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広島お好み焼き屋【皐月】の看板娘のリムは実は竜の姫巫女様でした! 第14話 竜の女神さま、勢揃い。 (1)

#創作大賞2023
#お仕事小説部門

 第14話 竜の女神さま、勢揃い。 (1)

「帰りました~」

「あっ! 御姉さま~。おかえりなさいませ~」と。

 女性の帰還を知らせる声と。

 リムの母上が、その女性へと。

『御姉さま、お帰りなさいませ』と告げた声が。

 唖然、呆然として佇むリムの耳へと聞こえてきた。

 だからリムは声の聞こえた方向──。

 そう、お父さまが入院をなされた部屋の扉へと視線を送り──声の主を見て確認すれば。

「ラフィーネ伯母上さま」と。

 リムの口から自然と声が漏れ。

「ラフィーネ伯母上さまもこられていたのですね」と。

 リムは自身の両目、瞼を大きく開けながら問えば。

「ええ~、わらわもルミエルと一緒にセバスチャンに病院と呼ばれる。この世界の診療施設へと連れてきてもらいました。ふっ、ふふふ」と。

 ラフィーネ伯母上……。

 そう、竜の姫巫女姉妹の長女であり。

 世界中の神々達から、竜魔王妃と呼ばれるほど恐れられている魔力の高い。

 ラフィーネ伯母上さまが、桃源郷にある神殿の離れから出られて地上──。

 この日本へと降臨されたので。

 リムも正直驚いていると。

「あらあら、二人はどうしたのですか? ふっ、ふふふ」と。

 ラフィーネ伯母上はお母さまにハグされながら泣いているライザ伯母上さまと。

 パパに抱きつき甘えながら泣いている、ルミエル叔母上さまの様子……。

 自身の実の妹二人の様子を見ながら首を傾げると。

 今度は自身の紅色の瞳……。

 そう、姉上にも遺伝をしている死と生、闇を司るドラゴン特有の瞳を動かし。

 リムと姉上の二人を見詰めると。

「レビィアとリムの二人も泣いていたのですか?」

 小首を傾げ訊ねてくるから。

「リムが、お父さまが心配で泣きだしたら。姉上や伯母上さま達にも伝染しちゃって……」と。

 リムが大変に申し訳なさそうにラフィーネ伯母上さまへと説明をすれば。

 ラフィーネ伯母上さまは、

「ああ、そう言うことなのですか~」と。

 少し驚いた顔をされたかと思うと。

「レビィア~」と。

 姉上を呼ぶから。

 姉上はラフィーネ伯母上さまへと首を傾げながら訊ねる。

(ここまで)

「ラフィーネ伯母様、私に何か用事ですか?」とね。

 するとラフィーネ伯母上さまは、姉上に微笑みながら。

「レビィア、貴女には。未だ見えませんか?」と訊ねるから。

 姉上はラフィーネ伯母上さまへと。

「ラフィーネ伯母様、一体私に何が見えるのでしょうか?」と、訊ね返すと。

「人の生死です。ふっ、ふふふ」と。

 ラフィーネ伯母上さまは、意味深な言葉を微笑みつつ姉上に告げれば。

「あっ!」と姉上は、自身の両目、瞼を大きく開けつつ、驚嘆を漏らし、終えると。

「いえ、多分、未だ私には、ラフィーネ伯母様のような能力が備わっていないから。解らないだけだと思います?」

 姉上はライザ伯母上さまへと申し訳なさそうに言葉を返せば。

「いや、そんなことはないでしょう。わらわもレビィア、貴女ぐらいの年齢には。他人の死がはっきりとはわかりましたからね……。レビィア、貴女が気がつかなかったのではなくて。お父さまの、この度の病気が重いものではなく。直ぐに完治するものだから気がつかなかっただけです」と。

 ラフィーネ伯母上さまは、姉上へと告げ、説明をすると。

「だからわらわは、この部屋を一度離れ、一階にあるコンビニエンスストアと呼ばれる小売り店へと出かけ。呑気に写真と呼ばれる物が沢山張られた書物を立ち読みしたり。桃源郷にはないスイーツやドリンクを品定めをして、ショッピングを楽しんで部屋へと戻ってきたわけですからね……。もしも本当にお父さまの容態が悪いのならばわらわも、部屋に残り沈んだ顔で俯いていたはずですから」と。

 ライザ伯母上さまは更に姉上へと、だけではないようだね?

 この部屋にいるお母さまも含めた、自身の妹達や主様……。

 そしてリムと姉上、爺やも含めた。

 この部屋にいる者達へと。

 長女のラフィーネ伯母上さまらしい、ゆるりとした物言いで。

 みんなへと説明をすれば。

「そうだった。そうだったよ……。姉上に質問、訊ねれば。父上の容態がどんな感じなのか、分る事をすっかり忘れていたよ。あっ、ははは」と。

 ライザ伯母上さまが大きな赤ちゃんになる行為をやめて、お母さまの胸から顔を上げ、満身の笑みを浮かべつつ告げればね。

「そうでしたね。ラフィーネ姉様が他人に死期が近ければ直ぐに分ることを。わたくしも気が動転していたので。すっかりと忘れていましたよ」

 ルミエル叔母上さまが、ライザ伯母上さまの言葉に続くように。

 自身の涙をハンカチでしおらしく拭きつつ。

 パパの胸から顔を上げ──。

 パパから離れつつ言葉を漏らすと。

「わらわもすっかり忘れていましたね。ラフィーネ姉さまに。他人の死期が間直に迫るとわかる能力があることを」と。

 今度は母上が、自身の両目を大きく開け。

『そうだった』と言った顔をしながら言葉を漏らせば。

「……だからみんな、笑顔でいましょう……。多分、そろそろ、お父さまの目が開くと思うから。その時に、この部屋にいる者達みんなが、悲しく、切ない顔をしていると。お父さまもびっくりして悲しくなるのと。もしかして自分の病は大変に重いものかも知れないと。誤解をしたら大変だから。もうみんな暗く、悲しい顔をやめましょう。ねぇ」と。

 ラフィーネ伯母上さまが明るく、でも最後には少女のように可愛く。

 この場にいる者達へと女神の微笑みを投げかけながら叱咤激励……。

 だからリムを含めたこの病室へといる者達は。

「そうだ」

「そうですわね」

「もう暗く落ち込む行為はやめましょう」と

 ライザ伯母上さまへ、ルミエル叔母上さま、母上の順に呟けば。

「ラフィーネ、俺にも何か飲み物をおくれ」と。

 パパが明るく、ラフィーネ伯母上さまへと。

 コンビニで購入した飲み物をくれと嘆願をすれば。

 ライザ伯母上さまは、「はい、陛下」と。

 自身の主へと冷たいコーヒーを手渡した。

 でっ、その後は、リムや姉上、お母さまや母上、ライザ伯母上さまにルミエル叔母上へとコンビニスーツを手渡してくれた。

 でっ、最後に爺やの目の前に移動をすれば。

「爺、お疲れさま」と。

 ラフィーネ伯母上は労いの言葉をかけつつ。

  爺やへとパパと同じ冷たいコーヒーと何故か、アンマンを手渡すから。

(何で爺やはアンマンなのだろうか?)と。

 リムは自身の脳裏で思案をしつつ。

(もしかして爺やって、この世界のアンマンが好きなのかな?)とも。

 リムは思いつつ。

 今度爺やに訊ねてみようかな? と思いながら。

 ラフィーネ伯母上さまから頂いたコンビニスーツを美味しくいただくのだった。

 ◇◇◇

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