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父と映画とアイスクリーム

つい先日も映画を見た。

映画館で見るのも好きだが、今でもわたしは自宅の決して大きくないテレビでレンタルしたDVDを見るのが好きだ。

大切な思い出と、小さな幸福が自宅映画には詰まっている。

わたしは、田舎の出身で映画館は隣町にしかなかった。
小学生の頃に初めていった映画館は昭和の雰囲気が漂う、名もなき町の映画館だった。

そのため、週末は父の車でレンタルビデオショップに行くのが恒例で映画は自宅で見ることが主だった。

ずらっと並ぶVHS。

「好きなのもっといで」の言葉を合図に父と離れ、小学生ながらパッケージを物色し裏面のあらすじを凝視して、これと決めた1本を父に渡す。

時に色気が強すぎるものを選んでしまい、父が母に怒られているのも可笑しいやら恥ずかしいやら変な気持ちになったのを思い出す。

父が洋画を好んで見る影響もあり、わたしも大抵は洋画を借りた。

VHSをレンタルすると店員さんが青いバッグに入れてくれる。
わたしは青いバッグをほくほく大事に抱えて車へ戻る。

駐車場にセブンティーンアイスの自動販売機があって、おまけに買ってもらえるのも嬉しかった。
映画館でポップコーンがセットのように、レンタル映画とセブンティーンアイスはセットなのだ。
ボトンと落ちてきた歯磨き粉味の冷たいアイスクリーム取り出し、助手席で味わいながら自宅へ帰る。

記憶に残る映画は『ジョー・ブラックによろしく』
ブラット・ピットが格好いいのは小学生にも分かった。

一人暮らしを始めても、自転車で近くのレンタル屋に走る。
結婚してからも、週末は夜の散歩を兼ねて夫とレンタル屋に行く。

映画を見て、泣いたり、笑ったり、緊迫したり、温かい気持ちになったり、映画の世界に憧れたりと約2時間は、わたしの心を動かす。

わたしにとって、小さな幸福のひとつが自宅映画だ。

最近、近所のレンタル屋が閉店してしまった。

いよいよサブスクか・・寂しいなと思いながら、あまり思い出のない、父との大切な日々を思い出した。

#映画にまつわる思い出