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言語の嗜好

ひよこが初めて見たものを親と思い込むように、まだ訪れたことのない国の言語を学ぶ時、指導してくれる外国人教師の印象が、その国の人へのステレオタイプになってしまいがちです。

中国語を勉強し始めた大学生の頃。

学校には複数の中国人教師がいましたが、中国大陸出身の女性の先生は厳しく、男性の先生は優しく穏やか、が最初に持った印象です。

もちろん様々なタイプの先生が存在するわけで、一概に出身国や性別で性格の傾向を決めつける事が出来ないのは十分承知しています。でも、最初に抱いた印象というのも、そういう一面が感じとれたという点においては、確かであるわけです。

中国大陸の女性の先生は、はっきりしたもの言いのさばさばしたイメージ、対して男性教師はのんびり穏やかなイメージ。そしてもう一つ、台湾出身の女性の先生もいつもニコニコとした柔和なイメージでした。

そんな先入観を持った当時の私の好きな中国語の話し方は、台湾に代表されるような南方の話し方でした。中国大陸の中でも北の方の話し方は「そり舌音」、「儿化音」等と呼ばれる発音が難しく、聞き取るのも一苦労でした。南の発音の方が聞き取りやすさや話しやすさという点で、私にとっては優っていたように思います。

それに加え、私が勉強し始めたおよそ20年前当時は、インターネットは普及していたものの携帯はガラケー。中国の動画等を見るのは今ほど容易くはありませんでした。特に大陸のものは情報が少なく、台湾のものの方が比較的手に入れやすかったと思います。

ネットを通じて台湾発信のドラマや映画、音楽の情報に触れ、それらの影響を多大に受けた私は、ますます発音が南方よりになっていきます。

「あなたの発音は台湾人ぽいね」と言われることが、当時の私にとっては誉め言葉でした。

しかし、それが打って変わって現在。

今は専ら中国大陸の北の発音の響きが好きになりました。台湾人の女の子が、語尾伸びの強い、甘えたような響きを伴う可愛い感じの喋り方だとすれば、大陸の東北人の女の子の話し方は、少しぶっきらぼうというか、素っ気ない話し方に聞こえます。いつからか、それが魅力的だなと感じるようになりました。

台湾っ子よりは上海っ子、上海っ子よりは北京っ子、北京っ子よりは東北っ子、と言うようにどんどん好みが北寄りになっていきました。

2017年に放映された『中餐厅』に出演していた周冬雨(河北省石家荘市出身)、性格に加えてその喋り方がまた好きで、彼女のことがより好きになった気がします。

「咋整?」(怎么办?どうしよう?の東北地方の方言)とか無駄に言ってみたくなります。

気がつけば、20年の間に言語の好みって変わるものなのだなとしみじみしてしまいます。

歳を重ねるにつれて食べ物の好みが変わるように、洋服の好みが変わるように、好きな男性のタイプが変わるように、言語の好みだって変わるわけです。

あなたにも特別な分野における、好きの変遷がありますか?



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