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『星』と書いて『キミ』と読む【短編小説】

「1ヶ月ぶりだね、ようくん」
月命日の日、私はキミの家にお邪魔させてもらって、写真の前で手を合わせて言う。
もう1年たったんだ、なんて考えながら手を合わせているんだ。
キミがいない世界に、私はまだ慣れないよ。今でもたまに、この世界のどこかにいるんじゃないかなぁって思ってちゃうんだ。もうこの世界のどこににも居ないのにね。

「美桜ちゃん」

そう名前を呼ばれて振り向くと、ようくんのお母さんが紙を手に持ち立っていた。
私は目からこぼれそうになっていた涙をバレないように拭い、立ち上がる。

「どうしたんですか?」

少し声が震えてしまった。
やはり親子だからか、おばさんを見てるとようくんを思い出してしまう。

「この手紙、陽介から美桜ちゃんへのなの。あの日の前に書いていたみたいでね。孝太が預かっていたみたいなんだけど、辛くて渡せなかったって…昨日渡してきたのよ。読んでくれると嬉しいわ。きっと陽介も読んでもらいたいだろうから」

私は震える手で手紙を受け取る。ようくんから、私への、手紙…
おばさんに断りを入れ、封を切って手紙を開ける。
最後まで読み終わると、さっき止めたはずの涙が一滴、二滴とこぼれて手紙を濡らした。
『俺は星になっていつもみんなを見てるから。美桜を見てるから。』なんて……

「…子供じゃッ、ないん、だからッ、さあッ。戻って、来てよぉッ…!!」

力が抜けたように膝から崩れ落ち、手紙を抱きしめながら泣いた。
ずっと我慢していたからか、涙が止まらない。
私の背中をさすってくれているおばさんからも泣く声が聞こえて来る。
部活で遅く帰ってきたこう兄が驚いて、優しく抱きしめてくれて頭を撫でてくれた。
ようくんの家族は、みんな優しいね。
ようくん、見ててね。またキミに会った時にキミが大好きだと言ってくれた笑顔で会えるように頑張るから。
キミの家から帰るいつもの道で、空を見上げると星が光った。

END

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