選手を売るか、指導を売るか

下にあるスカウトについての記事を読んでふと思ったこと。

何を売っているのか。
商材は何か。
ここの捉え方がそもそも日本は独特なのでは、というお話。
タイトルがほぼネタバレなので、それで想像がつく方は本記事は読まないで、スカウトの記事だけでもご覧になってくださいませ。面白かったよ。


本記事の本題。

『選手』を売ってるのか。
『指導』を売ってるのか。
どちらを商材として扱っているかで、当然マーケットは違うわけで。

『選手』ってのは、選手本人ももちろんそうだし、その選手に関する情報、データ、コネなんかも売り物かな。
『指導』は、指導者自身だったり、指導環境、肩書き(ブランド)、コネあたりも売り物かね。メソッド、トレーニングの切り売りもよく見る。

前述のスカウトでは『選手』が商材。
では日本ではどちらを売っていることが多いか?といえば『指導』になると思う。
ここが日本独自ではないかという仮説。

指導マーケット(以下、指導mkt)では toC がメインになるため、大きなお金は動きづらい。
逆に toB がメインになる選手マーケット(選手mkt)は大きなお金が動いているイメージができると思う。

指導mktでは、お金になりそうな選手をお金になりそうな場所にマッチングして利益を得る選手mktとは違い、指導の宣伝となる選手を使ってより多くの買い手(次の世代の選手や指導を買いたい指導者)に宣伝して薄利多売的な利益の得方が多いと考える。
指導mktは買い手が主に消費者だからね。
(この辺は専門家じゃないから違ってても許して)


そんな指導mktでは。

「指導」そのものが売り物となるので、「指導」内容を秘密にしたくなるはず。
そしてメソッドやトレーニングを小出しに切り売りしたり。
みんなその秘密にされた「秘訣/裏技/正解」を求めるからね。売れる。世はまさに大メソッド時代。

選手mktでは「良い選手引っ張ってレベルの高い者同士でやらせてその中で良くなった選手をまた引っ張るだけ」って考えられそうだけど、指導mktでは「良い選手は作れる!良い選手を出したところのやり方を真似る、またはより良いやり方を見つければ、自分達でもそういう選手を育てることができる」って考えるようになる気がしてる。
実際は「そんな秘訣があったらとっくにサッカー先進国でやってるわ」って思うんだけどね。

指導mktの最高の宣伝手段の一つである「プロに何人なりました」っていう実績。
それは本当に指導によるものなのだろうか。
もちろん指導もその実績の要因の一つだとは思うけど、言ってもしょせん要因の一つにしか過ぎない、と考えてる。
お互いに高め合える選手がその代に集まった、その地域では運動能力や身体能力が高まる環境が多かった、たまたまプロになる選手がいた、指導者の選手のプレゼン能力とコネがすごかった、などなど、その実績だけだとわからない情報はあるよね。
でも指導mktだから「プロを出したところではこういう指導をしてます」っていうのが売れる。

そして秘訣として得たその指導情報は、現場でもすぐに採用されるだろう。
トレーニングだけ真似ても、環境や個々の才能は真似できないが、そんなのはお構いなし。
だって指導mktでせっかく手に入れた「指導」だからね。
有料で手に入れたものならもちろん、SNSでたまたま見つけたものだとしても我慢できないでしょ。すごく気持ちはわかる。だって自分も指導mktの価値観で生きている指導者だから。


で、上で紹介した記事のスカウトの話に急に戻るけど。
指導mktをメインとしている環境ではスカウトをそんなに大勢雇うことは出来ないと思う。
大きなお金が動かないからというはもちろん、「自分の指導」を売ってる人が「指導しなくても強い選手」を連れてくる人にお給料を払うのは難しそうだとも思うからさ。
指導mktはtoCって言ったけど、BtoCじゃなくてCtoCも珍しくないからね。「自分の指導」を売ってる人は、その価値を高めなくてはならない。


以上、「日本は指導mktが強いという独自の文化で、それがいろんなことにも影響しているのでは?」という仮説のお話でした。

まあそんな独自文化だとしても、自分も引き続き自身の指導の価値は高めていきたい。
それを売り物とすることは今はやめてしまったけど(下記参照)、それは指導の価値を高めなくていいということにはならないから。



終わり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?