ボールにプレッシャーをかけない守備はアリかナシか

守備の小話。

いろんな試合をちょこちょこ見ていると、守備側が全くボールにプレッシャーに行かないシーンを見かけることがある。
最近これを多く見かけるようになった気がする。

守備に穴を開けた状態で奪いに行ってその穴を使われるのが嫌だから、ってのは分かる。
でももしそのボールプレッシャーゼロ現象がやたらと増えているのだとするなら、おそらくその「無闇に奪いに行かずに、まずは整えてから出よう」を大事にしすぎている傾向があるのかもしれない。

ただそんなシーンを見て思うのが「今のそれって本当に安全なの?」ということ。

攻撃2対1守備で攻撃側がパス回ししている状態で考えてみる。
ボールを持っている攻撃Aとボールを持っていない攻撃B。
「マークしろ!」って教わったばかりのちびっ子なんかは、ボールほったらかしでBにマークについたりする。
ではそのBがマークされている状態でAからBへのパスは通るのかどうか。
通る。
なぜならAは自由なタイミングでパスを出すことができ、Bがマークを外した瞬間にパスを合わせればいいから。
そう。ボールにプレッシャーが無いと、Aつまりボールホルダーのタイミングでボールを蹴られることになってしまう。
そうなるとBつまり受け手は何度でも動き直して守備の隙を作る時間を得ることになる。
そしてボールホルダーはゆっくりと最善の手を考えることができ、より良い状態でボールを放つことができる。
受け手のミスしたところを奪う作戦でも良いが、プレッシャーの無い状態から放たれたボールでは、ミスの期待値も低いところ。
これはセットプレーは攻撃側が必ず先手で動けるという話でもある。

ボールプレッシャーゼロっていうのはそれだけ危なっかしい行為。
「じゃあ守備に穴開けてでもボールに行った方がいいな!」っていうのもまた違う。
その「0か100か」みたいな思考が間違い。
おそらくその思考ゆえにボールプレッシャーゼロ現象がよく見られるようになったのだと思う。

「ボールにプレッシャーをかける」っていうと全速力で突っ込むことを想像する人がいる。
でもそれは違う。
全速力で突っ込むことが効果的な時もあるが、攻撃側が状態が整っているところに守備が単騎で突っ込むようなことをすれば、普通に入れ替わられて置き去りにされちゃうだけ。
そして「ボールにプレッシャー」=「前から取りに行く」、でもない。
引いた守備でもボールにプレッシャーが必要。
ボールにプレッシャーをかけるには、「ジワジワ寄る」ことでも十分。
要は、攻撃側に「ゆっくり持ってられないな」と思わせられるかがポイント。
攻撃側が蹴りたいタイミングで蹴る、にさせるのではなく、攻撃側がしょうがないからそのタイミングで蹴る、にさせること。
そして「ジワジワ寄る」のスピードでプレッシャーをかけると、方向転換も容易にできる。
つまりボールが出た先にアタックしやすくなる。
ここでも「0か100か」じゃないことが大事になる。

「パスの出しどころがなくなる」っていうのも確かにボールにプレッシャーがかかっている。
だから先に守備を整えてから、というのも分かる。
けど、先ほどの2対1の例のように、守備を整えることのみをやっていると、攻撃側がもっと整ってしまう。
だからやっぱり「0か100か」じゃない。
ボールにプレッシャーをかけつつも守備を整える、という同時進行が必要になる。
この同時進行は、状況によって優先順位の濃淡が出てくる。
DFラインがスカスカだったら?ボールプレッシャーよりもまずはDFラインを整えることを最優先にしても良いかもしれない。
ボールを奪われたけどボールホルダーがモタついている?だったらプレッシャーかけて、ボール周りから整えることをやっても良いかもしれない。
そう。
この「今どこまで何を優先する?」という優先順位の濃淡こそ、チーム戦術で優先順位を整理したり、選手のセンスを出したり、とサッカーの面白さである判断の要素がある部分。
「何かだけやる」という「0か100か」ではこの面白さは味わえない。

タイトルの『ボールにプレッシャーをかけない守備はアリかナシか』の結果をいうなら、「ナシ」になる。
けど優先順位の話の通り、それが必要な時ももちろんある。
「ボールにプレッシャーがかかっていないとボールの動きが攻撃側タイミングになる」という原理を抑えた上でその時々の最適解を選択できるようになると、守備はもっと楽しくなるかもね。

まあプレーヤーとしてじゃなくて観客としては、ボールにプレッシャーがないと試合スピード落ちてつまらないから、とりあえずプレッシャーは最低限かけてくれ!


以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?