英語、英語、英語、え、い、ご (その2)

というわけで、英語からは逃れられない。であるならば英語をやってしまったほうがいい。ここで、もう一度英語を含めた国際的なビジネススキルについてマクロに考えてみたい。日本の投資による、日本人のための、日本人だけが働くビジネスであれば日本語だけで大丈夫だ。むしろ日本の奥深さを極めた方がいいだろう。ただ、ビジネスを考えると日本以外も含めて行動したほうが、オプションが広がる。というわけで、投資も市場も、サプライチェーンも人材も企業は世界に向かって出ていく。逆に海外の企業も日本にも足場を築こうとする。日本が島国で鎖国していた時代はもうとっくに終わっていて、これからは加速度的に日本と世界とのつながりが深くなっていく。

他方、日本でも海外でも仕事ができる日本人、もしくは外国人は非常にまれだ。これは実は日本に限ったことだと思う。韓国も中国も、海外経験が長く、母国でも海外でもあまり気にせずに仕事ができる人が実は結構いる。学生の時にアメリカにきて、そのままアメリカで仕事をし続けている人や、行ったり来たりしながらキャリアを築いている人が多い。母国語も英語も完璧で、国際的な場でもきっちりと仕事ができる。インドやシンガポール、香港、マレーシアなんかはこういう人材がもっと豊富だ。翻って日本は、これから加速度的に国際化が進むというのに、まだ国際的なビジネスパーソンが圧倒的に不足しているし、質も低いと思う。

日本はなんだかんだ言って外国企業も無視できない大きな市場だ。これからより国際化が進むのにも関わらず、こういったマルチカルチャー、マルチリンガルな人材が少ないというのは、実はこれから英語(英語を含めた国際的なコミュニケーション能力)を極めんとする者にとっては大きなチャンスである。需要が大きいにも関わらず供給が圧倒的に少ないからだ。40歳を過ぎた私が英語を勉強しているのだから、10代とか20代、30代の人で英語をやるかどうか迷っているなんて人は迷わずに、英語をやっつけてしまおう。

ではどのように国際的に通用する英語力を身に着けるのかについて、私らしくまとめていきたい。英語力(International Communication skill)はビジネスのそれと同じように、ビジョン戦略が大切だと思っている。よくこんな単語帳がいいですよとか、こんなYoutubeが良いとかの情報があるが、それはあくまでもTacticsであって、そこに行く前に、ビジョンと戦略をしっかりと考えるべきで、それこそが英語を上達させるカギだと思う。英語にまつわる情報やツールは溢れかえっている。だからこそ、ビジョンと戦略をしっかりとたて、エネルギーを継続させながら、選んだ道筋を進むことが大切だ。これがうまくいけば、英語上達の実感が得られ、良い循環に入っていくことができる。

まずはビジョンだが、私は英語でこんなことをやってみたいとか、こういうビジネスパーソンになりたいとか、具体的に自分が見たい世界をしっかりと思い描くことだ。私の場合はアメリカ企業で、外国人のチームを率いて、ビジネスの変革をリードできるビジネスリーダーになりたいというのがビジョンである。変革をリードするにはなぜ変革するのかを情熱的かつ論理的に説明し、共感を得られなければならない。また、「やってられないよ」という人を励まして、一緒に歩んでいかなければならない。アメリカ大統領選の民主党の候補の演説を聞いていると、アメリカ人は本当にこういうスピーチやディベートが上手で、あこがれてしまう。いつかあそこまでとはいかないまでも、海外で変革をリードしたい、そんなビジネスリーダーに私はいつかなりたいというのが私の英語のビジョンである。そして心からそうなりたいと願っている。

ビジョンはこんな大それたものでなくてもいい。いつか海外のレストランでスマートに食事をしたい、とか東京オリンピックの時に英語で話しかけられても落ち着いて受け答えをしたいとか、Game of thronesを英語で理解したいとかでもいいと思う。ただし、それが具体的で、「こんな自分」というイメージがはっきりとしているのが良いと思う。そしてそれにコミットする、本当になりたいと思うことだ。英語をできるようになるにはエネルギーがいる。このエネルギーを生み出すのは、「こんな私になりたい」というビジョンである。どんな私に、どうしてなりたいのか、じっくり考えてビジョンを作り上げるのが大切だ。

次に戦略である。戦略とは①状況分析②取捨選択③アクションプランの3つである。まずはビジョンを念頭に置きながら、状況を分析する。

よく3C分析(Customer, Company, Competitor)とかあるが、英語の上達という点では、自分自身と自分が活用できる資源、英語を上達させるツールの進展などを把握しておこう。例えば自分の英語力がどのくらいなのかを知るのは、非常にクリティカルなので、暫く英語をやってなかった人はTOEICを受けるとか、英語の教材を解いてみるとか、ネットで語彙をチェックするとかやってみるといいと思う。また、語彙、文法、発音、リスニングなどに分けて自身のレベルを把握するのもいいだろう。それから自分はシャイなのか、社交的なのかも把握しておくとよいと思う。シャイなひとはそれがボトルネックになるので、意図的に英語の時は違うキャラクターを演じなければならない。

自分が活用できる資源は、例えば自分の本棚に眠っている英語の本とか、自由な時間とか、契約しているNetflixであるとか、学校に行くお金であるとか、外国人の友人であるとか、会社の海外支店への出向とかそこまではいかなくてももっと英語を使う部署への転籍の可能性とかである。最後に英語を上達させるツールであるが、アプリやOn-line英会話、ワーキングホリデー、駅前留学、海外留学と多岐にわたっているし、特にデジタルやAIを活用したツールもできているので、これもチェックしておこう。

次に取捨選択だ。一度にあれもこれもではなく、大胆に捨てて、自分のリソースを注ぎ込むことを決めなければならない。自分のビジョンと状況分析から、何を改善すれば一番ビジョンに近づきやすいのか、どの道筋を通ってビジョンに到達するのかを決めていく。英語が伝わないのは発音のせいだと思えば、まずは発音にフォーカスすべきだ。発音が改善した後に、語彙や文法を増やせばいいだろう。発音がおかしいまま語彙を増やしても英語は伝わらない。シャイな自分が英語上達の大きなハードルと思えば、それを改善すべくFace to faceのプログラムなど、積極的な発言を求められる環境に身を置き、シャイな自分を変える!という決意をもって臨むべきだ。もしくはビジネス英語というくくりでフォーカスしてもいいと思う。その場合は教材も、暇なときに見る映画もトイレで読む本もビジネスをテーマにしたものにフォーカスする。また、英語上達というくくりで生活をフォーカスするのも大切だ。一日は24時間なので、どう使うのかを考える。取捨選択は難しいが、自分の判断を信じて、フォーカスしよう。

戦略の最後はアクションプランだ。何を(Where to play)を改善するのかを決めたので、どうやって改善するのか(How to win)をより細かく落とし込んでいく。発音であれば、どういう教材を使って改善するのか、一日にどのくらい、一週間でどのくらいやるのか。どうやって改善をモニタリングするのか、を考えてみよう。シャイな自分を変えるのであれば、例えばどのスクールのどのコースを選ぶのか、また受講前にきちんとこちらの目的を伝えるということもアクションプランに入れよう。などなど、細かくイメージできるはず。計画を立てるのは楽しいが、計画倒れにならないように、ビジョンを定期的に意識するような仕掛けもいいかもしれない。海外で働きたいのなら、海外で働いている人とネットワークを作って定期的に話を聴けば、刺激になってエネルギーになるだろうし、もう人事考課の目標に書いてしまうのもいいと思う。エネルギーを維持しながら、細かい作業を行い、どれくらい改善したのかが実感できるような計画をつくってみよう。

そして長い目でみると非常にパワフルなのが循環だ。先のビジョンと戦略とがうまくいけば、数カ月で英語の上達を実感できるはずだ。そうすると努力が報われる感覚が得られて、また頑張ることができる。そしていつしか、「あの人は国際的なビジネスパーソンになるために英語を勉強している」というブランドがだんだん組織内で築けていく。そうすると英語の仕事が増えてくる。英語の仕事が増えてくると仕事でも英語を使うようになってますます英語ができるようになってくる、、、というように良い循環が回り始める。この循環に乗っかっているといつか崖の対岸が近づいてくるので、どこかで思い切ってジャンプするのだ。営業からマーケへとか、地方から東京へとか、日本企業から外資企業へとか、日本から海外へとリスクをとって進んでいけば、いつまにか国際的なビジネスパーソンになれるはずだ。

長々と書いてきたが、「なんでもっと早く英語をやっておかなかったんだろう」と私が学生の時に海外で仕事をしていた先輩が切実に言っていたが、今の私も本当に同じ心境だ。ああ、あの時の先輩の言葉をもっと真摯に聞いておけばよかった。記憶力は確実に悪くなるし、発音も直すのに時間がかかる。中年の学び直しを待たずに英語は若いうちにやってしまったほうが絶対にいい。人生やり直せるんなら35歳くらいまでに5年くらいは海外で勉強と仕事をしておきたかった。とはいっても人生はやり直せないので、地道に今日も単語帳をやり、英語のニュースを読んで自分の語彙力をチェックする。そして、もう10回は辞書で引いたのに意味を覚えられない自分の脳の衰えに「若年認知症じゃないかしら」と嘆きながらも11回目の辞書を引く。国際的なビジネスリーダーへの道のりは遠い。






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