どうしても口出ししてしまうのはどうしたらよいか?

子どもにあれこれ言わないほうがいいのは分かっている、分かっているけど黙っているのが難しい、言わずにいられない、というご意見があった。それはそうだと思う。たぶん、人間の本能に刻み付けられている。こうしたほうがいいのに、という思いがあると、言わずにいられない本能が。

何かで困っている人がいて、それをどうすればいいのかこちらが見当がついたとき、「ちょっと貸してみ」と言いたくなる本能が、人間にはあるらしい。こうしたらいいのに、という思いが湧くと、もうそれを言わずにいられない。実行せずにはいられない。人間はそういう生き物であるらしい。

では本能なのだからもう諦めて、本能の赴くまま、言いたいことをいい、口出ししたいことを口出しすればよいのかといえばさにあらず。やはり口うるさく言うと子どもはやる気を失う。言えば言うほど逆効果になる。そうなるほど、「そっちじゃない!」と言いたくなる。悪循環。

口を出さずに済ませるには、心構えというか、思考の枠組み(思枠)をデザインし直した方がよい。私の場合、「この子はどんな失敗をするのだろう?」と、子どもがうまくいかない様子を観察して楽しむことにしている。すると、余計な口出しをせずに済む。

もし答えを言ってしまったら、子どもは失敗しなくなってしまう。それでは面白くない。どんな失敗するのか、どんな紆余曲折をたどることになるのか見せてもらおう、と心構える。すると、口出ししようなんて思わず、ニコニコして子どものおたつくところを眺めていられる。

もう一つ、思枠をずらしておいた方がよいのは「遠回りせずにできるだけ効率よく正解にたどり着くこと」をよしとする考え方から、「遠回りし、失敗した方がむしろ記憶が強化され、観察力が強まり、しかも応用力がつく」という考え方にシフトすること。

人工知能を搭載したロボットに荷物を持ち上げる学習をさせる場合、なるべくたくさんの失敗を経験させるという。うまくいく方法、正解だけでなく、失敗をたくさん経験させることで、成功の輪郭を浮かび上がらせることができる。正解だけ教えるとこれができないらしい。応用力もない。

今後の応用力を重視し、何をどうしたらよいかの見当をつけるための観察力を高め、経験したことを頭に刻みつける記憶力を高めるには、失敗体験、紆余曲折を経ることが大切。そちらに思枠をシフトさせておくと、ゆとりをもって失敗を眺めていられる。

もちろん、全く何も教えず、闇雲では子どもも見当つかなくて頭真っ白になるリスクはある。それはよく観察していると、「あ、これには子ども単独では気付けないな」とわかるから、「ここ、どうなってる?」と着眼点だけ示す。すると子どもはそこから理解のよすがを見つけ、解決するすべを発明する。

子どもが気づかないことは着眼点を示し、あとは紆余曲折を経ながら、失敗を重ねながら子ども自身の手で解決していくのを見守る。すると、子どもは正解への近道を教えられるより、はるかに記憶力、観察力、応用力を高められる。

私があれこれ言わずに済ませられるのは、そうした欲求が生まれずに済む「思枠」をデザインし、その思枠から自然と言動がほとばしるように自分を仕向けているから。

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