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血圧の認知症の関係

血圧と認知症は関係しているのか?
「結論から言います」というフレーズは個人的には正直あまり好きではないのですが(みんな判を押したようにそればっかりというか…)、血圧は認知症と関係しているのか?という問いに対する結論は「現状なんとも言えない」です。この曖昧な解の背景としては、研究や認知症の種類によって結果が異なっている、という事情があります。

アルツハイマー型認知症と血圧の関係は?
まず、アルツハイマー型認知症の場合。
日本で行われた久山町研究という有名な研究では、高血圧とアルツハイマー病の関連は見えませんでした。アメリカの多くの研究でも同様で、「高血圧とアルツハイマー型認知症は関連がなかった」という結果でした。

しかし、中国やフィンランドからの報告では、高血圧はアルツハイマー型認知症と関係していた、とあります。
また、「1日の中で血圧の変動が大きい」ということがアルツハイマー型認知症の発症と関係している、という研究結果もあります1)。

血管性認知症と血圧の関係は?
では血管性認知症は?「中年のときに高血圧であることが、血管性認知症が起こるリスクになる」というのは、日本の研究でも海外の研究でも出ています2,3)。
血管性認知症のおもな原因は、脳卒中をくり返すことです。脳卒中が起こる主な原因は動脈硬化です。そして、動脈硬化の原因のひとつとして高血圧があります。
つまり、全てではないものの、血管性認知症の原因をさかのぼっていくと高血圧があります。ですので、血管性認知症と高血圧は関連があるというのは、現時点ではたしからしいといえます。

高血圧の治療は大切
でも高齢になったら「血圧低すぎ」問題もありうる
高血圧の治療が認知症を予防する、と明確に言えるほどのエビデンスはありません。それでも、血圧を下げる薬を飲むことが認知症になる確率を下げたという研究は世界で多く報告されています。
カルシウム拮抗薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)といった日本で多く使用されている薬が認知症の発症を抑えたり、そのメカニズムはたくさん研究されているのです。

一方で、血圧低すぎで認知症のリスクが上がるという研究があるのは興味深いです。中年から高血圧を薬で治療してきた方が、高齢になって血圧が下がった状態になったすぐあとに認知症になったことを報告した研究があります4)。
高齢者では、低血圧(目標を大きく下回るような低い血圧の状態)になると、脳血流量が少なくなることで認知症がもたらされる可能性を示唆したものもあります2)。
もちろん、高血圧は心臓病などを引き起こす原因として治療することが大切です。「血圧を下げ過ぎると高齢になってから認知症になるリスクが上がることもあり得る」ことを考慮した上で、高血圧を治療したいですね!

1)Oishi et al. Circulation. 2017 ;136(6):516-525.
2)Qui C et al.Lancet Neurol. 2005 4(8):487-99.
3)Ninomiya T Hypertension. 2011 58(1):22-8.
4)Joas E et al.Hypertension. 2012 (4):796-801.

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