見出し画像

創業から1年でブロックチェーンゲームタイトルをリリースしてわかったこと

こんにちは、相当間が空いてしまいました。
前回のnoteが2021年なので丸2年こちらで発信をしていないことになりますね。ずっとサッカーについての発信をしていたのですが、今回は創業に至った経緯とMurasakiの初タイトルCyberstellaを実際にリリースしてみて得られたインサイトについて話したいと思います。

コミュニティ向けというよりどちらかというと同業のファウンダー向けです。今考えると本当に創業時は無知だったし、少しでもこれから創業する、業界に参入する方の参考になればと存じます。新しい市場なので他の業界の方も読んで参考になる部分があれば幸いです。

久しぶりのnoteなのでお手柔らかにお願いします。

はじまり

2021年9月に勤めていたサッカークラブを退職し、とある案件が落ち着いて日本に一時帰国することになりました。詳細は話せない部分があるのですが、自分の無力感を感じていて新しい挑戦に飢えていました。

11月頃にメッセンジャーでふと近況キャッチアップしようと佐々木に連絡を取りました。佐々木はその後共同創業者になるのですが、この時は単にたまに連絡を取り合う親しい間柄でした。お互いにタイミングが良いということで、共同創業に向けてのディスカッションがはじまりました。

ここは別の機会にもう少し詳しく書きたいと思います。

事業に関するディスカッション

12月に入りお互いの前提条件の整理を開始し、いくつかの事業案が整理されました。方向性としては私が海外にいることで優位性のあることをやるのが良いのではないかということでクリプト系の事業が浮上してきました。クリプト系の事業は日本の税制の問題から海外に出て起業する流れがあったので、それなら既にオランダに設立してある私の法人をスタートアップにしましょう、というところまで仮説の状態を作りました。

ここで紆余曲折ありブロックチェーンゲームのスタジオをやることになりました。ファントークンの発行はじめ私に一定のクリプト関連事業経験があったことと、佐々木のプロダクト開発・運営能力を生かしましょうという形になりました。

最初の資金調達のくだりはまた別途話したいと思います。ここからは最初のブロックチェーンゲームタイトル「Cyberstella」をローンチして得られたインサイトを書いていきたいと思います。

ブロックチェーンゲーム自体の課題やヒットするタイトルの仮説などはコインムスメを運営する辻さんのnoteが参考になるので、こちらを参照ください。(コインムスメもぜひチェックしてみてください!)

コミュニティ作りでの差別化

私はサッカークラブ、佐々木はゲームやVTuberプラットフォームを運営していた経験があり、コミュニティ運営には注力したいという思いが強くありました。

一般的にはWeb3やクリプトのコミュニティ作りで最初にやることと言えば先行者メリットを提示して人を集めるところです。もっと具体的に言うと、ソーシャルメディアで影響力のあるインフルエンサーにゲームのアセット(AL / WLやNFT・FTなど)を渡して配ってもらうという行為です。

最初は人が集まるのか不安で数回海外のインフルエンサーと協業しましたが、きちんとコミュニティに熱狂が生まれていない中でのそういった活動は無意味でした。それどころか、報酬を支払ったのにアカウントを消して逃亡されてしまうケースなどがありました。とても反省しています。

Web2ゲームでもプレ登録などありますし、スポーツでもearly birdチケットは安い傾向にあるので一定この方法は良いと思いますが、端的に言うとモノをあげて人を集めるだけだとマーケティングとは呼べないと思います。

自分がスポーツクラブを運営していると想定して、お金をあげるから試合観戦に来てください!というキャンペーンをしても本当のファンは生まれません。よりたくさんお金がもらえるクラブが出てきたらそちらに流れるだけです。

最初はフライホイール理論に則り、インセンティブのみで集まる1万人より応援してくれる100人を集めることに注力しました。

NFTですらない画像を配って名前と設定を考えるイベントなどをやり、Discordにいたメンバーで盛り上がったりしていました。ノーインセンティブで、1時間くらいかかる作業ですが純粋に楽しんでもらいました。

名付けイベントは当時Discordにいた700人のうち400人が参加するイベントに

その後も週次ベースでイベントを行い、徐々に内部から総数としては少ないものの「質の良い熱狂」を生み出すことに成功しました。

毎週Cyberstellaのコミュニティメンバーにインタビューを行っているのですが、参画を決めた理由によく「古参メンバーが過度に煽ってこない」「空虚なhypeがない」ことが挙げられます。社内でもクリプト事業経験があるメンバーがいたので、「Shinはなぜクリプトマーケティングをしないのか」と責められたりもしましたが、現在の状況を見るとこのアプローチで良かったと思っています。

ここで気づいたのですが、クリプトビジネスはコミュニティが大事だと言いながら国内外見てもきちんとコミュニティ作りをやっているところは少ないと思います。

日本はファンコミュニティ文化が発達しているので、ここは日本人創業チームに一日の長がある分野だと思います。Cyberstellaもゲームよりイベントが楽しくて参加されている方も一定いらっしゃるようで嬉しい限りです。

また、海外からも積極的にメンバーを取り込んでいきました。こちらのツイートをご参照ください。

毎月多い時で10件程度、多言語でAMAをやっています。私は日本語と英語のみ話せるのでフランス語やトルコ語、韓国語や中国語は通訳をつけたりしています。

とにかく参加メンバーは少なくても運営との距離感を大事にしました。近ければ良いという話ではなく、頻度とポリシーを伝える機会をなるべく多く作る工夫をしました。今では100人前後参加してくれるAMAですが、最初は2-3人でした。今も継続しており、今後はストリーミングなども始めようと思います。

ちょっと話題が分散しましたが、まとめると以下2つを実行すると差別化要因になると思いました。
1. 日本のファンコミュニティ運営の知見を生かす
2. ファウンダーが陣頭指揮を取って積極的に地域軸を広げる

リスティング周り

基本的にファンジブルトークンを発行するようなプロダクトを開発する場合、この辺りのBDはかなり重要になってきます。概念としては魔法石と株が一体になっているようなものを出すので、価値が可視化される分明確にここで差が出ます。初タイトルのCyberstellaはゲーム内通貨を上場させるタイトルなので、ここをスクラッチからやりました。

着手にあたり、2022年12月頃からチームを組成しました。トルコのMuhabbit Capital創業メンバーで個人的な友人であるEfeと、弊社リスティングマネージャー(トルコ在住、複数PJTのリスティング経験あり)と私の3名のスモールチームを組成します。

Efeは複数のプロジェクトでアドバイザーを務めています

トークンを設計してから発行・上場するまでのプロセスは大きく分けて3つあります。
1. エコノミクス設計
2. マーケットメーカー選定
3. 取引所選定(交渉)

エコノミクスの設計については様々な日本語リソースが入手可能なのと、プロダクトによって正解が異なるのでここでは割愛します。2と3に関するインサイトについて書いていければと存じます。

事業内容に合ったマーケットメーカーの選定

マーケットメーカーとは、自社発行トークンの流動性をDEXやCEXに提供してくれるトレーダーのことです。(以下「MM」と略します)

MMなしでは売買のボリュームが作れず、売ったり買ったりする時に買えない、もしくは高いスリッページを要求されたりします。
様々なMMとざっと20社くらいディスカッションしたのですが、MMには2つのタイプが存在します。

  1. ローン型:自社発行トークンを提供しMMが取引ペアを作る($USDT - $STLなど)MMはトレーディングで稼ぐ

  2. 月額型:こちらがペアを提供し月額を支払う -> MMは(基本的に)月額で稼ぐ

細かく分けるともっと色々あるのですが、基本的にはこの2タイプに分類されます。

MMによってかなりボリュームやトレーディングのポリシーが違うので、どういうタイプのMMを選定するかはかなり慎重に行う必要があります。
契約の際は過去にMMが担当したプロジェクトを全て調べた方が良いと思います。契約したらあとはアルゴリズム任せで全くコミュニケーション取らない、というMMも存在します。

例えば、事業のフェーズに合わせて流動性やボリュームについて相談したい、アルゴリズムを確認したいなどのニーズがあるので、上記の選択肢からどちらが良いというより事業の内容・フェーズ・また取引所の特性を理解し選定する必要があります。

個人的にはコミュニケーションがまめで、プロジェクトのマイルストーンに合わせて提案を考えてくれるところがお勧めです。ちなみに我々のプロジェクトはゲームということもありトレーダーがそこまでいないので、月額型にしました。

また、DEXは価格が下がりやすいので敬遠するMMも多いです。我々は最初DexalotでのDEX上場だったのですが、サポートしているMMは少なくパートナー探しに苦労しました。

取引所選定(交渉)


Dexalotでの初期上場は個人的にもかなり良かったのですが、これだけで5000字くらい書けるのでまた別の機会に。(DexalotのストリーミングIN THE CLOBにて「バイブス村の村長」と評された瞬間)

私が交渉を始めた頃は冬というか極寒の時代でどこの取引所も新規上場にかなり高いハードルを課していました。

取引所との交渉はプロジェクトがストーリーを持っているかどうか、またプロダクトによってアピールするポイントが違います。
- 特定の地域に強い
- web3新規ユーザーがたくさんいる
- 取引所ウォレット作成を促進するようなUXになっている

などなど。取引所も商売なので、何かしら上場承認をする材料が必要です。
我々は当初ここのストーリーが弱く少し苦労しました。

取引所の課す条件は基本的に以下の通りです(例外も存在します):
- Listing Fee:上場の為の手数料(大体USDTベース)
- マーケティングトークン:取引所トークンのホルダーに配る自社発行トークン・もしくはUSDTなど(取引所による)
- デポジット:MMアカウントに入れる最低金額

Listing Feeは取引所によって異なりますが、これ実際には相場はあってないようなものです。Cyberstellaは最初のCEX上場をMEXCで行いましたが、その他の取引所は審査をパスしていてもListing Feeが高くて合意に至らなかったケースが複数存在します。

マーケティングトークンは例えばMEXCのネイティブトークンである$MXホルダーに$5以下で配られます。最低取引額が$5なので、売る為には少し買わないといけません。初動で盛り上がってその後下降するのはこの為です。

現実的にはこのマーケティングトークンは売り圧になります。例えばマーケティングトークンを$50k配る場合、$50kはそのまま売り圧として計算した方が良いと思います。マーケティングとは聞こえが良いので注意が必要です。ここも交渉して下げれるなら下げた方が良いです。

繰り返しになりますが、マーケティングトークンをもらってゲームを始める人は皆無です。

Public Sale・トークンによる資金調達について

同じ理由でCyberstellaではPublic Saleもやっていません。Launchpadにもよりますが、Tier 1以外のLaunchpadで行われるPublic Saleでトークンを買う人は99%ゲームプレイしません。SeedifyやGamefi.orgのような優良Launchpadでローンチしないのであればほぼ全て売り圧になると思って間違いないでしょう。ちなみに現在Tier 1のLaunchpadはゲームのデモが無いと受付てくれません。

通常ゲームプロジェクトが株式で資金調達していない場合、FTかNFTを発行して資金調達します。そこで調達した資金でゲーム開発を始めるのですが、プロジェクトによってはここでたくさん資金を集める為にグラフィックが豪華なティザーを作ります。

詳しくはこちらのツイートに記述しています。

ブロックチェーンゲームプロジェクトが開発開始するまではおおよそ以下のような流れです。
1. ホワイトペーパー公開
2. ティザー動画公開
3. NFTやFTを発行・販売してプレイヤーや投資家から資金調達
4. 開発開始

余談ですが、原神インパクトのようなかっこいいティザー動画は100万円程度で作れるのですが、実際に開発すると2年半かかり費用は100億円・運営に毎年200億円かかるのでその差分をトークン販売で埋めようとします。当然その差分を埋めることはできないのでゲームがリリースされないか大幅にダウングレードされます。
この件についてCointelegraph本家でコラムを書きましたので興味のある方は読んでみてください。

https://cointelegraph.com/news/90-of-gamefi-projects-are-ruining-the-industry-s-reputation

Cyberstella運営のMurasakiは既に株式で資金調達が済んでいること、過度に期待を煽るようなティザー動画を公開せず「カジュアルに遊べるゲームですよ」と期待値調整していることからPublic Saleは行わないこととしました。

仮に$500kをPublic Saleで資金調達しても、それはそのまま売り圧になります。実際にLaunchpadからオファーもありましたがパスしました。Dexalotに上場した際、売り圧は純粋にゲーム内から発生するもののみです。売り圧がオーガニックにどの程度発生するか確かめる意味でDEX上場したという意味合いもあります。

資金に余力があるプロジェクトでもトークンの知名度を上げる為にPublic Saleを行う例がありますが、我々は小さな売り圧でも排除することを徹底しました。業界で慣習的に行われているからといって必ずしもトークンで資金調達する必要はないと考えています。

全くやる必要がないというよりは事業の特性やコミュニティのサイズ、特性などを勘案して判断するのが良いと思います。0か100かというより、バランスを取ってやるのも良いですし、もちろん弊社同様やらないという選択肢もあります。

Cyberstellaのこれから

この記事を書いているタイミングでちょうどMission機能がリリースされました。機能としてはシンプルで、ネイティブトークンの$STLを使ってプレイし報酬をゲットするというものです。

今後ソーシャルログインやクレカ決済が導入され、6月にはゲームを始めるのにウォレットが不要というところまで発展させようと思います。ブロックチェーンであることを意識させない設計にし、アセットを取引したいプレイヤーはウォレットを作る、という順番になります。

この辺りも多分に実験的な試みですが、また結果についてはインサイトとして別の機会にまとめられればと存じます。

今回はこの辺で!Cyberstellaをよろしくお願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?