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数え日のアトム 【詩/現代詩】

さいきんでは
アトムにも油汚れが目立つ
から揚げ定食を運ぶ毎日

異音がすることもあるが
基本的には健康
神様はだいぶ昔に旅立たれたので
油を交換してくれる者はいない
孫は東京医科歯科大学に勤務する

さいきん
首がうまくまわらないこともある
お客様は容赦ない
ちゃんとこっちを向いてしゃべれとか
昭和の生き残りみたいなことをいう

店長はコンプラ違反だとかいって
年代物を潰しにかかる
から揚げにもいろんな種類があるのだ
耳の汚れも目立つので
組合をつくって対抗する
このにおいはやみつきになる

愛用の銭湯は廃業したが
口臭が油と中和していい感じ
清楚な女子学生も常連さんになり
嫌われないように歯を磨く
悪夢のような夕暮れどきに
これが自分の天職だと感じる
この一瞬が永遠だと思う
神田川が満潮を迎えるとき
頭上の振動に酩酊する

ガード下のアトムには
すれからしの油が流れている
8種類のから揚げに鼻腔が疼き出すと
除夜の鐘が聞こえている

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