言葉が、とくいになりたい
みんなはきっとぜんぜん覚えてないだろうけど、
私にはことあるごとにフラッシュバックする大事なだいじな思い出がある。
それは、生まれて初めて「あの言葉で救われた」って言われた高校生のときのこと。
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あれはたしか、部長と副部長(わたし)以外のみんなが部活を辞めたいって言い出して、練習そっちのけで話し合いが発生して……
どうやら私は言うべきことが最終的に分からなくなって、
「だけど辞めても友だちだよ」
と言ったらしい。
ここに関しては、今度は私があんまり覚えていないんだけど。
「あとでみんなで『あの一言は泣けた』って話したんだよ」と言われて、心底びっくりした経験がある。自分の何気ない一言が、そんなにも大事な誰かを安心させられたってことに。
ちなみに、みんな辞めないで最後まで一緒にいてくれたから、今となっては笑い話。本当に良かったなと思っている。
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あの頃の私は、今こうして文章ばかり書いてる人になるなんて思いもしなかっただろうな。
でも、「これは真剣に言葉を選ばなければ」と思うとき。いつもこの高校時代のエピソードを思い出す。
無意識でもささやかでも、一度はちゃんと言葉で人を救えた経験があるんだって。
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これとは別に、「文章を書く仕事に就いた」とお茶の先生に伝えたら、とても厳しく言われたひとことがある。
「あなたの仕事は、人をおとしいてれて殺めることもできる。だから、そうならないように心を磨きなさい」
言葉は、むずかしい。
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最近なんだか「言葉」が気になる。
今まではとにかく「文章」にばかり気持ちが向いていたのだけど、それ以前の「言葉」をもっと、上手に使えるようになりたい。
組織をより円滑にするために日ごろからかける言葉は?
失恋した友だちが明日もがんばろうって思える言葉は?
とっても嬉しい気持ちを伝える言葉は?
好きな人にちゃんと気持ちが伝わる言葉は?
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「ポジティブ変換」というのがあるけど、目の前の事実を言葉としてどう表現するかで、私たちはいくらだって現実を変えることができる。
言葉は、魔法。
インタビューでの質問の仕方だって、記事のタイトルだって、言葉ひとつでガラリと世界は変わる。
それなのに、いままでの私は「いい文章を書けるようになりたい」とは思っていても、「いい言葉を使えるようになりたい」とは思ってこなかった。
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最近は「ライター」ではなく、「言葉を使って人に届ける」という風に自分の仕事を解釈するようになりつつある。
すると、Twitterに投稿するささいなつぶやきも、Slackでのやりとりも、家族と電話するときも、みんな言葉をていねいに選びさえすれば、作りたい世界に近づいていけるのかもしれないと気づいた。
なんだかデザインやブランディングと似ているかも。
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だけど、言葉は人を殺すことも、救うこともできる。
むずかしいけど、使いこなせているなんてまだまだ思えないから、もっと言葉がとくいな人になりたい。
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