目指せ出版! 日本史のセンセイと行く全国制覇の旅14 大仏さまの秘密

 前回に引き続き東大寺についてみていきたいと思います。シカを見て、南大門を見て、灯籠を見てついに大仏殿(金堂ともいう)です。この大仏殿、源平合戦の後にも戦国時代に一度焼失しているので、私たちがいま見ているのは3代目ということになります。江戸時代になって再建した時、元々の大きさと同じにするには、それだけの木材がなかったそうで、天平時代・鎌倉時代に造られた大仏殿は現在のものよりも大きかったと考えられています。それでも現存する木造建築物では世界最大の大きさを誇っているというのだから、大仏や大仏殿にかける人々の思いが伝わってくるようです。その大きさに感動すると言えば、もちろん大仏さまの大きさ(像高およそ14m)にも感動する。だけれど「14mだよ」と言われてもピンとこない人も多いよね。言葉だけじゃなくてイメージするには、大仏さまの左後方の柱に開いている穴に注目。この穴は大人には無理だけれど、子どもなら通り抜けられるほどの大きさ。これは大仏の鼻の穴と同じ大きさなのだそうで、実際に行ってみてぜひ試してみてください(無理しないでね)。大仏の正式名称は廬舎那仏(るしゃなぶつ)。天平時代から残っている部分は、廬舎那仏が座っている蓮弁(れんべん)(蓮の花びら)で、ここには仏を描いた線刻画が残っています。

 大仏さまは大きくて圧倒されてしまうからあまり考えないことだけれど、大仏さまにも当然背中がある。で、実はこの背中には大仏さまの内部に入ることができる「秘密の(?)」入口があるんですって。大仏さまの内部は木組みがあって、それを登っていくと後頭部から外に出ることができる。何のために? 毎年8月7日には「お身拭い」といって大仏さまをきれいにする行事があるんだけれど、お坊さんたちが身を清めた後に大仏さまの上に乗ってすす払いをします。お坊さんしかはいれないのかぁ、ぜひ大仏さまの内部に入りたい! という人には鎌倉(神奈川県)がオススメ。鎌倉の大仏(これも鎌倉時代に造られました)は20円を払えば背中から入って「胎内(たいない)拝観(はいかん)」することができるんです。中はせまくて何もないからワクワクドキドキしながら入ってもガッカリしちゃうかもしれないけれど、話のタネに入ってみてはいかがですか?

 大仏殿から北西の方向に向かうと「シルクロードの終着駅」正倉院がある。横幅33m。高床の高さ2.5mと想像以上に大きな建物だ。ここは平日のみ近くで見学できるところなので、ぜひタイミングを合わせて見に行ってほしいのだけれど、聖武天皇の遺品など多くの宝物は1年に1回、奈良国立博物館で「正倉院展」として見学をすることができる。イメージとしては「西アジア(ラクダの絵が描かれている琵琶(びわ)が有名だよね)や唐の国から輸入した珍しいものが多く収蔵されている」のだけれど、実際にはアジア風の国産の品物が90%以上を占めるということです。ぼくが見た中で一番感動したのは奈良時代に日本で造られたとされる儀式用の針。糸を通す孔(あな)がしっかりと開けられていて、1300年も前の針がこんなにも精密に造られているということに言葉が出ませんでした。11月の正倉院展は、平日に行って数々の宝物と釘を一本も使わずに造った校倉造の建物とをぜひ見学してください。

 さて「東大寺を見学した後には他の寺社も回って、効率よく奈良旅行を楽しみたい」という人は大仏殿と大仏を見ると満足してしまうことがよくある。でも東大寺にはそれはそれは素敵な仏像もあるのです。高校日本史の資料集には必ず出てくる仏像もしっかりと見ておきましょう。

 オススメは2か所の仏像。まずは天平時代から残る建物の一つ、法華堂(ほっけどう)には不空羂索(ふくうけんじゃく)観音像(かんのんぞう)が安置されています。造形を造った上に麻布を漆で貼っていく脱乾漆像(だつかんしつぞう)(中は空洞)で、像高は362cm。人々を救うために羂索(網と糸)を持っている仏さまです。これよりはだいぶ小さくなるけれど、戒壇堂(かいだんどう)にある四天王像も見ごたえ十分。四天王像は塑像(そぞう)といって、粘土のようなもので造られた仏像。非常にリアルで、いつまででも見ていられる、そんな仏像です。

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