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絵本探究ゼミ第3期 第1回講座振り返り

⒈ 絵本ゼミ受講の動機と半年後の目標

 竹内美紀先生によるインフィニティアカデミアの絵本探究ゼミ(ミッキーゼミ)は、昨年オンライン開講され、今回3期で初めて受講となりました。1期より受講意欲はあったものの、家庭事情や小樽の絵本・児童文学研究センターの基礎講座を修了したいという思いから遠慮していました。
 しかしながら、ミッキー先生から直に学ぶことができる機会が貴重であることに気づき、「今しかない」と一念発起しました。数々の学びの場は受動的であることが多く、得た知識が還元できておらず消化不良なモヤモヤ感があります。毎回のゼミで自らの考えを拙いながらもきちんと言語化し、自分の軸を揺るぎないものにすることを第一の目標とします。

 第二の目標の前に、私事ですが・・・絵本や児童文学とは全く異なる業界で20数年会社員をしていました。両親に支えられて(頼り切って)、仕事と家庭と育児を必死で回していましたが、コロナ禍で全てが立ち行かなくなりました。ステイホームで子ども達と生活する中、ミッキー先生が代表であるオンライン絵本会と出会い、絵本の魅力に虜となりました。そして、これからの人生は、「私にとってかけがえのないものを優先し、大切にしていきたい」という思いに行き着きました。さらに、組織のためではなく、未来を担う子ども達のために尽くしていきたいと思いが強くなり、キャリアと肩書という会社員にとっての重しを手放すことを決めました。

 迷っている時期に始めた司書の勉強が、資格取得によってご縁が繋がり、現在は学校司書の仕事をしています。学校司書は大抵各校に一人です。毎年決められた予算の中から、読書支援や授業支援のための図書を選書します。購入するかどうかの最終決定は館長である学校長の権限とはいえ、自分の選書が子ども達が出会う本として最良であるのかどうか、読書環境に影響を与えてしまうのではないか、という一抹の不安があります。したがって、絵本ゼミで体系立てられた理論を自分のものにすることによって、自信を持って選書できるようになることを第二の目標とします。 
 
 ここまで書いたものを読み返すと、とても硬い決意表明のように見えますが、簡単にいえば、「ご縁あって共に学ぶことができる方々から刺激をいただきながら、大好きな絵本をじっくりと探究し、自分自身の軸をしっかりと固めていこう」というポジティブな表明です。どんな出会いが待ってるか想像して胸が高まります。 

 リフレクションを書くのは正直得意ではないです。これも言語化のトレーニングと考えています。ミッキー先生が講義で、「学びは意識しないと定着しない。自分の目的を作り、得た知識を自分の目的に取り込む。リフレクションは、整理して自分の引き出しに入れること、それによって必要な時にアウトプットできる。」とおっしゃいました。いままでの学びの場は気づきの場ではあったものの、自分の目的と照らし合わせるという習慣がなかったように思います。目的を常に頭に置き、毎回の講義から得たものを、私の中でどうやって活かせるかを意識していきたいと思います。それによって、目的自体も変化・進化していくものなのかもしれません。

⒉ チームでの自己紹介

 絵本探究ゼミでは、ミッキー先生の講義だけでなく、チームでの活動を通じて学びを深め合います。私の所属するチームは good luckチーム4 です。FAくぼちゃんが、チーム全員のコメントから丁寧にキーワードを抜き出し、四葉の花言葉から命名してくれました。くぼちゃんのお人柄によって、講座前から温かな空気が流れる心地よいチームです。

 チーム毎の自己紹介のお題は「おすすめ絵本を1冊紹介」でした。ブックトークだけではなく、この本をなぜ選んだのかを言語化することが目的です。私が選んだのはこちらの絵本です。

『たべるたべるたべること』

『たべるたべるたべること』
くすのりしげのり・作
小渕もも・絵
おむすび舎 2020年2月

 「たべること」は、たのしむこと、いわうこと、いのち育むこと。
主人公の女の子の毎日は、いろんな「たべること」で、できています。
そして、たべることにはたくさんの大切な意味があります。女の子の成長を数々の場面を通じて見つめる作品です。
 この本に出会ったとき、「私が作ったもので子どもの体を作られているのだ」とか「子どもと食べているときは何よりも幸せな時だな」とか、わが子のことが頭をよぎり、ただ食べるだけでなく、楽しい食卓、家族がそこにいて笑顔があることが、私にとって何より大切なのだと気づきました。

 今回チームメンバーに紹介したかったのは、私が大切にしていることが全て詰まっている作品だというのが理由なのですが、どうもそこまで言語化できてなかったように思います。(反省)

 チームメンバーが紹介してくださった絵本は、それぞれの想いが溢れていてどれも素敵でした。知っている絵本でも、私が見ていない(気づいていない)角度から洞察されていて、新しい感覚を得たことが驚きでした。 

『たんぽぽ』

 のりちゃんが大切にしているのは「センスオブワンダー」です。
動画にて、簡潔明瞭に説明されているのが流石です。内容についてもとても共感しました。久しぶりにレイチェル・カーソンも読み返したくなりました。

『いっぽんの鉛筆のむこうに』

 おぶちゃんの「世の中は私たちの見えないところで成り立っている」の視点が、この作品から得られたことは新たな気づきでした。

『雨ニモマケズ』

 ぱたぽんさんは「(雨ニモマケズは数多く出版されているが)たくさんの作品の中から自分の感性に合うものを選べばいい」とこの作品に出会って気づいたとおっしゃっていました。柚木沙弥郎さんの独特な絵が、賢治の世界観の印象を今までとは違ったものに映し出しているように私には感じました。


『かんけり』

 おこちゃんのお話を聞いて、「自分にとってのかんは何だろう?」と考えさせられました。

『ぺんぎん ぺんぎん ドボン ドボン』

 まきちゃんの「幸せは日々の生活の中にある」は、私もコロナを経て大切にしていることです。

『はしれ!チビ電』

くぼちゃんの「みんなが集まって知恵や力を出し合えば素晴らしいものができる」というgood luckチーム4 への意気込みを感じました。

⒊ チームでの目標

 みなさんの絵本紹介を通して共通していたのは、
「自分の世界を、新しい世界を広げたい」ということ、
それから、
「当たり前の日常の中にこそ大切なことがある」ということでした。

 それらを共有し、おこちゃんが紹介してくれた『かんけり』のように、
「それぞれの目標に向かって、半年後には自分の「かん」を 蹴っている姿を想像しよう。」そして、「チームとしての大きな「かん」を層雲峡で笑顔で一緒に蹴ることができたらいいね。」というように纏まりました。

⒋ 3期のテーマ 「絵本賞と受賞作品」

 ミッキー先生の講義に戻り、3期のテーマが改めて発表されました。

テーマは 「絵本賞と受賞作品」

絵本の目利きをしていく上で参考になるのが絵本の賞ということで、
次の賞について順次学んでいくことになります。

①コールデコット賞(アメリカ)
②グリーナウェイ賞(イギリス)
③国際アンデルセン賞
④その他の絵本賞

 今回は第一回ということで、コールデコット賞について学びました。小樽の絵本・児童文学研究センター(32期)の基礎講座にてヨーロッパの近代絵本史について学びました。一昨年、軽井沢絵本の森美術館を訪れた際、企画展でコールデコット展を観たこと、吉田信一文庫があったことも忘れていました。ミッキーゼミで学ぶうちに、なかなか出来上がらないパズルのピースを見つけて合わせることができるかもしれないとの期待感が膨らみます。
 今回の講義内容と講義で紹介された文献、過去に学んだこと、自分で調べた内容を含めてここで整理します。

印刷技術の発明と発展

 子どもの本の歴史は印刷技術の発展と密接に結びついている。15世紀半ば、ドイツのグーテンベルク(Johannes Gensfleisch zur Laden zum Gutenberg 1398-1468)による「活版印刷」の発明によって、大量印刷が可能になり、情報をより速く伝達できるようになった。活版印刷以前は、手書きの写本が制作されていた。初期の印刷手法は木版を使用し、挿絵と本文を紙面の上で移し替え、印刷しない部分を切り取り、浮き上がった表面にインクを付けて紙に押し付け、原版とは逆の面を印刷する「凸版印刷」であった。

 18世紀後半には、トマス・ビューイック(Thomas Bewick 1753-1823)は安価で簡単に印刷できる木口木版を普及させた。活字と同じ凸版であるため、挿絵と本文を同じページに印刷できるという利点があった。19世紀に入ると、リトグラフによる石板刷りができるようになった。19世紀中頃、木版彫版師エドマンド・エヴァンズ(Edmond Evance 1826-1905)は印刷技術の向上に尽力した。手彩色や多色石板刷り印刷から木版4色刷り印刷へと取って変わられたことによって、「トイ・ブック」と呼ばれる絵本のシリーズが全盛期を迎える。「トイ・ブック」は安価ながらそれまでの子どもの本より大判で、1作1話で、紙の片面のみにカラーで絵柄が印刷された画期的な形式によるもので、フレデリック・ウォーン社など多くの出版社から多数刊行され、爆発的な人気を得た。

英国絵本の黄金時代

 前述のエヴァンズは、才能ある人材を発掘し、絵本作家として世に送り出していき、質の高い芸術的な絵本の普及を可能にした。エヴァンズと3人は英国絵本の黄金時代を築き、後のアーツ・アンド・クラフツ運動を導く働きを成した。また、海外でも彼らの影響を大きく受けた絵本作家がいたようだ。

 ◾️ウォルター・クレイン(Walter Crane 1845-1915)
  英国リヴァプール生まれ。父親は肖像画家のトーマス・クレイン。
  13歳で当時ロンドン最大の製版所であったリントンの工場へ見習として
  入る。17歳で独立。浮世絵の技法をトイ・ブックスに活かして流行を生
  み出した。
 
 ◾️ランドルフ・コルデコット(Randolf Caldecott 1846-1886)
  英国チェスター州生まれ。20代後半から本格的に絵の修行を始め、風刺
  画から物語詩まで、彼の作品は多彩である。40年の短い生涯で、エヴァ
  ンズとの合作としてマザーグース絵本など多くの作品を残した。彼の手
  法は、ビアトリクス・ポター、エドワード・アーディゾーニ、アメリカ 
  ではモーリス・センダックらに大きな影響を与えた。

 ◾️ケイト・グリーナウェイ(Kate Greenaway 1846-1901)
  ロンドンで生まれ。父親は有能な木版師であったが仕事運に恵まれず、
  母親は家計を助けるために婦人物の店を開いていた。13歳でフィンスベ
  リー美術学校に入学、6年間在学の後、1873年独立するまでに、サウス
  ケンジントン国立美術学校などで最先端の美術教育とを体験した。独立
  後は、グリーティングカードのイラストなどをしていたが、父親の友人
  であったエドマンド・エヴァンスに支えられて、1879年「窓の下」を出
  版、繊細なイラストが評判を呼んだ。

コールデコット賞とは

 アメリカ図書館協会の下部組織、児童図書館協会(ALSC)が、アメリカでその年に出版された最も優れた子ども向け絵本に毎年与えられている賞である。アメリカでは、ニューベリー賞と並んで児童図書に与えられる最も権威ある賞である。

定義(一部抜粋)
1。「子どもの絵本」は、他のイラスト付きの本とは異なり、本質的に視覚体験を子どもに提供するものです。絵本には、本を構成する一連の写真を通じて展開される、ストーリーライン、テーマ、またはコンセプトの集合的な統一性があります。

2。「子ども向け絵本」とは、子どもを潜在的な読者として想定したものです。この本は、子供たちの理解、能力、感謝に対する敬意を表しています。子供は 14 歳までの年齢の人として定義され、この全年齢範囲の絵本が考慮されます。

3。「最も優れた」子ども向け絵本とは 
 1. 大きな功績を残したとして知られている
 2. 優れた品質
 3. 顕著な卓越性
 4. 個々に異なる
 

ALSCのホームページより抜粋し、Deeplによる翻訳
https://www.ala.org/alsc/awardsgrants/bookmedia/caldecott

 第一回の受賞は、1938年『聖書の動物たち』(Animals of the Bible, A Picture Book)、ドロシー・ラスロップ(Dorothy P, Lathrop 1891-1980)である。

 コールデコット賞のメダルは、1937年にルネ・ポール・チェバレン(Rene Paul Chambellan 1893-1955)によってデザインされたもので、表面は『ジョン・キルピンの愉快なお話』(ほるぷ社 1982年)に描いた、ギルピン氏が暴走する馬に跨っているイラストが採用されている。また、裏面は『6ペンスの歌を歌おう』(日本エディタースクール出版部 1999年)のイラストが採用されている。なお、コールデコット・オナーと呼ばれる賞もあり、次点の候補者たちに毎年授けられている。

 

参考文献

・『ベーシック絵本入門』生田美秋/石井光恵/藤本朝巳【編著】
  ミネルヴァ書房  2013年  (7-12p) 
・『絵本Book END 2019』絵本学会 2019年8月 (4-5p)
・ 児童図書館協会(ALSC)

・ 国際子ども図書館「絵本ギャラリー 絵本は舞台」

 


5.第一回講義を経て

実際行ったこと

 講義内で紹介された参考文献について、公共図書館で借りてきました。とても全部は読み込めていないのでこれから熟読したいのと、気になるものについては中古本を手配しました。

 それから、コールデコット賞・オナー賞受賞作で、邦訳されている作品の内、知らない作品も多数ありましたし、再度読み返したい作品もありました。取り急ぎ、すぐ借りられるものは図書館で手配し、自宅にあるものと合わせて読み、コールデコット賞の定義と比較しながら考察を深めていきたいです。また、我が家には観察対象(次男)がいるため、実際に一緒に楽しみながら読み聞かせし、彼の反応等も観察したいと思います。

今後行いたいこと

 私の考察はまだまだ浅く、気づけていないことが多数あるはずです。他の方のリフレクションを拝読することで、様々な角度から知り得ることがたくさんあるでしょう。したがって、チームメンバーとの復習会でも、素朴な疑問や意見を積極的に投げかけていきたいと思います。
 知らないことが多すぎて、自分の知識と経験の量の少なさに辟易する第一回でした。ただ、無知を認めたことが私のファーストステップです。オセロのように「無知」を「既知」に変えられる伸び代がある!と前向きに捉え、受動的ではなく能動的に動いていきたいと思います。
 そして、来週の図書の授業で、コールデコット賞受賞作を読み聞かせします!先人が生み出し、守り、引き継いできたものを、私の手からいま目の前にいる子ども達へ引き継いでいくことが使命であると強く感じています。

6. 第二回までの課題

① コールデコット賞受賞作品から1冊選ぶ。
  なぜその本を選んだのか?どこに惹かれたのか?
  なぜその本が、その年のコールデコット賞を受賞したのか?
  受賞要件、各国絵本の特徴、時代背景について考えてみる。

②絵本の賞について調べたり、考えたりしてみる(3期共通テーマ)
  絵本の賞にはどんなものがあるか?
  絵本の賞は何のためにあるのか?
  絵本の賞には、どんなメリットがあるのか?選書にどう役立つか?




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