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喰べる

生きるために食べること。
食べるために生きること。

どちらも本質的には他者を喰らうことと変わらない。

「ねぇ、聞こえる?」

耳元でそう囁くと、小さな悲鳴。恐れ。恐怖。
あなたも誰かが誰かを喰べた結果産まれた人。
それは私も同じ。

目隠しをされて、椅子の上に座らされて。
後ろ手に生まれたままの姿で縛られていて。
あなたはもう逃げられないんだよ?

視界を奪われて、研ぎ澄まされた聴覚をからかうように。「ふ~っ♪」と息を吹きかける。反対側の耳を手で塞ぎながら、艶かしい舌を耳の穴に入れてみる。

嬉しそうに愉しそうに悦んでいる声。
そっか。あなたは私に喰べられることを期待しているのだものね。

股の間でそそり立ったモノを、すーっと指先でなぞり上げる。おもむろにパクっ♪とむしゃぶり、じゅるじゅると舌で舐め上げる。

今にも出してしまいそうな直前で口を離し、今度は下のお口でゆっくりと喰べていく。

生き物と生き物が繋がる。
最後まで呑み込んだ瞬間、手で頭を固定して唇と唇を重ね合わせる。

苦しそうな声も気持ち良さそうな声も。
何もかも奪って捕食している。

ゆっくりと腰を動かし始める。
徐々に速く、速く。

舌を捩じ込んでからませて。
口内をくすぐったり唾液を流し込んで。

片手で後頭部を押さえて固定したままキスは離さない。もう片方の手で首筋を撫で、無防備な脇腹を揉みしだいて無理やり笑い狂わせて口は閉じさせない。

快感も我慢できないように。
獲物を締め付けながらぐちゅぐちゅと動いていく。

身体がビクン、ビクン、と大きく跳ね上がろうとする。まな板の上の鯉みたいに。

ドクドクと溢れている命を、最後の一滴まで搾り取るように。キスもくすぐりも止めてあげない。

苦しそうに、本気で暴れる力を容易く抑え込む。
往生際の悪い子。

ギシギシと手足を戒めている縄が軋む音がする。
胸と胸が触れ合っている場所から、バクバクと燃えるように激しい鼓動が伝わる。

しばらくすると、ピクリとも動かなくなっちゃった。
身体が冷たくなってきても、萎えることなくピクピクと私の中で動いている。

唇を離して、名残惜しそうに抜いていく。
あぁ、美味しかった。ご馳走さま。

遺された残骸に振り返ることもなく、生きるために。
これからも喰べ続けていく__。

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