「気を遣う」と疲れる、「気が利く」のは楽しい

FB友が「気を遣うと損をする、気が利くと得をする」という言葉を紹介。大変面白い。「気を遣う」と「気が利く」はよく似ているのに、なるほど、違いがあるように思う。
「気を遣って疲れた」という言葉をよく聞く。なぜ疲れるのかを考えると、自分が相手にどう見られるかを心配しているからかも。

こんなことをしたらどう思われるだろう?あんなことをしたら変に思われるかな?と、自分の見え方を気にしているのが、この場合の「気を遣う」なのかもしれない。理由が利己的で、相手を気遣うようで、実は自分が損せずに済むにはどうしたらいかと心配し通しで、疲れてしまうのだと思う。

一方、「気が利く」は、自分がどう見えているのかに頓着していないのかもしれない。相手と状況をよく観察し、「次に必要なのはこれだな」と気がつき、それを手配する。相手のためになることは何か、を考えて行動しているけれど、それで自分に得なようにとか、損をするとかは考えていない。

自分の損得を忘れている分、精神的エネルギーの節約になるのだろう。精神的エネルギーの行き先を相手と状況の観察だけに絞る。だから的確に「気が利く」。そして自分がどう見えるかとか損得なんて気にしないから、大胆な行動も選択肢に入る。だから「よくぞそこまで」となるのだろう。

細かくダメ出しを出す上司の場合、部下は「気を遣う」ことになる。万全を期したつもりでも何かしらケチがつくようだと、「また叱られたらどうしよう」と不安が先に立ち、それで精神エネルギーを消耗してしまい、疲れてしまう。それでも上司の命令に従おうとしているだけマシな段階かも。

けれど「もうこんな上司のためになど働くもんか」と開き直ってしまった部下は、上司に「気を遣う」ことがなくなる。どうせケチをつけてくるんだろうと思ったら、頑張る気を失う。結果、ケチをつけてばかりの上司の周りには、「気が利かない部下」ばかりが発生することになる。

しかし部下の失敗を「よくあること、気にしなくていい、次に生かせばいいだけ」とおおらかに捉え、それよりも部下の自発的な行動を喜ぶような上司だと、「お!気が利くねえ!」という言葉を連発する。すると、そうした上司のために行動するのは楽しいものだから、上司と状況をよく観察するようになる。

そうすると「気が利く」行動が自然に増えていく。部下は状況をよく観察し、これが必要だな、と感じたらその行動をとることをためらわないようになる。もしそれが想定外の結果になったとしても、上司がその自発的な行動を喜び、「結果は仕方ない、でも自発的に取り組んでくれたことが嬉しい」と喜べば。

自分がどう見えるかなんて心配せずに済む。上司に「気を遣う」ことがなくなる。自分がどう思われるかなんて心配せずに済む分、上司がどういう意向なのか、今、職場の状況がどうなのか、観察することに全集中でき、「気が利く」確率がどんどん増える。

部下を持つ立場の上司は、部下に「気を遣わせる」ことがないようにする必要がある。自分が上司にどう思われているか、戦々恐々とするようでは、部下は精神的エネルギーのかなりを自己保身に割かざるを得なくなり、その分、仕事に向けるべきエネルギーが失われる。

部下がのびのび働く上司は、部下が「気を遣う」ことがないよう、少々の失敗は笑って済ませ、それよりは失敗を楽しむくらいの気持ちで一緒にその失敗という現象を観察し、そこから部下が何かを汲み取る手助けをする。状況を観察する癖がつき、気づきがあれば、次からは失敗しなくなる。

「失敗を恐れさせれば失敗しなくなるだろう」と信じている人は結構多い。そして失敗を恐れさせるため、部下をしこたま叱り、もう二度と失敗したくない、と恐怖させようとする人がいる。しかしその目論見はむしろ逆の結果を招く。失敗を恐れるあまり、状況を観察するゆとりを失うからだ。

状況を観察するどころか、上司の目の方が気になる。その結果、自分がどうなってしまうかが気になる。その結果、無駄に「気を遣う」ことになり、しかも失敗が怖すぎて状況を観察すること自体を怖がってしまい、失敗する原因をそのままにしてしまい、失敗を繰り返してしまう。部下、茫然自失する。

しかし上司が、部下の失敗を予測し、むしろよい機会だと考え、失敗の際に何が起きたのかを一緒に観察して楽しもうとすると、部下は失敗をむやみに恐れずに済むようになる。それよりも状況をよく観察し、失敗に陥る予兆はこれなんだな、と気がつくようになり、同じ失敗を繰り返さずに済むようになる。

上司の目を気にせずに済み、自分がどうなってしまうかを心配せずに済むから、状況をよく観察し、観察そのものを楽しんでいるからよく気がつき、気がつくから「気が利く」ようになる。「気が利く」部下を育てられるかどうかは、上司の接し方次第だと私は考えている。

「上司は選べないから、部下である自分がなんとか変わるしかない」という立場に置かれている人は、腹をくくって上司のことを忘れるしかない。「あの人はこちらがどうしたって文句を言うんだから、どうしようもない。そんな人を気にするだけ損だからやめておこう」と腹をくくる。

そうすることで上司にどう思われるとか、自分の立場はどうなってしまうのかとか心配するエネルギーを節約する。そのうえで、失敗を楽しむ。「そうか、これはこうするとこうなるのかあ」と。失敗から発見し、学ぶ。上司があーだ、こーだ言ってきても馬耳東風、右から左に受け流す。

そうして失敗の観察を楽しめるようになると、「予兆はこれなのか!」というのが発見できるようになる。すると、同じ失敗をする確立を大幅に減らすことができる。上司がどう思うかなんて気にしないから、大胆な行動がとれる。すると「気が利く」ようになり、結果的に上司の機嫌がよくなることも。

まあでも、上司の影響力は大きい。部下が「気を遣う」ばかりで気が利かないとすれば、それは上司の接し方を見直したほうが良いように思う。上司の接し方が、部下の精神的エネルギーを浪費し、状況の観察を楽しめ亡くしている恐れがある。「失敗を恐れさせる」という愚かなことはやめたほうがよい。

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