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ディテール

ふたりで暮らし始めて、2週間。
この前、ふと一緒に暮らすことのディテールを見つけました。

ディテール。
小説をよく読む私は、ディテールがきちんとある小説によく、惹かれます。
日常の中で、何を食べて、何を見て、どんな匂いを嗅いだのか、どんな音を聞いたのか、肌触り、云々。

だから私自身も、日々の中で、
音とか匂いとか、色とか、時として特定の物に敏感です。

この前の休日に彼がホットケーキを焼いてくれました。
引っ越しの片付けが進み、私は和室でベランダ側に寝転んで、本を読んでいて。
この町はよく風が吹きます。
その風が部屋に転がり、私の裸足の指たちの間を通り抜けて、いい気持ち。
自分がページを捲る音の他に、
彼がホットケーキを焼く音がする。
甘く香ばしい匂いが和室までやってきました。
和室から見る彼の背中を見て、
そのときに
あ。と、ふたりで暮らしているのだと、実感しました。

そして、またあるとき。
朝、私はリビングで書き物をしたり、本を読んでいて、
彼は和室で勉強。
レースのカーテンがバルーンみたいに風で膨らんで、ベランダに干してある洗濯物たちが見えました。

洗濯物というのは、日の光で干していると、
清々しすぎるくらいに、爽やかなものだと、最近思います。
一人暮らしのときは部屋の中で除湿機を使って干していたので、
私は晴れた元で彼が干した洗濯物を見ると、
大袈裟にも満足した気持ちになるのです。

そんな、2人分の洗濯物たちは風ではたはたと揺れていて、つい目を細めました。
そして和室の扉越しには、
彼がページを捲る音。

ふたりで暮らすとは、
ふたりぶんの音があり、洗濯物があり、においがあり、感情があり、熱量があり。

当たり前のことのようだけれど、
それが面白く新鮮。

風がよく遊びにくるこの部屋で、
たくさんのディテールがばら撒かれて、
私はそれを発見するのが楽しい。

あ。と、心の中で呟き、それを日々日記やら、スマートフォンの写真やらで収めて、
いつか忘れた頃に、
もし忘れたままだとしても、
どこかに、何かの形で、留めておきたいと思います。

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