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司法予備試験・司法試験論文      独学・初学者向け

始めまして。司法試験受験生のTと申します。
 今回は、司法試験及び予備試験にも通じる「論文」って最初は何を意識して書けばいいの?という情報に絞ってお伝えできればと思います。合格してない人が何を言うのかと思われるかもしれませんが、私は以下の事を意識してから1か月近くで論文模試や、添削で高い評価を頂くことができましたので、是非お付き合いください。

 1:「法的三段論法」ではなく「IRAC」を意識せよ
 まず初めに、皆さんは法律文書を書くときは法的三段論法を意識しろ、と習ったり聞いたりすることが多いと思います。しかし、私はこれは正解でもあり、司法試験合格という視点に立てば間違えでもあると考えています。
 以下:例を示します。
甲はVを殴打し、気絶させた。甲には何罪が成立するか?

とても簡単です。傷害罪ですね。
ではこの問題を法的三段論法的に、読み解いてみましょう。
 
「法的三段論法」ver.
大前提:刑法204条は「人の体を傷害した者は、15年以下の懲役または~」としている。
小前提:甲はVという「人」を殴打して気絶させたから、「人を傷害した」にあたる。
結論:よって甲には傷害罪が成立する。

テキストや問題集で説明される、法的三段論法とは大体このように、大前提・小前提・結論の構造をとっていると思います。しかし、はあなるほどとはなっても、実際の論文の回答、しかも優秀答案等でこのまんま、つまり一切の事実関係に触れることなく、条文即出しからの規範定立もなくただ坦々と条文に当てはめているだけの回答を見たことは、私はありません。部分的にそうなってはいても、必ずもう少し複雑な構造が採用されていると思います。
 つまり、皆さんが最初に持たされる法的三段論法という考え方は、実は論文を書くにはまったくもって不十分な武器なのです。これを意識することなく無理に法的三段論法に落とし込み、構造がめちゃくちゃになる答案や、事実関係を上手く評価できない答案、不必要な情報を足してしまう(学説等)答案、もはや三段論法を捨ててしまう回答が続出しています。そして、評価が得られず心が折れてしまう、そういう人が良くいるなと肌感覚で感じております。
 では、何をすればよいのか?結論は「IRAC」を意識せよとなります。
 
「IRAC」とは何か?
IRACとは、実際に法律文書を作成するための「型」いうなれば、法的三段論法をより実践的・実務的な方向に進化させた新しい武器と言えます。
 このIRACの実際的・実務的なところは何かと言われると、従来の法的三段論法それ自体の前提となっていた、「I」の部分を意識化したことにあると私は思います。つまりどういうことか?以下、例を示しながら、説明します。
  
 問:甲はVを殴打して気絶させた。甲の罪責を述べよ。

I:甲がVを殴打して気絶させた行為につき、傷害罪(刑法204条)が成立しないか?まず、本件行為が「傷害」にあたるかが問題となる。
R:その点、傷害罪は人の身体の安全を保護法益にするところ
 「傷害」とは人の生理的機能を害したといえる場合にあたる。
A:そこで本件を見るに、甲はVを殴打して、気絶という平常時の生理的機能が害された結果を招来しており、甲の行為は「傷害」にあたる。
C:よって、甲の行為は「傷害」である。

上記した、部分はあくまで、実行行為に留めましたが、重要なのは典型的な三段論法の説明では取り込まれることの無い、「~した行為につき」という問題文の事実関係を内包しながら、(I)問題提起をすることができる点にあります。
 明らかに、こちらの「型」の方が事実関係を落とし込んでおり、法律答案としての精度があがっている感じがするかと思います。上記のような単純な事例では、まだ大きな差は開くことはありませんが、本番の試験で牧歌的法的三段論法の型で回答してしまった際にどれほどの事実関係を取りこぼすか考えると実感がさらに増すと思います。
 このように、「IRAC」は答案の事実関係を拾いながら、従来の三段論法では直観的、感覚的に感じていた「問題点」を型自体に落とし込むことができます。このような答案を書くことを意識すれば、従来の法的三段論法のみで戦おうとしている受験生から一歩抜きん出ることは確実ですし、実際に評価は上がります。

まとめ
 まず、この記事では、法的三段論法ではなく「IRAC」こそ真に意識されるべき論文の武器であることを示しました。予備校や基本書テキストで示される、牧歌的法的三段論法がそもそも、条文から始まるあたり、どれほど武器として脆弱であるかを感じていただければ幸いです。(条文はもちろんとてもとても大切です。)
 そこで、次回の記事では、「IRAC」につき、より詳細に(問題提起・条文の使い方・規範定立のやり方)説明しようと思うので、ぜひお待ちください。それでは失礼致します。以上
「T」








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