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BUMPと共に、歩いて行こう。

BUMP OF CHICKENを知っている人は多くても、「天体観測」以外の曲を知っている人はあまり多くないかもしれない。
今日は、そんな不遇のバンドBUMPの新曲について話そうと思う。

「アカシア」

2020年11月、「Gravity」とのカップリングでシングルリリースされた曲である。

きらきらした光を思わせる冒頭から、歌うようなギターが鳴り、藤原基央の優しく明るい声が言葉を紡ぎ出す。足音のように鳴り響くバスドラムが心強い。

私がこの曲の歌詞で一番驚いたのは、

君の一歩は僕より遠い 間違いなく君の凄いところ
足跡は僕の方が多い 間違いなく僕の凄いところ

という部分である。
藤原基央の書く歌詞では、たいてい「君」がとても素晴らしく尊いもので、「僕」はちっぽけで取るに足らない、と描かれることが多いように感じていた。

たとえば「新世界」の「頭良くないけれど天才なのかもしれないよ」だとか、「才悩人応援歌」の「声援なんて皆無です 脚光なんて尚更です 期待されるような命じゃない」だとか。

そんなふうに自分を否定的に描いてきた藤原が、この曲では「僕の凄いところ」を臆面もなく誇っている。これは大きな変化ではないだろうか。

彼の変化が何によるものなのか、私は知らない。私生活が変わったのかもしれないし、ほかに何かが起こったのかもしれない。
知らないけれど、藤原が他人だけでなく、自分の凄いところを誇れるようになったことは、とても嬉しい。

「Flare」

2021年2月11日、結成25周年を迎えたBUMPが当日に配信リリースした曲である。まだシングルカットはされていない。

この曲は夜聴くのがいい。みんなが寝静まった深夜に、こっそりひとりで聴くのがいい。昼間聴いてももちろんいい曲だが、夜中に聴くとなおいっそう染み渡る。細胞全部がこの曲で満たされる感じがする。

うねるようなアコギが繊細なイントロ、つぶやくように歌い出す藤原。後ろではマラカスのような音がサラサラと鳴っている。指を鳴らす音も心地いい。

自分にしか出来ない事ってなんだろう
終わったって気付かれないような こんな日々を

私は今年の冬から夏まで就活をしていたので、この歌詞は自分のことのように聞こえた。
自分にしか出来ない事ってなんだろう。自分に問い続けて、わからなくて、悩みながら歩き続けた。もう終わりにしてしまいたいと思いながら、足を止めなかった日々。そんな無様でかっこ悪い私に、この曲はそっと寄り添ってくれるように感じた。

私がこの曲で一番好きなのは、二番のサビだ。

拾われず転がるコイン 瞬き オーケストラ

この体言止めの歌詞、藤原のがなるような力強い歌声が胸に響く。

どこか心細い、弾き語りのように始まったこの曲は、ギターとベースが入り、ドラムが入り、メンバーのコーラスの大合唱で幕を下ろす。あたたかくやさしいBUMPの物語に、気づけば胸が熱くなる。大好きな曲だ。

「なないろ」


2021年5月、NHKの朝ドラ「おかえりモネ」の主題歌としてリリースされた。

BUMPが、朝ドラの主題歌。最初は信じられなかったが、毎朝毎昼、テレビからBUMPの音楽が流れ出すと、現実なんだと思った。本当に毎日流れるので、聞き飽きて嫌いになる人がいたらどうしようと不安になった。

私に関して言えば、いくら聴いても、この曲を嫌いになることなんてなかった。むしろ、聴くほどにどんどん好きになった。朝一番に聴く音楽にふさわしい、明るく軽やかで美しい曲だと思う。

この曲で好きなのは、なんと言っても「キラキラ キラキラ」だ。藤原基央の「き」の発音大好き。ちょっと唾入ってる感じ。(気持ち悪いオタク出ちゃった)

歯磨きして顔洗って着替えたら
いつもと同じ足で出掛けようぜ

二番のサビのここが大好きだ。朝、身支度をしているときに聴くと、自分が曲の中に入り込んだようで楽しい。


「失くせない記憶」も「治らない古い傷」も抱えたまま、それでもスキップするように軽やかに、前に進むことを肯定してくれる歌。この曲を聴くと、私は苦手な朝が好きになる。今日もなんとか頑張ろう、明日はきっといい日になる。そう思えるから。


私は今日も、眠れない夜を、憂鬱な朝を、BUMPの音楽に救われて歩いていく。


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