去年の今頃を思い出した、青春と言われるならそうだった
音楽は好きですか。
好きなバンドはなんですか。
好きになったきっかけはなんですか。
きっかけ。
それは好きだった人が教えてくれたことだった。
ー
夜中に熱く語ってきたバンドの良さ。
正直私にはまだわからなかったけど、好きな人が好きだから。とかいうめちゃくちゃ不純な動機でいつの間にか結局好きになった。
教えてもらった曲。
良さを語ってくれた曲。
一緒にライブに行った時のアンコール曲。
弾き語りしてくれた曲。
カラオケで歌ってくれた曲。
なんだかんだ言って嫌いになれないそのバンド。
聞くたびに思い出す楽しかった会話。
バンドを介した私たちの思い出。
それに執着している自分。
ー
そのバンドが語るようなぐちゃぐちゃな恋愛は知らないし、したことはない。
共感なんて全くしない恋愛ソングが好きだった。
過去の女が見える曲。
過去を思い返している曲。
失恋ソング。
未練たらたら。
叶わない恋愛を歌った数々の曲を歌うそのバンド。
そのバンドを好きという彼はいったい誰のことを思ってその曲を好きになったんだろう。
彼がこのバンドを好きだと教えてくれた時にはそう思っていたけど。
今では私のことを想って聴いていたらいいよな、なんて想ってしまう。
ー
歌詞に重ねられるほど大人な恋はしていなかったから、
解らない歌詞と解らない感情を追いながら、なんとなく好きだと感じていた。
そう、なんとなく。
好きな人と好きな音楽について語り合う。
その時間はどこの誰がなんと言おうが、青春だった。
音楽のプレイリストを交換すること。
それは当時の自分にとっては、自分を見せることとイコールだった。
プレイリストを見せ合える人とは分かり合えている気がしていた。
同じ曲をいいと感じているその価値観が好きだった。
好きな人の好きな曲は気になるし、聴くうちに好きになってしまうから
いつの間にかお互いのプレイリストは似通ったものになっていた。
ー
今度私が他の誰かとする恋愛は。
君が教えてくれたこのバンドの歌詞みたいな恋なのかもね。
ふざけて言ったら
こんなバンドに本気で共感するような相手はろくな奴じゃないからやめとけだって。
このバンドをすすめてきた彼がろくでもない奴だったなんて全く思わない。
歌詞に重ねることはできないけど、曲を聴くたびに教えてくれた彼のことちゃんと思い出している。
聴くたびに思い出がよぎるのがなんだか嫌で、バンドの曲を聴けなくなった時もあったけど、最近また聴けるようになった。
寂しいけれど、前に進めたということ。
その人との時間の中にいつもあったそのバンド。
思い出として、ずっと好きなままでいたい。
歌詞にあるような未練なんてないけど今でも聴いている。
聴くと思い出すのは、このバンドを教えてくれたあの日のあの人。
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