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子供の英語教育を考える その1

カリフォルニアに来て3年が経った。英語が全くできなかった6歳の息子も9歳になり、今では普通に英語をしゃべっている。前にも書いたが発音はもうネイティブそのものだし、私が聞き取れないものも時には聞き取れる。アメリカ育ちのアメリカ人の子供と比べるとまだ劣るけど、よくキャッチアップしたと思う。

半面、日本語の能力が日本で育った日本人の子に比べるとかなり劣っている。ということで海外で一時的に子供を育てる日本人家庭はみんなこの問題にぶつかる。

それは「英語はアメリカ人に負けるし、日本語は日本人に負けてしまう。どっちもハンデを負っているDouble Limitedの状態」という問題である。

英語も日本語も中途半端は深刻だ。「子供を二つの言語で教育すると子供が混乱してしまう。これによりDouble Limitedになる。だから外国語教育は母国語が確立してからやるのが正しい」という説がまことしやかに頭の中をよぎる。

そして「人間は言葉を使って考えるので英語も日本語も中途半端だとそのまま思考力も中途半端になってしまう」とかいう説も恐ろしく、海外に連れてきた自分の責任を感じてしまう。

もっとプラクティカルには「英語よりも日本語を完璧にしないと日本の中学受験で勝ち抜けない」という問題だ。

というわけで、よくあるのはこの問題を解決するためには日本に早めに帰国して、中学受験までに十分な時間を取って日本語を追いつく、もしくはずっと海外にいて海外の大学を目指すということだ。だが本当に問題なのだろうか。

ここでもう少し突き詰めてこの問題を考えてみたい。

まず事実としてうちの長男はDouble Limitedである。日本語も英語も中途半端で、国語の試験を日本で受ければに大抵の日本人に負けてしまう。同時に英語の試験をアメリカで受ければ大抵のアメリカ人に負けてしまう。彼は土曜日には日本語の補習校に行っているし、英語も個人レッスンを受けるなど努力してきた。その結果がこれである。努力してても海外で英語の学校に行くと3年ではDouble Limitedは解消できない。英語も日本語も中途半端というのはそういう可能性があるということではなく、海外で子育てすることの必然である。うちの子は大丈夫とはいかないだろう。これが一点目。

次にこのDouble Limitedの原因である。よく言われるように息子は2つの言葉で教育を受けて混乱しているのだろうか。それは全く混乱していない。これはいくつかの論文でも書かれているが、子供は二つの言語に触れて頭が混乱することは一切ない。触れた言葉の意味を子どもの脳は混乱なく推察し、すごいスピードで吸収していく。

実際に起きていることは英語も日本語も子供は混乱せずに吸収していっている。例えばMonolingual(一つの言葉だけを操る)の子供がその言語で100の言葉の意味を操るとき、Billingualの子供は2つの言語を60の言葉ずつ操る。だからMonolingualの子供とその言語で競えば100対60で負けてしまうのだ。この比較の仕方がDouble Limitedの原因だと思う。Billingualはトータルで120の言葉の意味を操る。Double Limitedという言葉はネガティブな響きがあるがトータルに目を向けるとMonolingualの子供よりも多くの言葉を理解している。Double Limitedともいえるし、こんな言葉があるのか知らないがTotal superior(総合優位)ともいえる。

大切なことは子供は混乱していないということ、Double Limitedは確実におきるということ、Double Limitedは事象の一面のみをとらえた表現で、トータルで考えれば決してLimitedではなくむしろSuperiorであること、である。

ただプラクティカルな問題はある。このままでは中学受験は勝ち抜けないということだ。次回は日本に帰ることを見据えた教育の考え方を書いておきたい。




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