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【仕事術】オンラインゲームによって変化した「感動の作り方」について

インターネットやスマートデバイスの普及によって、誰もが手軽に遊べるようになったオンラインゲーム。
今では、初めて遊んだゲームがオンラインゲームというお子さんもいらっしゃるでしょう。

かつて、ゲーム市場はパッケージ販売が中心でした。
それが、オンラインゲームの登場・普及によって「ゲームの仕組み」に大きな変化が起こります。主だった変化は次の通りです。

オンラインゲームがもたらしたゲームの仕組み

・他のプレイヤーとゲーム進行を共有できる
・ゲーム上で他のプレイヤーとコミュニケーションが取れる
フリーミアム(基本無料で遊べ、アイテム課金で売り上げを立てる)
・クリアはあるがエンディングはない
・開発したゲームをリリースした後に「運営」がある
・プレイデータを収集し、KPIに基づいてサービスの向上を図る

これら、パッケージ販売のゲームにはなかった仕組みによって、ゲームの作り方(開発に必要な知識やスキル)も様変わりしました。
その変化に戸惑い、迷走し、ついていけなくなったゲームクリエイターもいます。

ぼくも、馴染むまでには時間がかかりました。

今になって思うのは、先に挙げた「仕組み」を1つ1つ学ぶよりも、「ある1つの変化」に気がつくことの方が重要だったということです。
それが、今回取り上げる「感動の作り方」です。

「感動の作り方」はどう変わったのか

1つのゲームをパッケージにして販売していた頃のゲームは、価格が高価だったこともあって「値段に見合った満足度」を顧客に提供する必要がありました。
重視されていたのは、次の2つです。

・このゲームでしか味わえない喜びや感動を、どれだけ提供できるか(価値)
・値段に見合うくらい、長く遊べるか(コスパ)

特に1点目について、ゲームクリエイターは心血を注ぎました。
時には最新技術を駆使し、時には途轍もない物量を用意し、時には有名クリエイターやアーティストに参加いただいて。

つまり、作り手が顧客に大きな満足をもたらそうとしていたわけです。

その満足度をもたらすのがゲームのゴール、いわゆるエンディングです。
そして、エンディングが最高潮になるような道筋を作ります。
長く遊べ、かつ飽きないように配慮しながら。

しかし、オンラインゲームになると、ゴールとなるエンディングがなくなります。
ここがパッケージ販売のゲームクリエイターにとって最も勝手が異なるところ。
馴染みにくいことから、この部分を「オンラインゲームを好きになれない理由」に挙げる人もいます。

ここで、注意しなければいけないのは、エンディングが無くなっても、感動を得られなくなった訳ではない、という点です。

変わったのは「感動をもたらす人」。

顧客に感動をもたらす人が「作り手」から「他のプレイヤー」に変わったのです。

遊び方がコンピューターゲームがない頃に戻った

子供の頃、友達と一緒に楽しんだ、ゲーム以外の遊びを思い出してみましょう。

鬼ごっこ、かくれんぼ、だるまさんが転んだ、ドロケ(ケードロ)、馬跳び...。

これらの遊びをする時、楽しさの決め手となるのは「誰と遊ぶか」でした。
「どの遊びにするか」という選択も大事ですが、どの遊びを選ぼうと、仲の良い友達、自分と同じように楽しめる友達と一緒に遊べるか否かで、楽しさが変わります。

その遊び方が、オンラインゲームで復活したのです。

だから、ゲームを楽しませたり、感動を与えてくれる人は、ゲームを一緒に遊ぶ他のユーザーになった、というわけです。

では、作り手の役割は?

「感動をもたらす人」から「感動をもたらす場を提供する人」に変わりました。
結果、作り手には次のことが重視されます。

・見知らぬユーザー同士が友達のように親しくなれること
・他のユーザーと楽しさや感動を共有できること
・自分のためだけではなく、同じゲームを楽しむ仲間のためになる要素があること

これらを踏まえて、次の仕組みを作り上げていくことになります。

・他のプレイヤーとゲーム進行を共有できる
・ゲーム上で他のプレイヤーとコミュニケーションが取れる
フリーミアム(基本無料で遊べ、アイテム課金で売り上げを立てる)
・クリアはあるがエンディングはない
・開発したゲームをリリースした後に「運営」がある
・プレイデータを収集し、KPIに基づいてサービスの向上を図る

ただし、書かれている内容を用意するだけでは、魅力に欠けてしまいます。
生きたシステムにするには、次のポイントを意識することが大切です。

・ゲームの楽しさや感動をもたらすのは、同じゲームをする仲間になったこと
・作り手は、彼らが楽しめるような仕組み作りに力を注ぐこと

このことに気がつくまでに随分時間がかかりましたが、気がついてからは必要以上に思い悩むことはなくなりました。

とはいえ、優れたゲームを作る絶対的なセオリーはありません。
結局、テクニックや情熱、その他自分が持ってるものをありったけ注ぎ込むところは、昔も今も変わらないのでした。

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