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第三進化(物理) bit (1) 光

  音節→文字と言語は進化し、ついに、bitと呼ばれる電気信号になった。Bitの名付け親はジョン・テューキーである。

 音声は文字化され、消えない音節となり、文字はコード表にもとづいて電子(bit)化された。一方で、文字は脳内で音声化されるので、文字化されたbit列も音声である。こうして、現代人は過去や遠方の著者の声を聞くことができるようになった。

 音声とbit列は互換性をもつのだ。こうして世界各地の電子データベース上に保管されている論文や書籍から著者の音声が復元されて、現代人の脳と直接結びつくようになった。正にインターネットがそれだ。

 インターネットの真価は、読者と著作内容との双方向性が確立されたことにある。これまで本や雑誌の内容は、読者が読まないことには、何が書いてあるかわからなかった。ところが、bit化された言語情報は、インターネットのキーワード検索によって、機械処理によってある程度のところまで内容を把握できる。これが研究効率を著しく高める。

 また、ウィキペディアなどウェブ上の説明資料にアクセスすることによって、著者についての基本情報や、他にどのような著作があるか、そして図書館OPACやCiNii Booksを使って、それらの著作がどこの図書館に蔵書されているかを知り、amazonやウェブ古書店を使って、どこの書店・古書店に在庫されているかといった入手可能性情報も手に入る。

 第二進化をとげて、文字情報と概念を使いこなせるようになった言語的人類は、第三進化の物理基盤である検索エンジンの力を利用して、学際研究にとりかかるときがきている。

 

電子図書館の潜在力

 我々は、検索エンジンに関心のある言葉を投入するだけで、実に多くの言語情報を入手できる。著作権の切れた商業出版物を提供する電子図書館は、そのなかでももっとも信頼性の高い情報を提供する。

 インターネットの電子図書館はさらに便利だ。本の内容をそのままダウンロードできるので、書店や図書館に足を運ぶことなく、言語情報に触れられる。誰でも無料で本を読めるようになると、言語的人類をさらなる進化にいざなう可能性をもつ。電子図書館の上手な使い方が確立されれば、お金がなくても、学校に行かなくても、独学で、多くのことを学び、豊かな教養を身につけることができる。

プロジェクト・グーテンベルクの創始者マイケル・ハート(1947-2011)

 アメリカでは50年以上前に「プロジェクト・グーテンベルグ」という電子図書館が始まり、すでに6万点以上の本が収録されている。明確な収録方針はないようだが、古典は豊富であるし、西洋に限らず東洋の論語(英語版)もある。

 日本にも、「青空文庫」という電子図書館があり、著作権が消滅した本を、誰でも無料で読めるサイトである。今のところ明治大正期の日本人の文学作品が中心だが、古典もあるし昭和の作品も増えている。被爆し、若くして亡くなった峠三吉(1917-1953)の『原爆詩集』や原民喜(1905-1951)の『夏の花』は、21世紀に入って著作権が切れるとすぐに収録された。原爆体験をつづった文学は、原爆が投下された町を生きた著者の体験した現実と心の声を伝える。これは実際に広島や長崎を訪れて、原爆資料館を訪れ、説明を聞くのと、同等かそれ以上の教育効果がある。

  

 

 

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