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公務員からの転職は本当に難しいのか?

最近公務員の方からよくいただく質問です。
 公務員からの転職は難しいんだよね?
 転職を考えたけど、難しいって聞いたから諦めたよ。

確かにネット記事を見ても、難しい!と結論付けるものが多いです。

が、僕の見解は「難しいと思われているだけ」です。
ここでは公務員からの転職が難しいと言われる原因を整理してみます。


転職チャネルが少ない

「公務員から転職」と調べてみてください。専用サイトが存在しません。
特にゼネラリスト型かつミドル層の公務員は、採用チャネルが少ないです。

公務員の転職チャネル

主事は第二新卒で若さに需要があります。ポテンシャル転職を目指します。
技術職はその専門性に需要があります。即戦力転職を目指します。
管理職はマネジメント能力に需要があります。即戦力転職を目指します。

これらに対して、事務系公務員かつ25~35歳のミドル層は中途半端。
 ポテンシャル採用と言い切れない年齢。
 限られた業界・職種でしか活かせない専門性。
 昇任が遅く、経験していないマネジメント。

企業側の需要と、公務員側の供給が(そのままだと)成り立ちづらい。
必然的に、採用チャネルが整備されづらい。
「公務員から転職」と調べても、専用サービスやサイトがないのは、
このような背景があるからだと考えています。

ではどうすれば良いかと言うと、自分の立ち位置を明確にすることです。
立ち位置と言いましたが、適性や強みと捉えてもいいです。

ポテンシャル採用を目指してポータブルスキルをアピールするのか、
即戦力採用を目指して官公庁業界での実績や再現性をアピールするのか、
管理職採用を目指してマネジメントやディレクションをアピールするのか。

中途半端にゼネラリストをアピールするのが一番良くないです。
誰にも刺さりません。

民間企業は、ゼネラリスト/総合職を新卒で採用します。
既卒(転職)での求人は、スペシャリスト/専門職がほとんどです。

採用チャネルが少ないなかでも、
自分が何をしてきたのか、これからどうしたいのか。
ここを明確にして、立ち位置を決めることがポイントです。

逆にこれさえ出来れば、公務員からの転職は難しくはないです。

ロールモデルがいない

身の回りに、公務員から民間企業へ転職した人はいますか?
個人的には、ここ1~2年で増えてきた感覚はあります。
しかし、成功事例としてロールモデルになる人は多くないはず。

総務省資料

少し古いですが、若手(20代以下)の離職率を取り上げたデータ。
(令和元年度の離職率)
 民間 17.6%
 地方公務員 2.1%

いかに公務員が離職していないか、が分かります。
休職制度が充実していたり、クビが少なかったりということもありますが、
公務員から民間へ転職する人が少ないのも大きな要因でしょう。

僕としては民間の離職率がこんなに高いことに驚きました。
公務員の肌感覚と世間実態はズレがちですね。

とはいえ公務員も民間も、転職活動でやることは一緒。
基本的には以下の3ステップです。
 ①自分を深く知ること
 ②仕事を広く知ること
 ③自分と仕事をマッチングさせること

この3ステップは特性因子理論というかたちで、
100年以上前にパーソンズさんが提唱しています。
「丸い釘は丸い穴に」とは彼の言葉です。

①~③の細かいやり方はいずれ解説しようと思います。
ここで言いたいのは、①が重要だということ。
①は自分の価値観・思考の癖・強み・適性を言語化する作業です。
内省やメタ認知というステップです。
転職しなくとも、今後の人生や異動を考える時には①がベースになります。公務員は全員やった方がいいです。(民間もだけど)

やっかいなのが、このステップは1人できないという点です。
自分のことは自分が一番分からないです。

ここでロールモデルとの繋がりがあるとスムーズに進みます。
 ・公務員は性格や性質が似通っていて、ロールモデルを参考にしやすい
 ・1人で出来ないので、ロールモデルに手伝ってもらうと効果的

僕自身もこれを体感しているので、
過去の自分と同じ境遇の人をサポートしたいと思っています。
情報発信を始めたのも、この想いがあってです。

少し逸れましたが、伝えたかったのは、
ロールモデルを参考に「①自分を深く知る」が出来れば
公務員からの転職は難しくないということです。

用語のアンマッチ

公務員から民間へ転職する時に、一番苦労するのがこれです。
用語のアンマッチ。

公務員は業務がめちゃ特殊です。
基本的には民間企業がやらないことをやっているからです。
物事の捉え方と伝え方が違う、と言い換えられます。

具体的に面接をイメージしてもらうと、
公務員「市全体のSDGs推進を担当していました」
面接官「法人営業の経験は?」
公務員「ありません」
みたいな感じです。

「SDGs推進」と「法人営業」のアンマッチが起きています。
原因は両者に1つずつあります。
公務員側が、民間に向けて用語をかみ砕けていないこと。
民間側が、公務員の仕事をイメージ出来ていないこと。

簡略化して書きましたが、現場ではこういうことが結構起きています。
用語の解像度を上げる必要がありますね。
 SDGs推進
  L新規事業企画・企業実態調査・先行事例研究
  L参考見積取得・金額調整・委託先検討
  L契約~支払い事務
  L契約先との打ち合わせ・事業推進
  L完了報告書の確認

ぱっと思いつくだけでもここまで分解できます。

先行事例研究や参考見積取得のあたりで、
企業にアポを取ってヒアリングすることもありますよね。
委託先検討のあたりでも、
SDGsの企画案について企業提案することもあります。
契約のあたりでも、企業と最終的な金額調整をしますよね。

これは民間でいうところの「法人営業」です。

ただ、公務員は日常の中で「法人営業」という言葉を使いません。
先ほどの面接シーンでも「法人営業の経験があります」と言えるのに、
言葉に慣れていないために、伝えられないんです。

言葉の違いが原因で、公務員と民間に意識のアンマッチが起きています。
十分に説明できない・理解されない、ということが起きています。


問題の本質は、このアンマッチに気づけない。ということです。
意識すれば簡単に解消できますが、意識すらできないのが実情です。

公務員の業務を分解して、民間の言葉に置き換える。
これさえ出来れば、アンマッチは解消できます。
そのためにはやはり、
 ①(業務を含めて)自分を深く知ること
 ②(言葉を変換するために)仕事を広く知ること
というステップが重要なんですね。



まとめます。
公務員からの転職は、難しいと思われているだけです。
構造や理屈を理解して対処すれば、民間と変わりません。

転職チャネルが少ない ⇒ 自分の立ち位置を明確にする
ロールモデルが少ない ⇒ モデルを参考に自分を深く知る
用語のアンマッチ ⇒ 用語を分解して解像度を上げる

それぞれの具体的なやり方は、
知りたい人がいれば別の記事にしようと思います。

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