室伏広治氏インタビュー抄録

「スポーツ庁の室伏広治長官 (47)は、こんな疑問を投げかける。
「小学生から全国大会をやる必要があるのか」
「真の全国での1番は、高校生や大人になってからではないと選ぶことはできないんじゃないか」
スポーツ行政のトップの言葉は重い。」
220626朝日

「個々に適切なタイミングのトレーニングがある。大人の成功体験小学生に当てはめるのはありえない。体の大きさも違うし、精神もできあがっていない。 完成を急ぐあまり起こる問題は断じて許されない。 不幸の始まりだ」

「狭い世界では指導が過熱しがちだ。その陰で子どもが競技を嫌いになってやめてしまったり、けがをしたりしてしまうケースをいくつも目撃した。」

「10代でスポーツを引退するのが当たり前な日本の環境は、やっぱり問題だ。野球部に入ったけれど、ずっと補欠で一度も試合に出られず、引退。その後スポーツはやらない、なんていう例も珍しくない」

「体操とか例外的な種目はあるが、通常、男性だと20代後半に競技のピークを迎える。体の成長に合わない練習をすることで精神的にも燃え尽き症候群になってしまう」

現役時代も今も、大事にしている言葉がある。
「君達の競争相手は 無限の空 確固不動の大地」
28歳で迎えたアテネ五輪で金メダルを獲得したあと、いかに競技に向き合うか悩んでいたとき、恩師と慕う教育者から贈られたという。

「なんて小さいところで競技していたんだ、と気付かされた。 金メダルは承認欲求くらいは満たしてくれるかもしれない。それよりも、自己実現や社会実現をめざすモチベーションが大事になってくる」

「勝ちにこだわらないわけではない。ただ、勝つことは小さな目標。アテネ五輪の後は、できない技に挑戦しよう、体の使い方を極めよう、とやってきた。だから、プレーしていて楽しかったですね」

「スポーツの本質は体を動かすことを通して得られる心身の成長、国の壁を越える文化的な部分にある。勝敗で苦しんでいるうちは、本当の醍醐味は得られない」

「中学高校と指導者に管理されていると、自由になる大学では何をやったらいいのか分からなくなる。 結果、指示待ち人間になってしまう。子どもたちが自発的にスポーツの本質を味わえるようにしていきたい」

「この間、公園でスケボーをやっていた子どもたちをこっそり見ていたんです。YouTubeを見ながら、『この技できるか』って相談していた。勝つか負けるかよりも、手の内を見せ合って、みんなで技を作り上げていた。新しいスポーツが人気になることで、勝利至上主義も変わってくるんじゃないかな」

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