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【ドイツ】海外移住のメリット・デメリット

近年はインターネットの普及、各国の移動がしやすくなったことなどから、海外へ移住する日本人は増加傾向にあると言われています。

仕事、留学、結婚など、理由は様々ですが、ドイツ在住の日本人は41,757人世界で8番目です。(2020年外務省統計より)

そこで今回は私がドイツで16年過ごしてきた中で感じた、ドイツ移住のメリット・デメリットについてお話したいと思います。


ドイツ移住のメリット4つ

1. 完治が難しい心の病気が治った

自己紹介でお話した通り、私は高校卒業後、すぐにドイツに移住しました。

ドイツの渡航のきっかけは2つありました。

一つ目は、高校の途中でかかってしまった拒食症を治す
二つ目は、師事したいと考えていた先生のレッスンを受けたい

拒食症とは、食べることを極端に少なくし、周囲から見るとやせすぎているのに体重が増えることを恐れ、低体重を維持しようとする病気です。

相手に対して、人間らしく扱って欲しいという気持ち…それを叶える手段としてダイエットをした時に、気づいたらかかっていた病気でした。

当時はホームシックなど、深く考えることはなく、「日本で病気になった。それならドイツに行けば治る。」と短絡的に考えていました。

二つ目に、日本で音大受験をする前から師事したいと考えていたゲザ先生が、ドイツのアーヘンにある音大でレッスンされていて、日本の音大入試後に連絡をとったところ、「すぐアーヘンに来なさい」と言われたことも、きっかけのひとつでした。

補足ですが、当時ドイツに渡った時は158cm37kgの状態で、ゲザ先生に大変驚かれ、私が完治できるように、たくさん気をかけてくださりました。
そのエピソードは、今後のブログに載せたいと思います。

高校2年が終わる春に
はじめてレッスンでドイツに訪れ、
ケルン大聖堂の迫力に
当時は圧倒されっぱなしでした😳



ドイツでは「入試準備ビザ」がないため、入試を受けたい外国人は「語学ビザ」を取得して、ドイツに滞在し受験をしています。

「語学ビザ」の取得の条件として、週5日午前中に行われるドイツ語グループレッスン(レベルは問わない)に通うことになっていて、私は最初この語学ビザで、アーヘンに滞在していました。

そこで日本では出会うことのなかった、様々な国、年齢、立場の人にたくさん出会いました。

実はここに治るきっかけにつながる言葉がありました。

当時通っていた語学学校へ行く途中にある
市庁舎とお店


それは、ドイツ語の勉強で最初に出てくる「Wie geht es Ihnen? (元気ですか?)」です。

この挨拶は、ドイツで生活していく上でとても重要な言葉で、当時の語学学校では、この問いかけから授業が始まりました。

当時、文法の勉強で、Weil (なぜなら)の使い方を習得することが課題となっていて、生徒さんはただ「元気です / 元気じゃないです」で終わりにするのではなく、その後に「なぜなら〜」を付けて、答えていました。

私にとって、この理由づけを考え、答えるという時間は、一つのセラピーでもありました。
なぜなら、その時だけは自分だけに意識を向けられる時間だったからです。

ダイエットを始めた初期の頃、「自分はだらしないから太っていてダメなんだ、だから人間らしく扱ってもらえないんだ」と決めつけ、絶対病気になることはないと、自信を持っていました。

今思えば、すでにその時から、過剰に自尊心を下げ、自分に意識を向けることがなくなっていたと思います。

失われていた自分に意識を向ける時間、語学学校や、ゲザ先生のレッスンで出会った沢山の人たちのおかげで、さまざまな考えに出会い、視野が広がり、強迫観念がなくなり、心の病気が治ったように思います。


2. 演奏表現を追求しやすい気候

ドイツを始め、ヨーロッパの気候の特徴としてあげられるものの一つに、乾燥した空気があります。

ドイツで練習やレッスン、コンサートを行う時、バイオリンの音がより鮮明で、はっきり発弦する、強いレスポンスを感じます。

バイオリンの鳴り方が、日本では湿気の関係で抑えられたように聴こえることが多く、毎回の日本一時帰国の際に驚くことが多いです。
(ただ音楽ホールでは、空調設備のおかげか、ドイツに近い響きを感じることがあります)

ドイツの教会は
どこでもよく響き
装飾もさまざまで興味深いです♪


ドイツの音大での入試の演奏でとても重要なことは、様々な時代にあわせた演奏・表現方法ができていることで、ドイツに住み始め、ゲザ先生のもとで、バイオリンレッスンを受けてた頃から、そういった技術的なことだけでなく、表現の勉強・追求をする時間がとても多かったです。

最初に住んでいた、アーヘンのアパートでのバイオリンの響きは、ハンブルクに引っ越して、14年経過した今でも、印象がとても強く、忘れられません。

自然が生み出す、良い音の環境で勉強できた時間も、心の病気の完治の手伝いになってくれたと思っています。


3. 「過労死」という言葉がない労働環境

私は現在、ハンブルク公立音楽学校でバイオリン講師として勤務しているため、国と結んだ労働協約「Tarifvertrag für den Öffentlichen Dienst der Länder」に基づいた給料をいただいています。

また週の勤務時間も、労働契約書に明記されたパーセンテージ(私の労働契約書では、最大値である100%で、週25時間の勤務)に合わせて決められています。

ドイツでは、過労死という意味に値する言葉がなく、かつて自分が語学学校に行っていたときの先生が、Karoushiとローマ字で話されていたほどです。

ハロウィンパーティー
開催の予告とお詫びのチョコが
エントランスに。
私の家の周りは
週末パーティーをやっているひとが多く
疲れない労働環境のおかげで
パワーがあるのかなと思ってしまいます😅


「過労死という言葉がない労働環境」
とはどんな環境か、私のレッスンを例に挙げたいと思います。

生徒さんも先生も基本、早く家に帰ることを喜びます。
例えば生徒さんが何人かお休みで、先生が「今日は1時間半だけレッスンしたら帰れるんだよ」と言えば、生徒さんが「いっぱい働かなくていいね」と言ってくれます。

また生徒さんの欠席で空き時間ができてしまった時、先生が次のレッスンの生徒さんに早めに来てもらえないか、聞くことができ、先生が早めに帰られるように、多くの生徒さんができるだけ前の時間に来るように心がけてくれることが多いです。
生徒さんの都合でできない場合は、もちろん変更はせず、通常の時間帯でレッスンをします。

そういった「お互いに早く家に帰れることを喜ぶ、良い」とするという環境のおかげで、仕事に疲れることはあっても、無理をしすぎて燃え尽きることはありません

どうしても疲れたときは
ラッシュのバスボムで長湯しています🛀


4. ドイツという地理上のメリット

輸入がないので日本より音楽費がかからなかったり、ドイツ語を使うことによって、探している楽譜や情報がネットですぐ見つけられるという点です。

また私は、日本にはないバイオリンの先生を養成する教育学部に在籍していたため、在籍していたときからドイツ語でしか出版されていない辞典や書物も多く読みました。

そのため、プログラムノートがすぐ作れたり、日本での短期集中レッスンで、ドイツで勉強した内容をお話することがあるのですが、あまり日本では知られてないことが多く、生徒さんに興味を持っていただき、レッスンの充実にも繋がっています。

卒業論文(下)でたくさん引いた
バイオリン辞書(上)
ほかにもWikiなど、
日本語では載ってない内容が
ドイツ語版には載っていたりします。


ドイツ移住のデメリット4つ

1. 許される滞在期間が、自分の意思とは関係なく、ビザの担当の方の判断で決められてしまう

外国人が、ドイツで学業や仕事をするのに必要なものとして、「滞在ビザ」があります。

私は最初「学生ビザ」をもらい、更新を繰り返して、ハンブルクの音大卒業後は「2年間有効の期限付き仕事ビザ」をもらい、滞在していました。

当時は、公立の職場での勤務ではなかったため、今得ている「仕事永住ビザ」をもらうことができませんでした。

仕事永住ビザをもらう前のビザ。
当時はカードorシールタイプが
選べるようになっていて
シールのほうが安く
パスポートに貼る形でした。


更新の際は、朝5時過ぎから外人局の前に並んで、多くの書類を用意しないといけない上、その時に対応する方の判断で決められてしまうので、更新ができなかった場合の将来設計も、並行して準備する必要があり、とても大変でした。

ちなみにコロナになってからは、オンラインで書類を送信して返事をいただくシステムになりましたが、オンラインになったことで、提出書類について質問があったり、その場で直接確認して解決することができなくなってしまったので、面倒な手間がいらない「仕事永住ビザ」をもらえて、本当に良かったと感じています。

『仕事永住ビザ』をもらった
2020年12月はコロナのため
クリスマスマーケットでお祝いもできず💦
仕方なく
2019年のクリスマスマーケットの写真を
眺めたりしてました。


2. ストライキやデモ、週末の渋滞に影響されやすい公共交通機関

私は車や自転車を持っていないため、通勤はバスと電車を使っています。

週5日利用していて感じるのは、日本の交通機関のように、毎回正確な時間で、確実に動いてくれるとは限らないという点です。

デモやストライキ、また週末が近くなる金曜日は渋滞が多く、時間に余裕を持って出かけたり、前日のうちから、明日そういったイベントが重ならないかチェックすることが多いです。

そしてあまり期待しすぎない気持ちでいることも、精神的に疲れないために大切なことです。

ハンブルクにある地下鉄
新しくできた駅は模型があったりして
おしゃれ✨


3. 家の数が少ないため、「引っ越しを楽しむ」という概念がうまれない

ドイツでは家の数が相対的に少ないことから、家探しがとても難しいです。

私は一人でアパート借りて、一人暮らしをしていますが、一人で住める物件に出会えることはなかなかありません。

最近Youtubeで、日本の都内の物件を紹介する動画をよく視聴しているのですが、「今得ている収入で、日本ならこんな住居に住めて楽しそうだな」と考えてしまいます。

ドイツで定年を迎え、強制的に日本に帰国しないといけないときになったら経験できる、いわば老後の楽しみの一つになるのかなと思っています。

和菓子も好きで
日本一時帰国のときの楽しみ
になってます😊
老後も和菓子をストックしたいです笑


4. 外国語の発音で必要な滑舌

一人で生活しているので、仕事だけでなく、家事、一般事務(確定申告や連絡)も、全て一人で対応しないといけません。

週5日、25時間のレッスンに追われ、疲れていると、伝えたい内容や言葉は頭でしっかりわかっているのに、クセで早口になり、しかも噛んでしまい、自爆してしまうことが多くなります。

日本語でも、そういったクセがあるので、できるだけ疲労が溜まりすぎないように、心がけていきたいと思っています。

人とご飯食べに行くことが好きで
そんなときは噛まないよう
地味に気をつけてます😅


ドイツ生活のメリットを活かして、やっていきたいこと

最後にドイツ生活のメリットを得ながら、やっていきたい・充実していきたいことを挙げたいと思います。

まず一つ目は、家族と過ごす時間を増やすことです。

私は高校卒業してからすぐドイツに行ってしまったため、家族と過ごす時間が比較的少なかったです。

現在飛行機代が高騰しているのですが、しっかりインフラに合わせた給与設定の見直しが、毎年行われているおかげで、飛行機のチケットが高くなっても、定期的に日本に帰国することができています。

現段階の目標としては、年に2回、夏休みと冬休みに帰国して、親孝行できたらと考えています。

2022年夏休みに
2年半ぶりに一時帰国を果たしました!
コロナ禍での就職だったので
お祝いも家族でこのときにしました😇


二つ目は、年齢に負けない自分のバイオリン演奏能力、指導力の向上と維持です。

良い音響のおかげで、音楽を深く追求しやすい環境に自分はいるので、質の良い練習を重ねて、良い音響環境でコンサートを開催し続けたいと思っています。

実はこういった考えは、昔からあったわけではありません。
30歳ぐらいまでは、今よりも危機感を感じることが少なくて、自分は忙しいと決めつけて、なかなか行動することができませんでした。

しかし、今はそういった言い訳を嫌っていて、時間が少なくても頑張って時間を見つけて、できる限りのことはするようにしたいと思い、行動することを心がけています。

また、共演者の方もそういった姿勢を理解してくださる方は、優しく協力してくれて、良いコンサートになるように一緒に手伝ってくれます。

自分が意欲的に活動することによって、自然と波長が合う人に恵まれることに繋がり、私にとっても相手にとっても、良い気分で過ごすことができています。

6月11日開催の
バイオリン&ギターのデュオコンサート後
共演していただいた
フェリペさんと記念写真🤳
当日は30度近い猛暑でした💦


今回は私がドイツで16年過ごしてきた中で感じた、ドイツ移住のメリット・デメリット、そしてそのメリットを活かして、これからどうしていきたいかについてお話させていただきました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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レッスン期間: 2023.07.20 〜 2023.08.21
レッスン場所: 千葉、都内、首都圏 (オンラインレッスンについては要ご相談)
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