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電球をくれたおじさん

電球をもらった。

知り合いのおじさん。市の職員をやっている。なぜか日本人の私を気にかけてくれていて、3年前もオフィスを案内してくれたり、ドライブに連れてってくれたりした。
今回もヨルダンに帰ってきてそうそう、知人を通じて「またオフィスに遊びにきなさい」と誘いを受けていた。
1人で行くのも億劫だったので、たまたま知人といた時に「今から行ってみよ」と一緒に会いにいった。そこで新しい電話番号を交換して、また再び交流がはじまった。

「いつでもオフィスにおいで」と言われているが、なんせこちらも活動があるし、向こうも一応お仕事中なので返事だけ元気にしていた。しかもヨルダン人のこの「遊びにおいで」はみんな割とすぐ言うので、本気なのか社交辞令なのかがわからないことが多い。

通勤途中にたまに会っては「おいで」と言われ、とうとう「あんた土曜日は勤務ないやろ?土曜日はこっちは仕事してるから土曜日においで」と言われたので、これは本気で言っているなと思って、土曜日に遊びに行ってきた。

おじさんのオフィスはちゃんとクーラーも効いていて、外の気温が30℃を超えていたので、超快適だった。おじさん自ら紅茶を入れてくれ、それを飲みながらあれやこれやと話をした。わからないアラビア語の単語も丁寧に教えてくれる。
その辺に置いてあったどこかの会社のノベルティグッズもくれた。その最後にくれたのが電球だった。

なぜ電球なのか。そこに電球があったからだろうか。いるかと言われればいるような気もするが、特にすぐに必要ではない。「いらん、いらん」とアラビア語でやんわり断りの意思表示をしたが、「まぁまぁそんなこと言わんと、持って帰りー」な感じで渡され、受け取ってしまった。

その日の夜、いつものようにシャワーを浴びようとバスルームの電気をつけた。が、電気がつかない!あれ?さっき、トイレにいった時は電気ついたのに!おかしい。しかもこの電球は先々週くらいに替えたばかりだった。
接触が悪いのかと思って、1度つけて外してみたが、どうにもこうにも電気がつかない。ちょっと暗いけれど、隣のキッチンから漏れる明かりで我慢するかと諦めかけたその時、おじさんから電球をもらったことを思い出した。そうだ!あの電球があるじゃないか!

さっそく取り外して、おじさんからもらった電球をつけた。バスルームがいつものように明るくなった。おじさんのおかげで助かった。あの時、強引に断らなくてよかった。まさか、数時間後に役に立つなんて思いもしなかった。あのおじさんはすごい人なのかもしれない。おじさん、ありがとう。

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