。


サイバーエージェント

子会社のWinTicketにて競輪・オートレースに投票できるサービスを運営しています。ライブを視聴することもでき、ABEMAでも関連コンテンツを積極的に配信しています。

WinTicketの四半期取扱高は約1000億円に達します。凄いボリュームですね。(同社のIR情報より)
https://www.cyberagent.co.jp/ir/library/ataglance/
https://www.winticket.jp/


ソフトバンク(オッズパーク)

公営競技のポータルサイトであるオッズパークを運営しています。競馬・競輪・オートレース・LOTOに賭けることができます。AI予想という初心者でも簡単に賭けられるサービスも提供しています。
https://www.oddspark.com/


楽天

様々なスポーツクラブへの参画とKドリームスという競輪のサービスと楽天競馬という地方競馬のサービスを提供しています。楽天もOTTプラットフォームを有するので、ライブベッティングなど様々な可能性を模索できる可能性がありますね。
https://keirin.kdreams.jp/
https://keiba.rakuten.co.jp/

ここに書けない話も色々とありますが、上述した企業以外にも様々なスタートアップや外資系企業も参入しようとアクションしています。もちろん依存症などの負の側面に配慮する必要はありますが、今後この市場が盛り上がってくると確信しています。


6. なぜ今スポーツベッティングの話をするべきなのか

今回はスポーツベッティングの民営化について社会的・制度的文脈を踏まえてどうして今スポーツベッティングの話題を取り上げるべきか、ということを書いてきました。

スポーツベッティングの民営化に向けて民間企業の動きも活発になってきている為、これから当該分野が前向きに民営化されることを見越して参入するスタートアップも増えてきています。

弊社はマイネットさんと協力してブロックチェーン技術 X スポンサー賞金型ファンタジースポーツという切り口で参入します。本編で取り上げていないですが、スタートアップによるユニークな取り組みも複数存在します。

ただ、すぐに結果が出る訳ではないので民営化されるまでの運営手段とアプローチを考える必要があります。前述したSorareも運営開始からグロースフェーズまで2年ほどかかっています。

Sorareのカード保有枚数別ユーザー数(Sorare Dataより)

当該領域へのアプローチを考え、事業として一定のインパクトを持ちながらスポーツ産業に貢献できるにはどうすれば良いか考えるには絶好のタイミングではないでしょうか。

今回はこの辺で。もし気になった方はお気軽にDMください!

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