逆ポケクロス

トレンドと言って良いのか、昨今よく見かけるプレーで、これを狙うことはとても効果的というプレーがあるのでご紹介。


■ポケットとベルト

まず名称の説明。

この画像のようにピッチを縦に5つに分けて、サイドとセンターの間の部分をハーフスペース(HS)と言う。

ペナルティーエリア内のそのHSに該当する部分(画像の黄エリア)を『ポケット』と言う。
(ちなみにCBとSBの間はチャンネル)

このポケットからのラストパスなどのプレーはゴール期待値が高いため、「ポケットにどう侵入するか」をチームでデザインしているところも多いと思う。
それだけ相手も侵入させないように必死になるエリアとも言えるが。

それと、ポケットと言うかペナルティエリア(PA)の高さの前にある赤いエリアに名前が無いと不便なので、勝手に『ベルト』と名付けることにした。

ポケットの語源はわからないが、ズボンのポケットからきていると想定して、ポケットに手を入れる前に通る場所としてベルト。
(名称をご存知の方がいらっしゃったら教えてください)

さらに赤字が見辛いが、勝手にサイドベルト、ハーフベルト、センターベルト、と当てはめてみた。


■題名の逆ポケクロスとは何?

ハーフベルトから逆ポケットへのクロス、略して逆ポケクロスと仮に命名。
(しっくりくる名前が他にあればそれでよいです)

赤エリアから黄エリアへのクロス。
バルセロナ好きなら、メッシ→アルバで何度も見たことがあるはずのプレー。


■逆ポケクロスの何が良いのか

例えば図のようにサイドベルトからハーフベルトにボールを動かした時、ハーフベルトがシュートもあり得る危険なエリアであるため、相手DFの矢印(視線、体の向き、重心)が強くボールに集まる。

また、相手DFはハーフベルトにボールがあるときにPA内深くに最終ラインを下げると、PAに侵入される可能性が高くなるし、ミドルシュートを打たれやすくなるにも関わらずGKの邪魔にもなってしまうので、PAのライン上ぐらいに最終ラインを設定するしかない。

さらに逆サイドの相手SBはゴールへの最短距離である中央からの突破への対応を優先しなければならないため、サイドレーンの相手を捕まえることよりも、中寄りでスペースを潰すことを優先することが多い。

そして相手GKもシュートの可能性をほったらかして逆ポケットへの対応を優先するわけにはいかない。

つまり、ハーフベルトにボールがあるときは相手DFとしては逆ポケットへすぐに対応がしづらい状況とも言える。


そこに勢いよく相手DFの背後から走り込んだ味方に逆ポケクロス。

相手DFはマークとボールを同一視できない状況で背走しながらの対応を余儀なくされ、しかも相手はゴールに向かって勢いよく走ってくるし、サイドレーンからのクロスと違って滞空時間の短いボールなので、状況を整理したり態勢を立て直したりする時間が少ない。

そして走り込んだ味方がボールに触る位置は、あのゴール期待値の高いポケット。
ここからのシュートも危険だが、ここから折り返してのアシストもある。

相手DFは体の向きを180度変えて自ゴールへ戻りながらの短い時間で、シュートブロックなのか、ゴール前の相手をマークするのか、危険なゾーンを埋めるのか瞬時に判断して実行できなければ間に合わない。
DF同士の連携も難しく、きっとパニック。

こんな状態を作り出すことが可能なプレーが、逆ポケクロス。


■そんなに良いなら、みんなやれば良いじゃないか

これはどんなチームがやっても効果的なのか、といえばそうでもない。

① ハーフベルトでボールを持つ選手は、そこからのシュートや突破をある程度相手に恐れさせることができる能力を持っている必要がある。
それが無ければ相手の矢印を集めることは難しいかもしれない。

② ハーフベルトでボールを持つ選手は、相手の矢印を見極め、逆ポケットへタイミングよく正確で素早いクロスを合わせられる能力が必要。
相手にバレているクロスや対応の簡単なクロスでは意味がない。

③ ポケットでクロスを受ける選手は、相手のマークを振り切り、走りながらその正確で素早いクロスをコントロールできる能力が必要。
クロスをダイレでプレーしたり、状況に応じてトラップしたり、そんなことをクロスの落下地点にマークを振り切るスピードで入っていきながら出来なくては意味がない。
逆ポケットで競り合うのは相手のSB=空中戦がCBほど強くない=になりがちなので、ヘディングの強い選手であればそれでも良い。

④ そもそもハーフベルトで逆ポケクロスが効果的な状況をチームで作れる。
これが出来なければ実行も何もない。
ハーフベルトでボールを持つことすら出来ないのなら、まずはチャンスメイク以外のプレーを改善した方がいい。

といった条件は必要になってくると思う。
また、相手がPA内深くから出てこないで守っている、などの状況では強みが出せないプレーでもあるので、自分達が正確にプレーできるとしても相手によっては使えない。


■インスイングとアウトスイング

そんな逆ポケクロス。上記では全てインスイング(ゴール方向に向かっていくカーブのボール)での説明になってしまったが、じゃあアウトスイング(ゴールから離れていく…)はどうなのか、というお話。

結論から言えばアウトスイングでも問題ない。が、オススメはインスイング。


インスイングで行う場合
・対面の相手から遠い方の足でボールを保持できる。
・逆ポケットに出す体の向きではセンターに入れる横方向のパスやシュートを匂わすことができ、相手のポケットへの警戒を薄くさせることができる。
・クロスを上げたい角度に相手が立つことはあまりないので、相手に引っかからずにクロスを上げやすい。


アウトスイングで行う場合
・前方にスペースがないと、近くの相手DFにクロスが当たってしまう恐れがある。
・体の向きを若干同サイドにいる味方へ向けることで、そこへのパスを囮にして矢印を集めやすい。
・受け手が走る方向の正面に向かって飛んでくるボールなので、ヘディングの威力は出しやすそうだが受け手としては点で合わせなければいけない難しさがある。


■それらを踏まえて、ベストなやり方は?

相手DFラインが上がるタイミングで入れ替わるようにポケットに侵入したいので、まずはサイドで深く行って相手DFラインを下げる

ハーフベルトに入れる位置に配置したインスイングで強いシュートも良いクロスも蹴れる選手にバックパス

細かいドリブルをして横方向のパスを匂わせながら、逆サイドでこっそり逆ポケットに走り始めた選手へのタイミングをはかる

逆ポケクロス!

相手がDFラインを上げるときにオフサイドポジションに取り残された味方FWにダイレで落としてゴール!

なんて上手くいったら素敵かもね。
逆ポケクロスはカウンター時でも有効なはず。
そしてDFの気持ちで言ったら、多少精度が低くても、やられたら嫌なプレーなのは間違いない。
条件やら状況やらあんまり気にせずに狙っていってもいいかも?



最後に、「これだ!」というほどの動画は見つからなかったけど、参考にいくつかの動画を。



スターリングのクロスはサイドレーンからだけど、逆ポケクロスに近いかも。キック力があるから同じような効果。



終わり


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